東京電力の現状と将来の見通し⑥ 〜 緊急特別事業計画に基づく業績見込みとキャッシュフロー 〜

2011年12月10日土曜日 | ラベル: |

○東京電力の福島原子力事故調査報告書について
 東京電力の福島原子力事故調査報告書(中間報告書)が12月2日に公表ましされました。そのスタンスは「当社はこれまで原子力災害に対するリスク低減に、様々な観点から取り組んで参りました。しかしながら、(中略) 結果として、整備して来た取り組みが至らず、放射性物質を外部に放出させるという、大変な事故を引き起こした事に対して深くお詫び申し上げます。」ということです。

 福島原子力発電所事故の概要は「地震に対しては、原子炉の安全維持に必要な電源は確保された。しかし、その後襲来した史上稀に見る津波により、6号機を除き全交流電源を喪失。海水ポンプの冠水により補機冷却系も機能を喪失、1-3号機は直流電源喪失により交流電源を用いない炉心冷却機能も停止。」
 津波の評価については、「設置許可に記載されている津波の高さについては、現状でも変更されていない。」 
  「本報告書では、事故当事者として、体験したこと、集約したデータ等に基に、教訓を得るべく務め、(中略)取りまとめを行いました。これらについては(中略)国内外BWRプラントの安全性向上にご活用いただきたいと考えております。」と書かれています。
 今回の事故に対して、事故発生後の対応については参考になる事が記載されていますが、私たちが一番知りたかった、「どうすれば事故が防げたのだろうか」については、反省もなく記述もありません。

○矢川元基東京大学名誉教授を委員長とする東京電力の事故調査検証委員会の意見
 下記は、同じころ公表された上記委員会の意見の抜粋です。
 「東京電力は、津波対策について、国の中央防災会議に比し積極的であったと言える。
然し、結果として今回の津波被害を防ぐに至らなかったことについては、国も専門家を含めた全体として大きく反省しなければならない。
 東電ならびに関連会社等の、今日に至るまでの献身的な働きや判断がなかったら、事態はより悪い方向に向かったかも知れない。本当に頭の下がる思いである。
 今回の事故を発生させた直接の原因は未曾有の津波である。しかし、【事故を発生させ、又事故を拡大に至らしめたものは、アクシデントマネジメントを含む、ハード面、ソフト面での事前の安全対策が十分でなかったことによる】と我々は結論する。
 東電を含む我が国の原子力関係者において、過酷事故など起こり得ないという『安全神話』を生み、そこから抜け出せなかったことが背景にあると思われる。」
大変妥当なご意見だと思いました。

○12月7日日本経済新聞の社説
 7日の日本経済新聞の社説は東京電力の福島原子力事故調査報告書について、
「自己弁護と責任回避の色合いがあまりに濃い。なぜ大津波や重大事故を想定外とし対策に踏み出せなかったのか納得出来る説明と検証を欠く。東電に強く働き掛け事実を明かにさせるべきだ。」
と論じています。 誠に我が意を得たりです。

○緊急特別事業計画に基づく業績見込みとキャッシュフロー
 平成23年11月4日、東京電力は、「10月28日付で資金援助の申請を行うとともに、同日付で主務大臣(内閣総理大臣、経済産業大臣)に対して、原子力損害賠償支援機構と共同で特別事業計画の認定を申請しておりましたが、本日、同計画について認定をいただきました。」と公表しました。
 私は、11月10日のブログで、東京電力の第2四半期決算記載のデータで連結ベースの今期業績見込みの検討をしましたが、特別事業計画には、新しく単体の今期業績計画・キャッシュフロー計画が記載されていますので、再検討致しました。
○業績比較 (単体)                                                                     (単位 億円)
  平成 22 年度実績 平成 23年度見込み
前期比増減
(22.4.1 - 23.3.31) (23.4.1 - 24.3.31)
売上高
51,463
50,818
△ 645
営業利益
 (同上率)
3,567
( 6.9 %)
△ 3,327
(△ 6.4 %)
△ 6,894
(△ 13.3 %)
経常利益又
は経常損失
(同上率)
 
2,711
( 5.3 %)
 
△ 4,122
(△ 8.1 %)
 
△ 6,833
(△ 13.4 %)
引当金増減
62
16
△ 46
特別損益
△ 10,742
△ 1,625
9,117
当期純利益
又は純損失
 (同上率)
 
△ 8,093
(△ 15.7 %)
 
△ 5,763
(△ 11.3 %)
 
