「A Risk  Management  Standard」について ⑦ 7.リスクの報告及びコミュニケーション 7.1 内部報告 7.2 外部報告

2013年6月20日木曜日 | ラベル: |

 6月15日(土)に雲仙へ行ってきました。

○雲仙市国見神代小路(こうじろくうじ)にある鍋島邸は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。私は、小・中・高校と佐賀市で過ごしましたので鍋島藩の島原半島における拠点の跡、鍋島屋敷は興味ある場所でした。
 
○鍋島邸の長屋門です。

 
○鍋島邸主屋の玄関です。


○通りの長屋門です。 



「A Risk  Management  Standard」
  7.リスクの報告及びコミュニケーション 
  
7.1 内部報告
 組織内の異なるレベルにより、リスクマネジメント・プログラムから入手すべき情報も異なる。

取締役会として行うべきこと
  • 組織が直面している最も重要なリスクを認識すること。
  • 期待される結果の範囲からの逸脱が株主価値に与える影響を認識すること。
  • 組織全体について適切なレベルの意識を維持すること。
  • 組織としてどう危機に対処するのかを知っていること。
  • ステークホールダーの組織に対する信頼の重要性を認識すること。
  • 必要に応じ投資業界とのコミュニケ―ションをいかに行うかを理解すること。
  • リスクマネジメント・プロセスが効果的に機能していることを確認すること。 
  • リスクマネジメントの理念・責任を含む明確なリスクマネジメント方針を公表すること。
事業部門として行うべきこと
  • 各職務領域におけるリスク、当該リスクが他の分野に与える可能性のある影響及び他の分野から影響を受ける可能性のある結果について認識すること。
  • 主要な事業・財務活動、目標達成状況の監視を行い、(予測・予算策定等)介入が必要な段階を設定する為の業績指標をもつこと。
  • 対策を取ることができるよう適当な頻度で予算・予測値の差異を伝達する制度を有すること。
  • 新しいリスク或いは既存のリスク管理対策の失敗が認められた場合に、経営幹部に対し組織的かつ速やかに報告を行うこと。
各個人が行うこと
  • 各自のリスクに対する説明責任を理解すること。
  • リスクマネジメント対応をどう組織的に改善していくかを理解すること。
  • リスクマネジメント及びリスク意識が組織文化の重要な構成要素であることを理解すること。
  • 新しいリスク或いは既存のリスク・コントロール対策の失敗が認められた場合に、シニア・マネジメントへ組織的かつ機敏に報告を行うこと。
7.2 外部報告
 企業はそのステークホールダーに対し継続的な報告を行い、リスクマネジメント方針及び目標達成の実効性について説明する義務がある。
  
 これに従い、ステークホールダーも、組織がコミュニーティの問題、人権、採用慣行、健康・安全・環境等、組織の非財務面におけるパフォーマンスについても効果的管理を行っていることを証明することを期待する。
 優れたコーポレート・ガバナンスにおいては、以下を実現する為、企業がリスクマネジメントについて体系的な手法を採用することが要求される。
  • ステークホールダーの利益を守ること。
  • 取締役会が戦略について指示を与え、価値を構築し、組織のパフォーマンスを監視する責務を確実に果たすこと。
  • 経営管理が整備され、適切に機能していること。
リスクマネジメントの正式報告の手続きについて明確な記載を行い、これをステークホールダーが入手できるようにすべきである。
  
 正式な報告においては,以下について記載を行うべきである。
  • 管理方法、特にリスクマネジメントに関する経営陣の責任。
  • リスク特定のプロセス及びこれらのリスクがリスクマネジメント・システムおいて、どう対処されているか。
  • 重要なリスクを管理するための主要管理システム。
  • 整備された監視・見直しのシステム。
 上記のシステムで発見された重要な問題或いはシステム自体に問題がある場合には、これらの対策と共に報告を行うべきである。
 
