2013年2月20日水曜日 | ラベル:
コーポレート・ガバナンス,
リスクマネジメント,
企業経営
|
引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。
長崎シリーズその3です。
○日本二十六聖人殉教碑
豊臣秀吉の禁教令により京都や大阪でとらえられた外国人宣教師6人と子供を含む日本人20名は長崎に送られ、慶長元年(1597)2月5日に、長崎西坂の地で処刑されました。
このことは、長崎に滞在していたルイス・フロイス神父によりヨーロッパに伝えられ、ローマ教皇は26名の殉教者を聖人に列し、「日本二十六聖人」と称せられました。昭和36年、26聖人の殉教碑と資料を展示した記念館、記念聖堂が建てられました。
○長崎名物石畳
○中華街入口
○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf
以下は、記述の抜粋です。
○第1章 なぜターンブルか
7.役員レベルで検討すべきこと
7-1.役員会はいつ、リスクメネジメントと内部統制について検討出来るか
リスクマネジメント及び内部統制に重点をおいた役員会のスケジュールは、下記のようになる。ここでは12月を年度末とし、最初から全てをやろうとするのではなく、段階的な実施計画を想定している。
●リスクマネジメントと内部統制のための役員会スケジュール
1999年10月
まだ行われていないならば、役員会に提出された初期段階の書類の検討、特に
- 完了するべき主要リスク
- 資源の配分
- タイムテーブル
1999年12月
ターンブル計画の進捗状況の検討、特に
- ターンブル・ガイダンスの付録にある質問事項すべてに取組がなされているか。
- リスクマネジメント方針書の文言が適切であるか。またその普及宣伝のための手配がなされているか。
- 内部監査機能が必要かどうか(もしまだ存在しないならば)。もし必要でない場合には役員会は管理職から十分かつ客観的な保証を得ているかどうか。
- すべての開示項目に適切に取り組んでいるか。
2000年2月
リスクと統制について行われている業務の検討。実行計画に照らした、可能性のある重要リスクの確認、および内部統制に関する情報開示についての初期検討。
2000年3月
年度末報告書の最終文言、およびこれに関わる財務に係る内部統制の効果についての役員会における再評価のための補助書類の検討。
2000年5月
リスクマネジメントおよび内部統制を一層向上させる手順についての検討、および目標と主要リスクお見直し(必要であればアップデート)。
最も重要なリスクと問題を抱える部署への、資源の再配分。
2000年10月
リスクマネジメントおよび内部統制の進捗状況を、内部監査の要否に関する毎年1度の見直しを含めて、さらに再検討する。
2001年2月
年に一度の評価の検討(ターンブルの、効果の再評価手順に関する章を参照)。
2001年3月
2000年12月の年度末報告書における、全ての情報開示の最終文言、およびこれに関わる役員会における再評価のための補助書類の検討会議。
ターンブルは、毎年の評価に加えて、役員会が内部統制に関する報告を定期的に受け、再検討すべきであると述べている。
主要なリスク指標と、モニタリング定着の成果は、役員会もしくは指名された委員会に対し継続的に報告されるべきで、それで役員会会長は、リスクマネジメントおよび内部統制の問題について役員会のたびごとに議論を進めることが出来る。他の委員会、例えば上級管理職および監査委員会などからの報告も、リスクと統制について議論する機会を提供する。
年間の通常の役員会議事に付け加えられるのは、〝リスクと統制に関する問題〞かもしれない。定例会議で役員が質問するのに役立つのは次のような事柄である。
- (明紀された)プロジェクトの規模から考えて、もしそれが上手くいっていない場合、どんな主要リスク指標が早期警告を発するように設定されているか。
- 買収におけるデュー。ディリジェンス(債務の査定)の一環として、完全なリスク分析が行われているか。
- 戦略実行の一環として、リスク分析が行われてきたか。もしそうなら、自分たちはどのようにリスクをマネジメントしているか。
- (特定の分野で)確認された重要なリスクに応じたコントロールが行われているか。
- 具体的な内部統制に関する事項が盛り込まれた年度末報告書および決算報告に、何か開示されている問題があるか。
- (競争相手についてマスコミで報導された事件が)自分たちに影響するのを防止するために、どんなリスクマネジメントおよび内部統制の手続きを踏んでいるか。
