東日本大震災について

2011年4月15日金曜日 | ラベル: |

 東日本大震災について感想を書かなければと思います。
 平成7年(1995年)1月17日の朝6時少し前、当時都銀系の損害保険代理店に勤務していた私は、朝食の最中関西で大きな地震が起こったと言うTVのニュースを見ていました。神戸の震度計は振り切れて、ニュースでは最大震度は京都と報じていました。8時ころ会社に出社してTVで見た神戸市街からは何本かの火災の煙が立ち登っていました。大阪の本社とは専用線が通じていましたが誰も出社して来ません。9時近くにようやく連絡が取れ大阪の状況が把握出来ました。
 その朝、或る損害保険会社の神戸の単身赴任寮で、嘗て大きな地震の経験のある社員が、窓の外の状況を見て、大変な地震が起こったと判断し、地震直後でまだ電話が混雑する前に東京本社に第一報を入れました。そのため、その会社は初動態勢が圧倒的に上手く行きました。「何が起こったのか」を早く的確に把握することが危機管理の第一歩です。
 私は翌日のJALの最終便で関西空港に向かいました。着陸寸前に機窓から見た神戸の街はまだ赤く燃えていました。会社の神戸支店は当分来て呉れるなと言います。交通機関も水道も途絶していて、外部の人が来るのは迷惑だと言うことです。
 2週間後にJRが住吉まで開通し、三の宮にある支店の水道も復旧したので神戸に向かいました。住吉から三の宮まで歩きましたが、道路は波打っていました。市街地は寒く、断層の上だけが不公平に被害を受けていました。三の宮の商店街は惨憺たるものでした。帰途神戸の波止場から平時は遊覧船のサンタマリア号にすし詰めになって大阪の天保山に帰りました。そこには普通の生活があり、ひどい違和感を覚えました。
 ここに書いたような地震発生直後の経過は、神戸の人は全く判っていませんでした。何故ならば、地震直後はTVも見られず、ラジオも聞くことが出来ず、情報は全く途絶していたからです。今回の東日本大震災の場合も情報の途絶については余り改善されていないと思われます。その後PCが普及しましたが、被災地ではあまり動かせなかったと思います。
阪神淡路大震災は震災と火災で被災区域は比較的狭かったのですが、今回は震災・火災に加え大津波の災害、更に原発事故災害で、これらの被災区域は広く、そこに電力不足が重なっています。
 次は、首都圏直下型地震だろうと覚悟していましたが、先に東日本大震災が起こってしまいました。

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バラとリスクマネジメント

2011年4月1日金曜日 | ラベル: |

撮影・高橋義久様
 私の趣味はバラの栽培です。東京地区では1月の終りころに剪定し、2月ころから赤い芽が膨らんで来ます。5月中旬が春のバラの盛りになります。
 バラの栽培は面倒でしょうと良く言われます。剪定や薬の散布、水やり、肥料やりなどが面倒だと思ったら趣味にはなりません。開花までのプロセスが楽しいのです。
 西欧の園芸・バラの栽培と日本の園芸の異なる点ですが、例えば盆栽や、サツキ(皐月)、菊などは栽培法の本には書ききれない微妙な技術が要求されます。バラの栽培は、本当は微妙な技術が要求されているのかも知れませんが、本に書いてある通りのプロセスをキチンと守れば、綺麗な花が咲いて呉れます。
 また、欧米のバラの花の写真は大体満開です。日本のバラの花の写真は7分咲きか8分咲きくらいです。これは欧米人と日本人の美的感覚の差異だと思われます。生け花とフラワー・アレンジメントの感覚の相違とも言えます。
 私が言いたいことは、欧米から輸入されたものが、日本人の感覚の相違によって異なったものになることがあると言うことです。園芸の微妙な技術・花の美しさに対する相違と同じようなことが、リスクマネジメントの世界にもあるように思われます。
 アメリカではリスクマネジメントは保険を買う企業の側が始めたものなのに、日本では、主に損害保険会社が損害保険を売る際のサービスとして使われたという面がかなりあります。その結果、敢えて生意気を申し上げれば、日本ではリスクマネジメントに経営的視点が不足しているように思えます。
 ピーター・バーンスタイン著の「リスク」(日本経済新聞社・1998年)の原題は「AGAINST THE GODS」(神々への反逆)です。バーンスタインは、「昔は、未来は神々の思し召しによるもので、人々はどうすることもできないものであった。リスクマネジメントは、ギリシャ神話に出てくるプロメテウスが神に挑戦し、火を求めて暗闇に明りをもたらもたらしたように、未来という存在を敵から機会へと変えていった」と言っています。彼は主として証券投資におけるビジネスリスクについて論じているのですが、企業のリスクマネジメントやBCP(事業継続計画)についても同じことが言えます。
 ところが、日本人には「運を天に任せる。」と言う思想が根底に流れています。自然には逆らえない、自然災害は神の思し召しで、運命は甘受すべきものなのです。これが、リスク対策を考える積極性を失わせていると思います。BCP(事業継続計画)について、自分の企業だけが生き残って良いのかと言う考えをする人さえいます。
 リスクマネジメントが我が国に定着しない根源的な要因は、こうした日本人のリスク感性に依るところが大きいのではないかと思います。 
 最初に申上げたプロセスの大切さと、日本人の感覚の相違によって異なったものになっていないかと言う視点で、リスクマネジメントのあれこれにについて、これから皆様とご一緒に考えていきたいと思います。 

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