「リスクとキャッシュフロー」について ㉕

2014年5月1日木曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ④

◎東日本大震災における「津波」に当たるものは首都圏直下型地震では「大火災」で
ある。
 下の二つの写真を見比べて下さい。非常に似通っていると思われませんか。
〇昭和20年(1945年)3月10日 東京大空襲後の写真

〇平成23年(2011年)3月11日東日本大震災後の石巻市(リスク対策Com.提供)


 私は戦中派なので、どうしても東京大空襲と東日本大震災を比較したくなります。どちらも鉄筋の建物を除いて建物が跡形もなく無くなっています。
 隅田川に架かる両国橋を渡った先の錦糸町や亀戸のある下町地区を中心に、大正10年(1923年)9月1日の関東大震災での大火災の死者・行方不明者の数は10万5千人余と言われています。その22年後、昭和20年(1945年)3月10日の東京大空襲の死者・行方不明者の数も10万人以上と言われています。
 蔵前橋を渡った先の横網町公園の中にある東京都慰霊堂には、関東大震災の身元不明者の遺骨と東京大空襲の身元不明者の遺骨が納められています。そして両方の犠牲者の霊が祀られています。

〇東京都慰霊堂(旧震災記念堂)

 私は昭和48年(1973年)10月に都市銀行の亀戸支店長になりました。当時は関東大震災と東京大空襲の両方を経験した方が数多くおられました。2回の大火災で生き延びることが出来た理由は、「早期に川を渡って対岸に逃げられたことだ。」と異口同音に言われていました。当時は隅田川や荒川・江戸川という大きな川を渡って、漸く大火から逃れられた訳です。今は海岸の埋立地に逃げる手もあると思いますが。
 東京都都市整備局のHPに地域危険度マップが公表されていて、下記のように記述されています。
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地震に関する地域危険度測定調査の沿革
 東京都では、東京都震災対策条例(当時は震災予防条例)に基づき、昭和50 年11 月に第1回(区部)の地域危険度を公表しました。その後、市街地の変化を表わす建物などの最新データや新たな知見を取入れ、概ね5年ごとに調査を行っており、今回(平成25年9月)は第7回目の公表です。
  今回の測定調査では、都内の市街化区域の5,133町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、建物の倒壊及び火災について測定しました。
 さらに第7回調査から、災害時の避難や消火・救援活動のしやすさ(困難さ)を加味するため、「災害時活動困難度」(災害時の活動を支える道路等の基盤状況を評価する指標)を考慮した危険度の測定を始めました。この調査を進めるに当たっては、防災分野の専門家などで構成する「地域危険度測定調査委員会」を設置し、より精度の高い新たな測定方法に改善を図るなど、調査全般にわたり検討してきました。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/kikendo.htm#kasai
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 地域危険度一覧表 (区市町村別)
 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/table.htm
 地域危険度マップ
 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/chiikikiken.htm
江東区の火災危険度マップです。

江東区の北東の角の部分、亀戸・大島地区が危険度4-5で赤く塗られています。その部分を拡大します。

亀戸3丁目・5丁目(私が勤務していた支店の所在地です)・7丁目、あと大島・北砂・南砂あたりは危険度4-5で真っ赤です。
 阪神淡路大震災では、神戸市の長田地区が火災で丸焼けになりました。首都圏直下型地震では亀戸や大島地区は火災で丸焼けになる危険性が高いので、地震発生時には先ず避難を最優先にすべきではないかと私は思います。丸焼けを前提にしたBCPを考えるべきです。津波に対して高台に住むという対策がありますが、大都市では事業所を移転するのは中小企業では至難の技です。
 亀戸に比べ、最後に私が勤務していた銀行の子会社があった千代田区九段南付近の地図は真っ白です。九段地区は高台で地盤も良く、都内でも最も安全な地区の一つだと言えます。


「火災危険度上位100町丁目のリスト」で見ると、危険な町丁目の数は、①足立区21②荒川区16③墨田区15④台東区8⑤大田区7⑥北区7⑧江東区6⑨品川区6⑩葛飾区5の順番です。


 上記の各区は、大田区・品川区を除き全て東京の北東部に集中していることにお気ずきと思います。この地域では首都圏直下地震に際し、東日本大震災における「津波」に当たるものは「大火災」であると私は思います。
 丁度3年前の平成23年5月1日のブログで、『TVでコメンテーターが津波の専門家に「今後は20M—30Mの防潮堤を作らなければなりませんネ。」と質問をしたら、彼は「それは財政的に恐らく不可能だから、想定以上の地震と大津波が発生した場合如何に早く安全なところに逃げるか、或いは住居を高台にするか、などが対策となる。」と言っていたのが印象的でした。』と書きました。
 東京の北東部を火災に強い街にすると言う試みは既になされていると思いますが、企業に取っても、地方自治体に取っても財政的に恐らく限界があると思いますから、素早い避難と丸焼けを前提にしたBCPを策定するしかないと私は考えます。