中小企業の役員は、彼らが日ごろよく顔を合わせ、会社経営について〝手渡し〞の方法を採っており、しかしリスクマネジメントおよび内部統制の問題にお割ける管理職の人材は少ないことを考えた場合、この問題についてもっと頻繁に議論したいと思うだろう。
(所感)
中小企業や、中堅以下の大企業などの場合、経営資源や人材の不足、またノウハウの不足から、リスクマネジメントや内部統制の実行に苦労されているケースが多いと思われます。そのことを経営者が自覚していなければ「何をか言わんや。」ですが、心ある経営者で苦労をされている場合、本章の記述は身に沁みることと思います。
本章の例示には異論がある方もあるかと思いますが、具体例を挙げて記述されていますので、必すや何らかの参考になるものと確信されます。
次回の後半の記述にもご期待下さい。
何回も書きますが、わが国の関係者は何故「Implementing Turnbull A Boardroom Briefing」や、「A New Risk Management Standard」(日本語版が公表されています)
http://www.theirm.org/publications/documents/Japanese_Risk_Management_Standard_031125.pdf
などを、もっと実務の参考にしないのでしょうか。
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2013年2月10日日曜日 | ラベル:
コーポレート・ガバナンス,
リスクマネジメント,
企業経営
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引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。
長崎シリーズその2です。
○原子爆弾の爆心地です。
○平和公園にある北村西望氏作平和祈念像です。

○浦上天主堂に残されている、原子爆弾による被災像です。

○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf
以下は、記述の抜粋です。
○第1章 なぜターンブルか
6.モニタリングと内部監査
●内部監査機能は何を貢献できるのか?
役員会および上級管理職は、リスクマネジメントと内部統制が適切に機能していると納得している必要がある。ラインの管理職は、上級管理職および役員会に対し、会社のリスクマネジメントと内部統制の枠組みに関し確信を与えることに最重要責任を負っている。役員会は客観的な見方、つまりライン管理職からは独立した見方をしても良い。内部監査機能は、適切なレベルの資源を持ち、以下のことを行えなければならない。
a) 役員会と管理職に対し、リスクマネジメントと内部統制の枠組みの適切さと有効性を客観的に保証する。
b) リスクの確認とマネジメントのプロセス改善について、管理職を手助けする。
c) リスクマネジメントと内部統制の枠組みを強化・向上させる役員会の責任を助ける。
内部監査は会社に対し、次のことによって重要かつ価値ある貢献を行うことが出来る。
- リスクマネジメント、特に内部統制システムの設計、実行、運営を巡る問題について助言を与える。
- 業務上などの損失を制御し及び/若しくは回避にかかるコストを節約するチャンスを見つけることにより、効率的かつ効果的なリスクと統制のマネジメントを強化する。
- 例えば統制に関する自己評価プログラムの実施や促進などにより、リスクと統制のコんセプトを推進する。
内部監査機能を導入する価値はあるのか?
答えは、会社のおかれた状況によるであろう。もし内部監査機能が無ければ、ターンブル・ガイダンスでは、コンバインド・コードにおいて要求している〝折に触れて(from time to time)〞の監査を、毎年の要件と解釈する。従って役員会は毎年、見込まれるコストに対する事業利益の入念な見直しをして、内部監査のために事業計画を検討する必要がある。
内部監査機能の利点は次のようなものである。
- 優れたリスク確認、リスクマネジメントおよび内部統制の手順について、会社の全部門が価値ある助言を得ることが出来る。
- 会社の色々な部門の活動をモニターしてもらい、客観的な保証を得るこことが出来る。
- 役員会が内部統制の有効性を再評価するための材料作りに、支援を得ることが出来る。
もし既に内部統制機能がある場合、再配置する必要はあるだろうか?
