「江戸城の天守閣を再建する」

2014年7月20日日曜日 | ラベル: |

 明暦3年1月18日(1657年3月2日)から1月20日(3月4日)にかけて、当時の江戸の大半を焼失するに至った大火災である明暦の大火により、江戸の街の大半が焼き尽くされ、江戸人口50万人のうち10万人以上の生命が奪われました。この未曾有の大災害に陣頭指揮で対処したのが、3代将軍家光の異母弟で、4代将軍家綱の後見役となった会津藩主保科正之でした。  
 保科正之は、被災者の早急な救済と民生安定、長期的展望に基づいた江戸市街の災害復興を最優先の課題と考え、江戸城天守は、江戸幕府の権威と権力の象徴と考えられていましたが、今はその再建のために、国の財産を費やす時節ではないと判断し、先に延ばすことを決定しました。この保科正之の英断が、それ以降200年にわたる江戸期の社会の平和と安定の礎(いしずえ)となり、元禄、文化・文政の江戸文化が花開くこととなりました。(「江戸城天守を再建する会」のHPより)


  (千代田区観光協会 HPより)
 今、皇居北の丸公園には東西約41m、南北約45m、高さ11mの天守閣跡の石積みが残っています。
 九段南の親しいお菓子屋さん「ゴンドラ」のご主人細内進さんから「江戸城の天守閣を再建する話があります。」とお聞きしたのは数年前のことでした。
 「江戸城天守を再建する会」のHPには下記の設立主意書」が掲載されています。
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 『近年、世界各国、各都市は観光立国と魅力ある国づくりに向けて熾烈な競争を繰り広げているが、その中にあって東京は国際都市として未だ確固たる地歩を築いているとは言い難い。その要因の一つは、日本の首都でありながら日本らしさを体現する、傑出した歴史的、文化的遺産が存在しない点にある。
 かっての都・江戸は世界で最も魅力的なまちの一つと謳われていた。もしここに、明暦の大火により失われた天守閣を始め、江戸城の遺構が再建されれば、それは世界に伍して発展する国際観光、交流都市東京の形成に寄与するだけでなく、21世紀における日本再生の新しいシンボルにもなり得る、と確信する。
 このような観点から、私たちは再建を具体化するための各種の調査、研究を進めると共に、広く世論を喚起するための様々な活動を展開すべく、特定非営利活動法人「江戸城再建を目指す会」を立ち上げる。 平成17年10月1日 江戸城再建を目指す会  理事長 小竹直隆』
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 平成25年7月に「「江戸城再建を目指す会」は「江戸城天守を再建する会」に名称変更し
ました。平成25年9月7日、2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定しました。
 細内さんから初めてこの話をお聞きした時は、私は夢物語だと思っていました。一昨日7月18日にゴンドラをお訪ねして、細内さんに「その後どうなりましたか。」とお聞きしました。
 細内さんに『7月5日の日経電子版に、<江戸城の再建費用350億円 「木造」観光立国の夢> と言う記事が掲載されています。 』と教えて頂きました。以下はその記事のご紹介です。
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 東京五輪に合わせて、江戸城の天守閣を再建しよう――。こんな計画を市民団体が中心になって進めている。高層ビルに囲まれた皇居の森に天守閣がそびえ立つ。計画には賛否もあるし課題も多いが、この構想は日本人自身もあまり気付いていない「眠れる資源」が存在していることを教えてくれる。
 構想を進めているのは、認定NPO法人「江戸城天守を再建する会」(東京・千代田)。会長は江戸城を築いた武将、太田道灌の18代子孫にあたる太田資暁氏だ。
 1657年の明暦の大火(振り袖火事)で炎上した天守閣を、現存する「建地割図」(城の断面図)を基に再現しようと活動している。台座を含めて高さ59メートルの5層構造。高さは姫路城(兵庫県姫路市)の2倍、体積では3倍で、木造建築として国内最大級となる
 再建に慎重な意見のなかには、皇居を見下ろすことへの懸念が多い。だが、皇居側の窓はもともと上向きにしか作られていなかったそうだ。気になるのは、やはりコスト。再建には長さ5メートルで35センチ角のヒノキが1000本必要となる。高級なヒノキを使えば、当然コンクリートより割高になるはず。伝統建築に詳しい広島大の三浦正幸教授に聞くと、意外な答えが返ってきた。
 戦後、1960~70年代の城郭再建ラッシュでは、名古屋城や熊本城など30余りの天守閣をすべて鉄筋コンクリートで作った。高度成長期のさなかで文化財を復元するという意識は低く、もともと存在しなかった天守閣を“復元”したものもある。なにより戦火の記憶が生々しかったため、「燃えない」という理由を優先した。(中略)