2,330
( 4.4% )
月  商
4,297
4,234
4,171
 前記の計画に基づき、下期の業績見込みを試算しました。

✩業績の見通し (単体)                                                                       (単位 億円)
  平成 22 年度実績 平成 23 年度上期実績 平成 23 年度下期見込 平成 2 3年度見込み
(22.4.1 - 23.3.31) (23.4.1 - 23.9.30) (23.10.1 - 24.3.31) (23.4.1 - 24.3.31)
売上高
51,463 *
23,892
(前年同期比
 △ 3,215)
26,92 6
(前年同期比
2,570 )
50,818
(前年同期比
 △ 645)
営業利益
 (同上率)
3,567
( 6.9 %)
△  828
(△ 3.5 %)
△  2,499
(△ 9.3 %)
△ 3,327
(△ 6. 4%)
経常利益又
は経常損失
(同上率)
 
2,711
( 5.3 %)
 
 △ 1,305
(△  5.5 %)
 
△ 2,817
(△ 10.5% )
 
△ 4,122
(△ 8.1 %)
引当金増減
62
    5 
1 1
16
特別損益
△ 10,742
△   5,075
3,450
△ 1,625
当期純利益
又は純損失
 (同上率)
 
△ 8,093
(△ 15.7 %)
 
△ 6,385
(△ 26.7% )
 
622
(  2.3% )
 
△ 5,763
(△ 11.3 %)
  月  商
4,297
4,171
4,298
4,234

 最大の疑問点は、今年度下期の売上高は前年同期比2,570億円増(10.8%増)の計画だということです。全国的な節電ムードのなかで、東電だけが売上を増やせるのか。現在東京電力は節電のキャンペーンはしていないと思われますが、前年より電力消費を増やすキャンペーンもしていないと思います。売上が未達になれば業績も悪化します。
 また営業利益率が更に悪化する理由は発表の資料からは良く分かりません。

 ○ キヤッシュフロー見込  (単体)
                                                                                      (単位 億円)

科  目
 
平成 22 年度実績
 
平成 23 年度見込
前年同期比
増  減
現金及び現金同等物の期首残高
5,771
21,344
15,573
       
営業活動によるキャッシュ・フロー
9,234
△ 4,398
△ 13,632
投資活動によるキヤッシュフロー
△ 7,487
△ 2,803
△ 4,684
事業のキヤシュフロー
1,747
△ 7,201
△ 8,948
財務活動によるキヤッシュフロー
13,826
△  4,607
△ 18,433
当期総合キヤッシュフロー
15,573
△ 11,808
△ 27,381
       
現金及び現金同等物の期末残高
21,344
9,536
△ 11,808
 
 
5.0  ヶ月
2.3  ヶ月
△  2.7 ケ月

通期でも、極めて大幅なキャッシュフローの悪化です。

 ○ キヤッシュフロー見込 (アバウトな試算) 
                                                                                      (単位 億円)
科  目  
 上期 ( 連結 )
 
  下期 ( 単体 )
平成 23 年度見込
( 単体 )
現金及び現金同等物の期首残高
22,062
14,877
21,344
       
営業活動によるキャッシュ・フロー
△ 1,064
△ 3,334
△ 4,398
投資活動によるキヤッシュフロー
△ 2,371
△ 432
△ 2,803
事業のキヤシュフロー
△ 3,435
△ 3,766
△ 7,201
財務活動によるキヤッシュフロー
△ 3,762
△ 845
△ 4,607
当期総合キヤッシュフロー
△ 7,197
△ 4,611
△ 11,808
       
現金及び現金同等物の期末残高
14,877
9,536
9,536
同上 月商比
3.6  ヶ月
2.3  ヶ月
2.3  ヶ月

 東京電力単体の売上は先期で連結96%なので、単体のキャッシュロー見込みから上期連結キャッシュフローを引いて下期のキャッシュフローについてアバウトな試算をして見ました。
 平成23年度の経常損益が △4,122億円程度で収まるかは良くわかりません。損益が悪化すれば営業活動によるキャッシュフローも悪化します。
 下期投資活動によるキヤッシュフローは△432億円の少額になりますが、それで収まるのか。
 財務活動によるキヤッシュフローは△4,607億円で収まるのでしょうか。平成22年度期末現在、1年以内に期限が到来する固定負債は 7,748億円、平成23年度の社債償還予定額は7,479億円、計15,226億円と開示されています。アバウトな試算では、下期財務活動によるキヤッシュフローは△845億円となります。上期社債償還3,200億円後の未償還残額は4,548億円あります。資産売却がどれだけ寄与するのか判りませんが、
この金額も疑問です。 業績見込み・キャッシュフロー見込み何れにも疑問を持ちます。
 8日の日本経済新聞3面に東京電力西沢社長のインターヴュー記事が掲載されています。平成23年10月28日に 東京電力株式会社 が作成し主務大臣の認定を受けた「緊急特別事業計画」の具体的な実施手順となるアクションプラン【実行計画】を週内にも纏めるとされています。毎日新聞1面には「東電実質国有化へ」と言う見出しが踊っています。
何れも現在の計画では駄目だと言うことだと思います。
 いつも同じことを書きますが、東京電力の将来の見通しは依然暗澹たるものがあります。