【 所感 】
 ISO31000の記述に比し、「組織内の異なるレベルにより、リスクマネジメント・プログラムから入手すべき情報も異なる。」として、取締役会・事業部門・各個人と階層別に内部報告の内容を例示している点、大変特色があると思います。
 毎回書いていることですが、例えば、事業部門の記述の項目に「主要な事業・財務活動」と財務を当然の項目として挙げている点、イギリスにおいてリスクマネジメント活動において財務は欠くべからざるファクターだと認識されていると考えられ、わが国もでもそうあって欲しいとつくづく思います。  
外部報告では、「企業はそのステークホールダーに対し継続的な報告を行い、リスクマネジメント方針及び目標達成の実効性について説明する義務がある。」と記述されています。
「正式な報告においては、以下について記載を行うべきである。
  • 管理方法、特にリスクマネジメントに関する経営陣の責任。
  • リスク特定のプロセス及びこれらのリスクがリスクマネジメント・システムおいて、どう対処されているか。
  • 重要なリスクを管理するための主要管理システム。
  • 整備された監視・見直しのシステム。」

との要求事項を読むと、形式的なお座なりな説明も散見されるわが国企業の有価証券報告書における「リスク管理に関する規定・その他の体制」「対処すべき課題・事業等のリスク」の記述の内容がこれで良いのかと痛感されます。
 今回も同じことを書きますが、企業がISO31000・JISQ31000に準拠してリスクマネジマントを実践する場合に、「A Risk  Management  Standard」の記述も参考にすることは大変意義があることだと思います。
 

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アンネ=ゾフィー・ムターさんのサイン

2013年6月10日月曜日 | ラベル: |

 1981年にムターさんが、カラヤン・ベルリンフィルと来日されたた際、たった二回だけの共演を聞くことが出来ず、残念に思っていました。今回の東京公演で、円熟したムターさんの演奏を聞き、32年前のプログラムにサインをして頂くことが出来ました。

○1981年来日時のカラヤンです(当時のプログラムより)。



○1981年来日時の17歳のムターさんです(当時のプログラムより)。その寫真の下にサインをして頂きました。 


○現在のムターさんです(公演プログラムより)。


 2年前、平成23年6月30日のブログで、「ソニー㈱とリスクマネジメント 大賀典雄様を悼む」と言う記事を書きました。私は大賀様がお亡くなりになるまで、ご一緒に東京二期会の監事を勤めて来ました。監査報告書にはいつも大賀様の下に署名をしていました。
 今回は、大賀典雄様が親しかったカラヤン、カラヤンが見出した天才少女アンネ=ゾフィー・ムターさんと言う繋がりで、「アンネ=ゾフィー・ムターさんのサイン」について書きます。
 「浅間通信員」と言うブログに「カラヤンと大賀典雄氏 2011.7.16」という記事が掲載されています。
http://asamatsuushin.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-40d8.html
 「カラヤンが亡くなった日、ソニーの前会長大賀典雄氏がカラヤン宅を訪れて、次期カラヤンの映像企画の打ち合わせをしていました。当日カラヤンは朝から体調がすぐれず、不調を訴えていたそうですが、打ち合わせ中に体調が急変しその場に倒れこんでしまいました。大賀氏が抱き起こして声を掛けましたが、その大賀氏の胸に抱かれて息を引き取ってしまったそうです。」

 私はカラヤン・ベルリンフィルを一度だけ聞く機会がありました。1981年にアンネ=ゾフィー・ムターさんがカラヤン・ベルリンフィルと来日されました。そのころムターさんのことは若くしてカラヤンに見出された天才少女ということで大いに話題になっていました。しかしこの時、ムターさんとカラヤン・ベルリンフィルの共演はたった二回だけでしたので、私はカラヤン・ベルリンフィルのブラームス交響曲第3番・第1番を聞くことは出来ましたが、ムターさんとの共演を聞くことが出来ず大変残念に思いました。
 1981年の来日はムターさんにとって、初めての日本であり、また日本におけるカラヤン・ベルリンフィルとムターさんの共演はこの時だけだったと思います。
今回、ムターさんの東京公演で、円熟したムターさんの演奏を聞くことが出来、その上32年前のプログラムの17歳の時のムターさんの写真の下にサインをして頂くことが出来ました。一生の思い出になりました。8月で80歳ですから、死んだらサイン入りのプログラムを棺に入れて貰って、あの世に持って行こうと思います。