 その裏側で起きたのが木材の値下がりだ。国産材は需要減に輸入材の流入が加わり、ヒノキの素材価格は80年の1立方メートルあたり7万6400円のピークから2013年には1万9700円まで74%も下落した。鉄筋に使う異形棒鋼が足元1トン6万5千~7万円で80年とほぼ同水準なのと対照的だ。日本の山には、100年以上前に植えられて二酸化炭素(CO2)も吸わなくなったヒノキが眠ったままになっている。三浦教授によれば、天守閣の建築には高級ヒノキを使う必要もないため、もはや木造も鉄筋コンクリート造並みの費用だという。
 「木材の復権」はじわりと進んでいる。50年を経てコンクリートが耐用年数を超え、天守閣も住宅も、建て替え需要がこれから本格化する。全国の官公庁庁舎などは木造での再建が増えているし、天守閣も名古屋城など全国で木造への切り替えが議論されている。
鉄筋造は火事でも燃え残るというが、内部の鉄筋が熱で損傷すれば建て替えが必要になる。問題は燃え崩れるかどうかではなく、火熱に耐える「耐火時間」だが、木造も決して劣っていない。耐震性も同様で、再建した江戸城はシミュレーションでは震度7まで耐える。耐用年数は1500年と、コンクリートの50~80年に比べて格段に長い。こうした日本古来の木造技術を受け継ぐ宮大工の存続・育成も、江戸城再建計画の狙いの一つだ。
 日本都市計画学会が試算した江戸城天守閣の建設費用はざっと350億円。ちなみに東京スカイツリー建設では、PR費用を含めた総事業費が約650億円(周辺の商業施設部分を除く)だった。「再建する会」は個人や法人の寄付金を活用する考えだが、決して小さな金額ではない。では、再建が日本経済にもたらす効果はあるのだろうか。
 今も皇居の北桔橋門近くに残る天守台。その付近を歩いてみると、意外なほど多くの外国人観光客が訪れていることに気づく。東京メトロ東西線の竹橋駅から徒歩5分。巨石を積み重ねた台の上部にはベンチが置かれているだけ。すぐ隣の大手町で働くサラリーマンでも足を延ばす人は少ないが、「江戸」を感じたい外国人には特別な魅力があるのかもしれない。
 「外から日本を見た経験があるから、この計画は必要だと思ったんです」。天守台で待ち合わせた老舗洋菓子店のオーナーシェフ、細内進さん(74)は、再建する会に参加した理由をこう語った。記憶に鮮明に残っているのは、20代にスイスやフランスで修業した際の体験だ。日本の文化を伝えようと現地の人に見せた絵はがきは、法隆寺や清水寺と関西の史跡ばかり。相手が持つ日本のイメージはゲイシャやフジヤマのままだった。「首都である東京に日本文化を伝えるシンボルが必要だ」と痛感した。
 東京タワーやスカイツリーはあっても、東京にはかつて世界が憧れた江戸時代の文化を伝えるランドマークがない。同じように史跡を失った海外の国には、「首都アイデンティティーの確立」を掲げてベルリン王宮を再建中のドイツや、ワルシャワの旧市街を再現して世界遺産に登録されたポーランドのような取り組みがある。
 「工業立国、農業立国、貿易立国などとやかましく叫んで、多くの金を費やした」、「観光立国こそ、わが国がもっとも適しているものに、その基礎を置いている」。経営の神様、故松下幸之助氏が雑誌『文芸春秋』に論文「観光立国の弁」を載せたのは1954年のことだ。(中略)
  10万人以上の犠牲者を出した明暦の大火の後、4代将軍家綱の補佐役として復興を指揮した会津藩主の保科正之は、「今は町家の復旧に力を入れるべきだ」と江戸城天守閣の再建を諦める英断を下した。それから約360年。成長戦略として観光立国を目指すなか、木造技術という日本文化の広告塔として江戸城天守閣の再建計画が必要かどうか。固定観念を捨てて考える時期が来ているのかもしれない。                
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【 所見 】
 九段「ゴンドラ」は昭和8年(私が生まれた年です)創業の洋菓子の老舗で、細内進さんは2代目、デパート等には一切出店せず、3代目と一緒に美味しいお菓子を作り続けておられます。パウンド・ケーキが特に有名です。他方、地元の町内会長として「首都直下地震対策」のセミナーを開催されるなど私の本業とも関係が深い方です。
http://patisserie-gondola.com/index.html
 私は今までに大阪城、名古屋城など鉄筋コンクリートのお城や、姫路城、犬山城など本来のお城などを見て来ましたが、「東京には東京タワーやスカイツリーはあっても、江戸時代の文化を伝えるランドマークがない。」のは誠に残念なことです。オリンピックを再度開催することでもあり、観光立国を目指すなか、木造技術という日本文化の広告塔として江戸城天守閣の再建計画は時宜を得たものだと痛感します。
 私は、その場で「NPO江戸城再建」の個人賛助会員の申し込みをしました。この記事を読んで賛成してくださる方は、どうか t-masaki@c3-net.ne.jpにメールしてください。後記の申込書をお送り申し上げます。
 

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