集合訴訟とリスクマネジメント

2011年8月11日木曜日 | ラベル: |

 今日で満78歳になりました。この年になっても未だブログが書けるのは幸せだと思います。
 7月27日、公益財団法人 損害保険事業総合研究所の損害保険特別講座で、東京大学名誉教授、中央大学法科大学院教授 西村高等法務研究所 所長 落合 誠一先生の「大量消費者被害の解決と集合訴訟』―集合訴訟は問題の真の解決となるか― のお話をお聞きしました。

 消費者庁の「集団的消費者被害救済制度専門調査会」は平成22年10月28日の第1回会合以降審議を重ね、平成23年8月19日 の第15回会合で取纏めを終え、消費者委員会の承認を得る運びとなり、早ければ来年にも、集合訴訟の立法化が実現される状況になっているそうです。

 ○消費者庁 制度 集団的消費者被害救済制度について
  http://www.caa.go.jp/planning/index.html#m01-1
  http://www.caa.go.jp/planning/index.html
  http://www.consumer.go.jp/seisaku/caa/soken/seido/shiryo/index.html
  http://www.consumer.go.jp/seisaku/caa/soken/seido/seido.html

 アメリカにおいて、タバコ・銃などについて大規模な集合訴訟(クラスアクション)が提起されたことは記憶に新しいことです。日本でも身近な問題になるとは思ってもいませんでした。
 私は、本件に関しては全くの素人ですが、方向は「二段階型」になるようです。即ち、

 ① 手続追行主体が対象消費者の範囲を特定して、訴訟を提起。
 ② 一段階目の判決において、対象消費者の範囲を定めた上で、共通争点について確認する判
決を行う。判決の効力は、その後に届出(④)をした者に有利にも不利にも及ぶ。
 ③ 一定の期間までに、対象消費者に届出を促す通知・公告を行う。
 ④ 一定の期間までに届出をする。

 集合訴訟(クラスアクション)の導入は、消費者に取って金額が少額で多数の被害者が生ずるような「集団的消費者被害紛争」解決の切り札だと言われています。弁護士さんに取っては、仕事が増えることになります。しかし企業は大きなリスクを負うことになります。
 落合誠一先生は、「集団訴訟制度の導入は、日本の社会がアメリカ型の訴訟社会へ大きく舵を切ることを意味し、わが国の社会の在り方についての大問題である。従って各層の広範囲な議論を経た、社会的コンセンサスが必要である。」と言う視点から見ると、検討過程が訴訟手続上の技術的な問題だとして法律関係者中心で行われており、一般国民、さらには実際にリスクが発生する企業側にどこまで検討・理解されているか問題だと憂えておられます。
 *例えば、消費者庁の集団的消費者被害救済制度研究会はメンバーは学者・弁護士ばかりで、オブザーバーにパナソニックの法務室長さんがいるだけです。
 「集団的消費者被害紛争」解決の手段は、裁判、ADR(裁判外紛争解決)、行政による解決等さまざまであり、どの手段をより活用すべきか我々自身が決めるべき問題だと落合誠一先生は強く訴えられました。私もその通りだと感銘しましたので、ご紹介申し上げる次第です。

○ご興味のある方は、下記の本をお読み下さい。
 「集合訴訟の脅威」〜企業経営・経済成長戦略に与える影響〜 西村高等法務研究所編
平成23年3月 商事法務研究会 2,200円(税別)    ISBN978-4-7857-1852-7