○1981年カラヤン・ベルリンフィル日本公演の際の布装ハードカバーの立派なプログラムです。
 
 

 1981年公演のプログラムには、
「アンネ=ゾフィー・ムターは1963年ドイツ南西部ラインフェルデンに生れる。5歳の時よりピアノを始め、その半年後にヴァイオリンも習う。13歳の時ルツェルン音楽祭でデビューリサイタルを行い輝かしい成功を収める。この驚くべき才能を持った新人の噂がカラヤンの耳に入り、カラヤンはベルリンにある、フィルハーモニー・ホールでのオーディションに彼女を招いた。カラヤンは大事な会議があるので長くは聴けないと前もって断っていた。ゾフィーはバッハのシャコンヌを弾き始めた。カラヤンはその演奏に心を奪われて、席を立つことが出来なくなってしまった。しまいには、彼女にモーツアルトのコンチェルトの楽章を2つ弾くように要請したのだった。その結果、ただちに1977年ザルツブルグの聖霊降誕日の音楽祭でモーツアルトのコンチェルトを演奏する話が決まった。それ以来定期的にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とカラヤンと共に、ザルツブルグ、ベルリンにおいて、あるいは演奏旅行において、モーツアルトやベートーヴェンのヴァイオリン・コンチェルトなどのソリストとして演奏活動を行っている。
 彼女は単なる神童ではなく、その若年を考慮に入れなくても、世界的なヴァイオリニストであることはもはや明らかである。このことを認識して連邦政府は、何と、ストラディヴァリウス(エミリアーニ)を購入して、彼女に永久貸与したのである。」
と記述されています。
 1981年、17歳のムターさんは、ベートーヴェンのヴァイオリン・コンチェルト ニ長調 作品61を10月29日と11月5日に、東京文化会館でカラヤン・ベルリンフィルと共演されています。
 それから32年、私は今回初めてムターさんの演奏をお聞きしました。私はヴァイオリンの演奏に関しては全くの素人ですが、何という流麗な美しい音色かと心を奪われました。近くの女性は涙を浮かべておられました。
 今回の公演のプログラムの記述によれば、「音楽の友」誌のアンケートで「あなたが好きなヴァイオリニストは?」で、ムターさんは堂々の第一位なのだそうです。
 この歳になっても、美しい音楽に感動出来るのは、誠に幸なことだと痛感しました。

 次回からは、また「A Risk  Management  Standard」のご紹介に戻ります。

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「A Risk  Management  Standard」について ⑥ 5.リスクの評価   6.リスク対応

2013年6月1日土曜日 | ラベル: |

52年前の1961年6月、1959年に操業を開始した最新鋭のトヨタ自動車元町工場を見学しました。

○前年1960年に完成したばかりのトヨタ自動車の旧本社です。
 

○当時の元町工場の模型。最先端のトランスファー・マシンに感動しました。
 

○見学に行った、日本生産性本部「中小企業コンサルタント指導者養成講座」Ⅳ期生のメンバーです。



「A Risk  Management  Standard」
5.リスクの評価
 リスク分析プロセス終了後、その算定されたリスクと,組織が策定したリスク其準との比較を行うことが必要となる。このリスクの判断基準には、関連する費用・利益、法的規制、社会・経済・環境要因、ステークホルダーの懸念等が含まれる。従って、リスクの評価は、組織にとってのリスクの重要性及び特定のリスクを受容するのか、又は対応すべきかどうかの判断を行う場合に利用される。

