○引続き北野天満宮です。
○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull A Boardroom Briefing ~
以下は、記述の抜粋です。
9. その他の検討事項
9.1 役員委員会
役員会は会社の内部統制に責任を負う。内部統制について適切な方針を策定し、そのシステムが効果的に機能しているかどうかを定期的に確認する必要がある。ターンブルの最終版における主要な変更点は、管理職が役員会で採用された方針の実行に責任を負っていることを明らかにしたことである。しかし、役員委員会についての言及がある。これらの委員会(監査、リスク、上級役員、その他、何れであろうと)は、その委任事項に関わる内部統制についての報告を定期的に受け取ってレビューすることが出来る。
委員会が問うことが出来る有用な質問は次のようなものである。
- ターンブルに対処するための計画は作られたのか。そしてそのタイムテーブルは達成可能なものか。
- ターンブルの計画の策定と実行について責任をもたされたのは誰か。
- 重要なリスクについて責任を負っている上級管理職は、それぞれについての統制戦略、早期警告メカニズム、および残存リスクを確認しているか。
- 会社にリスクマネジメントと内部統制プロセスをどのように定着させているか。
- 不正、環境、財務およびIT関連リスクの領域において、どんな特別な手段が取られているか。
- ターンブル作業部会ガイダンスの勧告に応ずるために、まだやることが残っているのはどの領域か。
- 会社は、ロンドン証券取引所の要求に沿って報告を行えるようになるか。
- 年度報告及び決算において開示されている何か重要な問題に関して、重大な内部統制の側面はあるか。
監査委員会の関与の範囲は役員会自身が決定するものである。コンバインド・コードは、全ての企業が、規模に関わりなく、監査委員会を持つよう規定している。許された時間を考えると、監査委員会は、ターンブル。ガイダンスを遵守するのに必要な段階のうち、ハイレベルな仕事に限られるだろう。役員会は、監査委員会の役割を内部財務統制に限定したいと考えるかもしれない。
会社によっては、特に大きな上場企業や金融機関にの場合、優れたリスクマネジメントと内部統制を育てるためのリスク委員会を作りたいと思うかもしれない。しかし、他の会社はリスクマネジメントと内部統制の見直しを出来る限り上級役員委員会の中にはめ込みたいと思うだろう。これは勿論、議題と経営情報が改善出来るかどうかを、リスクマネジメントと内部統制の観点から内部でレビューすることを是認する。
最先端を行くためにはどこまでやる必要があるのだろうか
願わくは、企業がターンブル・ガイダンスで求められている基本的な、定着した手続と
モニタリング活動を定着したら、そのシステムを継続的に改善して行く努力をするであろう。
下記は、中小上場企業が、ターンブルの手続きに関して、他の会社との比較における評価をするための方針の概要と、確立することが出来る手順を示したものである。もっとやりたい者にはさわしい良いアイディアは他に沢山あるだろう。しかし、これをこコストと利益に基づいて行うことを目的とすべきである。
ベンチマーキングの目的のレベル
最低限レベル
- 最低限の情報開示
- 事業目標との緩やかな結びつき
- 役員会における限定的な議論
- コンプライアンスの実施としてのターンブル
- ターンブルを守るのに必要なだけの、役員会でのレビュー
- 役員自身に相当に依存したモニタリング
- 従業員はほとんど関与しない
- 事業を活発にするものとの連関
- 従業員の適度な関与
- リスク意識の訓練
- 内部監査の積極的な受け入れ
- 各管理職レベルのコミットメメント
- ワークショップ技術の部分的な利用
- 優れたリスクマネジメントと内部統制の原則の適用
- 簡潔で直接的な早期警告メカニズム
- 会社全体における事業目標の認識
- 〝受容できる〞レベルへのリスクマネジメントへの注力
- 内部監査機能が、リスクと統制の観点から助言の入手源となっている
- その他の独立的なモニタリング活動
- ターンブルが事業を促進させるものとして利用されている
- リスクマネジメントと内部統制が、事業全体においてボキャブラリーの一部となっている
- 会社全体での意見交換
9.3 避けるべき落とし穴
ターンブルは、出来る限りスムーズに行う必要がある。会社が陥り易い重要な領域を下記する。
最も大事なことは、不必要な官僚主義を行うことでは無く、必要に応じ、事業が頼りとしている基本的な仕事をしている人々のリスクマネジメント意識を向上させることである。既存のチャネルに沿ったリスクの伝達速度と、反応の早さと適切さに重点を置くことも必用である。多くの企業では、既存の手順を活用すること、そして既存のソフトウェアと報告システムを強化することが必要となるだろう。
- 早期警告システムが無い
- 確認されたリスクが多すぎる
- 手遅れになるまで放っておく
- 官僚主義を助長する
- 基本的な内部財務統制を無視する
- 監査委員会のオーバーロード
- 業務管理職のコミットメントが得られない
- 高いリスクに適切に取り組んでいない
- 優れたリスクマネジメントの原則を十分に重視していない
10. 結び ターンブルはあなたの会社にどんな効果をもたらすか
これまで述べて来たプロセスを一通り経たからといって、勝利を宣言してはならない。ターンブルが想定しているのは「一回限りの」試みではない。あなたは事業を継続的に発展させるためにこのプロセスを利用すべきである。そうすれば次のような結果が得られるに違いない。
- 企業の目標達成がより現実に近くなる
- 重要なリスクが認識され、監視される
- 〝意外な出来事〞が少なくなる
- 計画の仕方が進歩する
- 事業が向上する
- 役員そして株主に取って、眠れない夜が少なくなる
繰り返しになりますが、「ターンブルの実行 ー 取締役会への説明」では、内部統制に支えられたリスクマネジメントを実行する主体は経営者・役員会であるということを明確に述べています。 今回の記述でも、最低限レベル の最後に「従業員はほとんど関与しない」と書いてあります。また、「監査委員会に負荷がかかり過ぎないように注意しなさい。リスクを確認し管理するのは監査委員会の責任ではない。それは経営陣の責任である。」
など、わが国の経営者は良く噛みしめるべきだと思います。
潜在的な落とし穴 の中では、「早期警告システムが無い」ことを再度強調し、更に「確認されたリスクが多すぎる」は耳が痛いところです。本ガイダンスは終始財務の重要性にも触れていて「基本的な内部財務統制を無視する」との記述は、アメリカにおけるSOX法制定の遥か以前のことで,慧眼に敬服致します。
次は「A New Risk Management Standard」(日本語版が公表されています)をご紹介したいと思います。