災害時の金融支援 ④ 東日本大震災に対する㈱日本政策金融公庫の支援策及びその他の機関の支援策

2011年8月1日月曜日 | ラベル: |

 ㈱日本政策金融公庫は国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫、国際協力銀行が担っていた業務を引き継いで、2008年(平成20年)10月1日に設立された政策金融機関です。
 国民民生活事業(旧国民生活金融公庫)部門は、小規模企業者「製造業・その他の業種:従業員20人以下 、商業✳・サービス業:従業員5人以下 (✳商業とは、卸売業、小売業〈飲食店含む〉を指す。)」を取引の対象としています。
 中小企業事業(旧中小企業金融公庫)部門は、一般の中小企業を取引の対象としています。
東日本大震災についての日本政策金融公庫の支援策は、「東日本大震災により被災された皆様への支援体制について」に記載されています。

 前回述べた信用保証協会の保証枠の拡充と、日本政策金融公庫の災害時の融資制度が「政府の災害復旧貸付制度」の二本の柱です。これを活用することが中小企業に取って、最も有効な災害時のキャッシュフロー対策になります。

1) 特別相談窓口の設置及び電話相談の実施(詳細略)
2) 各種融資制度
【国民生活事業】  6000万円 (各融資制度の限度額に上乗せ)
【中小企業事業】  3億円(別枠)

●中小・小規模企業向け融資制度(国民生活事業・中小企業事業)
「東日本大震災復興特別貸付」(平成23年5月23日より取扱い開始)


利用対象者融資限度額融資期間
(据置期間)
融資利率
○直接被害を受けた方
○原発事故に係る警戒区域等*1内に事業所を有する方
【国民生活事業】
6千万円
(各融資制度の限度額に上乗せ)
【中小企業事業】
3億円(別枠)

設備資金20年以内
(5年以内)
運転資金 15年以内
(5年以内)

(1)被害証明書*5等の発行を受けた方
 ○基準利率より0.5%引下げ
 ○融資後3年間について中小企業事業の場合は1億円、国民生活事業の場合は3千万円を上限に基準利率より1.4%引下げ
(2)上記以外の方
 ○基準利率

○間接被害を受けた方
(上記対象者の方と一定以上の取引がある方)

設備資金 15年以(3年以内)
運転資金 15年以(3年以内)
(1)被害証明書*5等の発行を受けた方
 ○基準利率より最大0.5%引下げ*2
 ○融資後3年間について3千万円を上限に基準利率より最大1.4%引下げ
(2)上記以外の方
 ○基準利率
○その他震災の影響により、売上が減少している方など
(風評被害による影響を含む)
セーフティネット貸付(経営環境変化資金)と合わせて
【国民生活事業】
4千8百万円*3
【中小企業事業】
7億2千万円
設備資金 15年以内
(3年以内)
運転資金 8年内
(3年以内)
(1)特に業況が悪化している方など、一定の要件に該当する方
 ○基準利率*4より最大で0.5%引下げ*2
(2)上記以外の方
 ○基準利率*4


*1: 警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域。
*2: 売上高等の減少で0.3%引下げ、雇用の維持・拡大を要件に0.2%引下げ。
*3: 生活衛生セーフティネット貸付(運転資金のみ)の融資限度額は5千7百万円です。
*4: 中小企業事業の場合、信用リスク・融資期間等に応じて所定の利率が適用されます。
    国民生活事業2.25%・中小企業事業1.75%・(貸付期間5年以内の基準利率)  
    国民生活事業 http://www.jfc.go.jp/k/riritsu/index.html#a1
    中小企業事業 http://www.jfc.go.jp/c/jpn/topics/base.html
*5: 被害証明書等: 災害などで被災したことを証明するための書類。災害によって家屋が損壊を受けた場合には市町村が被害の状況を調査して、『罹災証明書』が発行される。塀や家財・車といった家家屋以外の対対象について「被災証明書」が発行される。

○商工組合中央金庫の支援
東日本大震災の影響を受けている中小企業等の皆さまへ
~ 東日本大震災復興特別貸付の概要 ~ を公表しています。
http://www.shokochukin.co.jp/chusyosien.pdf

○民間金融機関の支援策
仙台に本店を置く七十七銀行は「東日本大震災復興支援ローン」を公表しています。
http://www.77bank.co.jp/pdf/kinri/loan/77houjinshienloan.pdf
          ※他にも民間金融機関の支援は数多く存在します。

○地方自治体の支援
○宮城県 
東日本大震災で被災された中小企業者へ新しい融資制度を創設しました。
「災害復旧対策資金  (東 日 本 大 震 災 災 害 対 策 枠)」
http://www.pref.miyagi.jp/syokeisi/shokinhan/syoukin1/saigaisikin.pdf
          ※他にも地方自治体の支援策は多く存在します。
○福島県・経済産業省
原子力災害に伴う「特定地域中小企業特別資金」を開始。
http://www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/download/110523NCA-T-Fin1.pdf
福島県及び経済産業省は、4月22日の基本合意を踏まえ、中小企業基盤整備機構の高度化融資スキームを活用し、原子力発電所事故の被災区域から移転を余儀なくされる中小企業等が、福島県内の移転先において事業を継続・再開し、雇用を維持するために必要な資金の融資申請を6月1日より受付開始。
融資利率: 無利子  担保: 無担保 です。 これは、今までに例のない制度です。  

○金融支援制度を如何に活用方するか
 中小企業は平素から取引金融機関と、大地震発生時にキヤッシュフロー面から事業継続が出来るか、政府の施策の利用をも含めて良く協議しておく必要があります。信用保証協会の保証制度の活用に当たっても先ずは取引金融機関の理解が大事です。
 取引金融機関も、大地震が発生した場合に備え、与信リスク管理の視点から,企業の事業継続、キャッシュフロー対策の状況を把握し,検討しておくべきです。この点についての民間金融機関の対応は、現状まだ不十分であると私は思います。
 地震発生後、企業は大規模な災害発生時等に設置される相談窓口に相談をされることをお勧めします。担保・返済等について問題がある場合も、弾力的に相談に応じてくれるはずです。
 また、中小企業は平素から日本政策金融公庫・中小企業事業部門や商工組合中央金庫との間で融資取引関係を構築しておけば、地震発生後に災害復旧貸付を申し込む場合、既に会社の状況を把握して貰っていますから、話が早く進むと思います。