6.リスク対応
 リスク対応とは、リスクの修正方法を選択し、これを実行するプロセスを指す。リスク対応は、主にリスクのコントロール・軽減を行うことを指すが、更に、例えばリスクの回避、リスクの移転、リスクファイナンシングもこれに含まれる。

 (注)本基準においては、リスクファイナンシングとは、リスクの財務的結果について資金手当てを行う手段(例:保険)を指す。一般的には、リスクファイナンシングは(ISO・IECガイド73に定義するところの)リスク対応実行の費用に対する資金提供を指すとは考えられていない。
 いかなるリスク対応システムにおいても、最低限以下を実行するものとする。
  • 効果的かつ効率的な組織の運営
  • 効果的な内部統制
  • 法令遵守
リスク分析プロセスは、経営陣が注意すべきリスクを特定することにより、組織の効果的・効率的運営に資する。経営陣は、組織に利益をもたらす可能性という観点からリスク管理対策に優先順位を付ける必要がある。

 内部統制の効果とは、リスクが提案されたリスク管理対策方法により排除或るいは軽減される度合いを示す。

 内部統制の費用効率とは、期待されるリスク軽減利益とを比較した場合の管理実行費用を指す。

 実行されたリスク管理対策は、何ら対策が取られなかった場合に予想される経済的効果とその提案された対策に係る費用との対比の観点から測定され、必ず、即座に入手できるものよりも詳細な情報・前提が要求される。

 まず第一に、実行の為の費用を設定しなければならない。この計算は費用便益測定の基礎となるため、正確さが要求される。何ら対策が取られなかった場合の損失の見通しも同時に行い、これら結果の比較に基づき経営陣はリスク管理対策を実施すべきかどうかの決定を下す。

 法令遵守は選択の対象ではない。組織は適用される法律を理解し、コンプライアンスを達成するための管理制度を実行する義務がある。若干の柔軟性が許容されるのは、特定のリスクについてリスク軽減費用が明らかに不釣り合いに大きい場合のみである。

 リスクの影響に対する財務的保護を図る方法の一つは、保険等のリスク・ファイナンシングによるものである。しかし、損失或いは損失の要素の中には保険でカバーできないものがある。例えば就労に関する健康、安全又は環境に関連する保険ではカバーされない費用等があり、これには従業員の士気の低下及び組織の評価の損害も含まれることを認識すべきである。
 【 所感 】
  「リスクの評価」とは、「算定されたリスクと,組織が策定したリスク其準との比較」であり、「組織にとってのリスクの重要性及び特定のリスクを受容するのか、又は対応すべきかどうかの判断を行う」ことであると明確に定義されています。ISO31000の記述も類似していますが、このように簡潔には記述されていません。
 「リスク対応」は、①コントロール・軽減②回避③移転、④リスクファイナンシングとされています。リスクファイナンシングが当然のように加えられていて、「A Risk  Management  Standard」において、財務が重視されていることを改めて実感します。本項の最後にリスクファイナンシングに関し、「損失或いは損失の要素の中には保険でカバーできないものがある。」書かれています。例えばわが国では中小企業の地震保険のカバーは困難ですが、我が意を得たりです。
 ISO31000では、①低減②保有③移転④回避に加え、⑤リスクを増加(リスクを戦略的に生かす)⑥リスク源の排除⑦結果を変える(残余リスクを経営に生かす)が加えられ7項目になりました。
 
【「リスク分析プロセス」は、経営陣が注意すべきリスクを特定することにより、組織の効果的・効率的運営に資する。経営陣は、組織に利益をもたらす可能性という観点からリスク管理対策に優先順位を付ける必要がある。】と言う記述は、リスクマネジメントは経営マターであることを明確に示しています。
 さらに、内部統制との関係、法令遵守との関係も記述されています。毎回同じことを書きますが、企業がISO31000・JISQ31000に準拠してリスクマネジマントを実践する場合に、「A Risk  Management  Standard」の記述も参考にすることは大変意義があることだと思います。
  
○「A Risk  Management  Standard」(日本語版)


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