東京電力の現状と将来の見通し⑩ ~ 平成24年3月期決算 ~

2012年6月1日金曜日 | ラベル: |

東京電力平成24年3月期決算が公表されました。決算短信「来期見通し」添付資料に、除染費用については、「法律に基づく具体的な実施内容を把握出来る状況になく、賠償額を見積もることが出来ないから計上しない」と記載されています。こんな前提での業績予想の開示で良いのでしょうか。 以下は東京電力平成24年3月期決算についての感想です。

素敵な京都の6月その1.2です。

善峰寺  経堂下 さつき HP 「京都の四季」より

同上 HP 「京都の四季」より
 京都では東山、西山と言います。東山三十六峰が有名ですが、私は西山が好きです。西山に善峰寺があります。素敵なお寺です。

 ○業 績 (連結)
  平成 22 年度実績 平成 23年度実績  
 前期比増減
(22.4.1 - 23.3.31) (23.4.1 - 24.3.31)
売上高 53,685 53,494 △ 191
営業利益又は損失
 (同上率)
3,996
( 7.4 %)
△ 2,725
(△ 5.1 %)
△ 6,721
(△ 12.5 %)
経常利益又は損失
(同上率)
3,177
( 5.3 %)
△ 4,004
(△ 8.1 %)
△ 7,181
(△ 13.4 %)
引当金増減 61 24   △ 37
特別利益
特別損失
   ―
△ 10,777
25,169
△ 28,679
25,169
△ 17,902
税金等調整前当期損失 △ 7,661 △ 7,538 123
法人税等 4,784 228 △ 4,556
当期純利益又は損失
 (同上率)
△ 12,473
(△ 23.2 %)
△ 7,816
(△ 14.6 %)
4,657
( 8.6% )
 月  商 4,474 4,458 △  16

 平成23年度売上高は前期比1910億円減の53,494億円、人件費・経費の圧縮に努めたものの、撚料費の大幅増により営業利益は△2,725億円、経常利益は△4,004億円となっています。

○特別損益内訳                   (単位 億円)
 項  目 平成 23 年度実績
(22.4.1 - 23.3.31)
平成 23 年度実績
(23.4.1 - 24.3.31)
 
増  減
特別利益 ①
(原子力損害賠償支援機
構交付金)
(有価証券売却益)
(固定資産売却益) 
( 関係会社株式売却益 )
   -
   -
   -
   -
  -
25,169
( 24,263 )
( 288 )
(416)
( 202 )
25,169
 
( 24,263 )
( 283 )
( 416 )
( 202 )
特別損失 ②
( 災害特別損失 )
(資産除去債務会計基準
適用に伴う適用額)
(原子力損害賠償費)
(有価証券売却損)
(関係会社株式売却損)
10,777
(10,205)
 
  ( 572 )
   -
   -
   -
28,679
(2,978)
 
 -
( 25,249 )
  ( 404 )
   ( 47 )
17,902
•  7,277
 
•  572
25,249
404
47
① - ②  △ 10,777
 
•  3,519 7,258

 特別損失中、原子力損害賠償費は原子力損害賠償支援機構交付金で賄っていて、東日本大震災による損失2,978億円が赤字を拡大させています。
 いつも思うことですが、キャッシュフロー計算書では、原子力損害賠償の支払い額は5,663億円となっており、未収原子力損害賠償支援機構交付金が17,627億円も計上されています。折角原子力損害賠償支援機構からの支援が決まっているのですから、残りについても早期に支払われることを希望します。

○ キヤッシュフロー  (連結)                     (単位 億円)
科  目  
平成 22年度実績
 
平成 23年度実績
前年同期比
増  減
現金及び現金同等物の期首残高 1,531 22,062 20,531
       
営業活動によるキャッシュ・フロー 9,887 △ 29 △ 9,916
投資活動によるキヤッシュフロー △ 7,920  △ 3,351 4,569
事業のキヤシュフロー 1,967 •  3,380 △ 5,347
財務活動によるキヤッシュフロー 18,596 △  6,147 △ 24,743
当期総合キヤッシュフロー 20,563 •  9,527 △ 30,090
       
現金及び現金同等物の期末残高 22,062 12,539 △ 9,523
月 商 比 4.9  ヶ月 2.8  ヶ月 △  2.1 ケ月

 営業活動によるキャッシュ・フローは,前期比9,916億円の大幅悪化です。投資は大幅に削減されていますが、社債償還を主因として財務活動によるキヤッシュフローは△6,147億円です。

○社債・借入金残高推移                  (単位 億円)
   
22.3.31
 
23.3.31
24.3.31
 残 高 23.3.31 対比
  社   債 47,396 44,266 36,775 △ 7,491
長期借入金 16,144 34,238 32,761 △ 1,477
1 年以内に返済の長期借入金 7,476 7,748 9,325 1,578
短期借入金 3,636 4,062 4,418 356
合   計 74,652 90,314 83,279 △ 7,035

 上記の残高推移で明かなように、社債減7,491億円が大きくキャッシュフローを悪化させています。長期借入金と1年以内に返済の長期借入金の合計額は101億円増加しています。これは平成23年3月31日期末の1年以内に返済の長期借入金7,748億円を返済後7,849億円を改めて借り入れていることを意味します。短期借入金も356億円増加しています。金融機関は引続き貸出を継続して残高を維持しています。
 問題は社債の償還です。資金調達にあたり社債に対する依存度が大きいと事故災害発生時に、社債の償還がキャッシュフロー悪化の大きな要因となります。その結果大事な現預金は9,523億円の大幅減となっています。

  ○来期業績見込み                   (単位 億円)
  平成 23年度実績 平成 24 年度見込  
 前期比増減
(23.4.1 - 24.3.31) (24.4.1 - 2 5 .3.31)
売上高 53,494 60,250 6,756
営業利益又は損失
 (同上率)
△ 2,725
(△ 5.1 %)
△ 2,350
(△ 3.9 %)
375
( 1.2 %)
経常利益又は損失
(同上率)
△ 4,004
(△ 8.1 %)
△ 3,550
(△ 5.9 %)
454
( 2.2 %)
当期純利益又は損失
 (同上率)
△ 7,816
(△ 14.6 %)
△ 1,000
(△ 1.7 %)
6,816
( 12.9% )
 月  商 4,458 5,021 563

前回の繰り返しになりますが、

① 家庭用電気料金の値上げを前提としているが、どの程度認められるかは現状不明。
② 廃炉費用については、「現段階では、各(廃炉)工程の具体的な費用の積上げによる総額の見積りは困難である。」とされている。
③ 除染費用については添付資料に、「法律に基づく具体的な実施内容を把握出来る状況になく、賠償額を見積もることが出来ないから計上しない」と記載されていて、平成23年3月期の実績の記載も無い。
等の問題点があり、来期業績の見通しを検討することは困難です。
 廃炉費用・除染費用・原子力損害賠償の事務経費等を何処まで国が負担するのか、発送電を分離するのかなど、根本的な議論を行った上で対処しなければ東京電力の再生は困難だと思います。依然前途は暗澹たるものがあります。