上級管理職および役員会は、その機能による会社への付加価値を検討し、何らかの変更を要するかどうかの基準を定める必要がある。
変更を決める指標としては、
- 内部監査部門が〝警察官〞のように見られていると言う古い考ええ方がある。
- 現代的なビジネス・パートナーシップというやり方でなく、経営陣に対して何をなすべきか命令するという時代遅れのやり方をしている。
- 内部監査が経営陣の信任を得ていない。
- ビジネスに対する意識が低く、経営および人間関係に関して貧弱なスキルしか持たない不適格者である。
内部監査が自分の〝リスクの世界〞を持って、経営陣や従業員に対してそのリスクが何
であるかを言ったりするようなことはさせないのが肝要である。内部監査は、リスクの確認と、経営陣によるリスクの評価が客観的なものであることを保証し、効果的なリスクマネジメント・プロセスと内部統制を奨励するということにおいて、業務担当の管理職および従業員と共に有効に仕事をすることが出来る。
もし内部監査機能を持つのに十分な資源が無い場合はどうするか?
ターンブルは、会社のリスクマネジメントの継続的な有効性を監視するプロセスを作る必要を強調している。これは内部監査機能がないところであっても、当てはまる。
役員会においては、特に小企業の場合、内部監査機能を持たないという決定をするかもしれない。このような状況の場合、役員会は次のようなことを自問してみるべきである。
- 定期的に役員会に提出している情報の質を上げることが出来るか。
- ハイリスクな領域において特定の仕事をする外部監査人と、意見を一致させることが出来るか。
- 主要部門もしくは業務単位を担当する者に、役員会に定期的に出席させ、担当事業の運営およびリスクマネジメントについて責任を持ち、質問に応え答えるよう求めることが出来るか
- 役員会、もしくは経営委員会の定例議事を変更し、リスクおよび統制に継続的にもっと力を注げるようにすることが出来るか。
- 主要な従業員による、会社の方針と行動規範が守られていることの確認をもっと活用することが出来るか。
- ターンブルが〝1回限り〞のものではないことを確実にするために、もっと何かをすることが出来るか。例えば、統制の戦略が継続しているかどうか。事業目標に対するリスクが適切に処理されているかということについて、役員がもっと実務部隊の相談に乗るなど。
- 役員が〝頂上を目指して〞モニタリングにおける役割をもっと果たすことが出来るか。
ターンブルは内部監査機能が無い場合、役員会は、他のモニタリングプロセスが十分かつ客観的な確約得与えているかどうか評価する必要があると述べている。
(所感)
アメリカにおいては、1992年のCOSO報告書「Internal Control Framework」が内部統制の重要性を顕在化させました。2002年7月にSOX法(Sarbanes-Oxley Act)が制定されました。我が国では2006年6月に金融商品取引法ⅧJ-SOX法)がSOX法比4年遅れで成立しました。以降内部統制に支えられるリスクマンジメントが我が国企業でも重要な問題になりました。
更に2004年9月の COSO2報告書「Enterprise Risk Management Framework」により、企業経営において、内部統制によって支えられる全社的リスクマネジメントが強調されています。然し、わが国の企業でこれらのことが有効に機能しているのか、私は疑問を持っています。 参考書も、どちらかと言えば各論的・技術的な記述が多く、企業経営者が理解するには不十分であるように思われます。
内部監査とリスクマネジメント、内部統制に関しては、昨年5月10日の『藤井範彰著「内部監査の課題解決法」を読んで』の記事で、監査法人に所属され、企業の内部監査・内部統制・リスク管理のコンサルに従事された、藤井さんの実務経験に基づく我が国の内部監査の問題点をご紹介致しました。
Implementing Turnbull A Boardroom Briefing は、内部監査について極めて具体的に在り方・問題点を指摘しています。これが公表された1999年はSOX法も、COSO2報告書もまだ無かった時期ですが、今でも大変参考になると思います。
何回も書きますが、わが国の関係者は何故 Implementing Turnbull A Boardroom Briefing や、次にご紹介しようと思っている、
「A New Risk Management Standard」(日本語版が公表されています)
http://www.theirm.org/publications/documents/Japanese_Risk_Management_Standard_031125.pdf
などを、もっと実務の参考にしないのか不思議だと思います。
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2013年2月1日金曜日 | ラベル:
コーポレート・ガバナンス,
リスクマネジメント,
企業経営
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引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。
私はご縁があってオペラの団体・公益財団法人東京二期会の監事ですが、長崎のグラバー園にはオペラ「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」ゆかりの像があります。
○グラバー園の由縁、貿易商グラバー氏の旧邸です。
○長崎を舞台にしたオペラ「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」を作曲したジャコモ・プッチーニの像です。

○マダム・バタフライを演じて世界的に名をあげた三浦環の像です。

○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf
以下は、記述の抜粋です。
○第1章 なぜターンブルか
5.プロセスを定着させる。
●財務に係る内部統制については、どうだろうか?
財務に係る内部統制は極めて重要であって、役員および上級管理職が正しい意志決定をすることが出来るよう、十分に質の高い情報が彼等に提供されなければならない。考慮されるべき重要事項として、次のようなことが必要である。
- きちんとした会計記録
- 定期的な調整
- あやふやな会計処理の一掃と,異常事項の見直し
- 〝真実かつ公正な〞年度末会計と,信用出来る内部報告書
- 不正リスクとの闘い
- 資産を不正使用或いは損失から守ること
- デリバティブや金融商品による損失を回避すること
- 会社内外からの信用出来る経営情報
- 確認し管理すべき責任」
財務に係る内部統制は、事業リスクの幅広い見方を支える、優れたリスクマネジメン
トの主要部分をなす。
優れたリスクマネジメントと内部統制の多くが既に実施されているということは良くある。既に機能しているものを取換えてはいけない。
中小企業の役員が、この領域に関して問うことが出来るであろう質問は次の通りである。
- 従業員が事業目標と、自分たちの関係するリスクについて十分に理解しているか
- 潜在的な問題の報告のスピードを上げるにはどうしたら良いか
- 主要な財務、業務およびコンプライアンスの統制、例えば調整(reconciliations)などが十分にアップデートされているか
- 世間に対してまずいことになりそうな事業分野はないか。もしあれば、どうすれば改善出来るか。
(事例)
製造業の会社で、会社の規模から経営陣はフルタイムの内部監査は必要でないと考えていた。顧客の数は少なく、競争相手が製造コストの有利な海外に製造設備を移すにつれて、この会社は市場シェアを失ってきていた。経営陣は、上級および中間管理職に対し、リスクの確認および認識プログラムを始めることを決定した。プログラムは身内の偏見を排除し、訓練をやり通す力を与えるため外部のアドバイザーによって行われた。
プログラムを開始した時の経営陣の懸念は、どうやったらプロジェクトが組織に確実に価値を付加出来るものになるかということだった。プログラムが単に届け出とか規則に従うという形式だけのものに見られてはならないと願っていた。
プログラムは3段階に分けられた。
第一段階 - 平役員も含めた役員会との最初のミーティング。これは会社の戦略を明確にし、戦略におけるリスクを確認するため。
第二段階 - 中間管理職とマンツーマンで、業務、財務そしてITに関するリスクと、事
第三段階 - 在庫の注文と使用、在庫記録と経営情報の準備を含む主要手順のテスト
結果、役員会でのディスカッションは、会社の戦略に関する大事な議論を生み、これが戦略の明確化と、従業員への戦略プレゼンテーションへと繋がっていった。このディスカッションによって、多くのリスクへのアプローチが正式なものとなった。そのリスクは、単体ではどれも会社に取って新しいものではなかったが、それらをマネジメントしようとする方法はこれまで開発されていなかった。特別な二つの例は、海外における調達と製造の機会を調査する役割を作ったことと、重要顧客関係に関して、マーケティング部門によるその評価への関与を含めて、役員会に報告することとした、というものである。
(所感)
私の最も力を入れている分野は、「リスクとキャッシュフロー」です。
「財務に係る内部統制は、事業リスクの幅広い見方を支える、優れたリスクマネジメントの主要部分をなす。」という記述は、我が意を得たりです。我が国のリスクマネジメントの解説書で財務との関連に触れられているものは殆どありません。BCPにおいても、中小企業庁の指針以外は、財務についてはあまり重視されていないように思われます。何回も書きますが、わが国のリスクマネジメントの解説書とは一味違っています。
また、「優れたリスクマネジメントと内部統制の多くが既に実施されているということは良くある。既に機能しているものを取換えてはいけない。」も実務上痛感することで、至言です。
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