私は鉄道が大好きで、就職の際当時の「日本国有鉄道」を受験する準備をしていました。しかし最初に決まった会社に就職するというルールがあり、住友銀行に入りました。 80歳になっても若い時の気持ちのままです。
ミニ蒸気機関車のオーナーに「どこの国の製品ですか。」とお聞きしましたとろ「私が作りました。」と言われ驚嘆しました。ペットボトルの水を補給し、石炭と炭を炉に投入しながら2.1Kmを走っておられました。当日ミニ蒸気機関車がもう一台ありました。
楽しい1日を過ごすことが出来ました。
〇自家製ミニ蒸気機関車です。
〇発車オーライ
〇もう一台のミニ蒸気機関車です。
7.キャッシュフロー検討の事例 事例②
事例②はある電力会社です。
8年ほど前、私はある電力会社の企画部のリスクマネジメント担当の複数の方と大学の先生とで小規模な研究会を行っていました。その研究会でキャッシュフローについての意見を求められましたので、有価証券報告書の記述に基きキャッシュフローの状況の検討を致しました。下記はその時のデータです。
平成16年3月末と平成17年3月末のバランスシートを比較して、資金需要項目と資金調達項目に分け、それを長期資金と短期資金に分けた表 ➞ 「資金運用表」は下記です。
○資金運用表(単体) (単位億円)
資 金 需 要 | 資 金 調 達 | |||
項 目 | 金 額 | 項 目 | 金 額 | |
長 期 資 金 |
核燃料他資産増
その他固定資産増
長期借入金減
|
167 179 1327 |
電気事業固定資産減 (固定資産減 (固定資産仮勘定増 社債増 その他固定負債増 自己資本増 【 短期に流用 |
926 1 1360) ―434) 238 382 674 547 】 |
計 | 1673 | 計 | 2220 | |
短期 資金 |
現・預金増 その他流動資産増 短期借入金減 その他流動負債減 |
29 24 600 525 【 長期から流用547 】 |
1年以内返済の長期借入金増 未払費用増 未払税金増 諸引当金増 |
442 88 75 26 |
計 | 1178 | 計 | 631 | |
合 計 | 2851 | 合 計 | 2851 |
(評価)
長期資金面では、核燃料他の資産増346億円と長期借入金減1327億円計1673億円の資金需要に対して、電気事業固定資産減926億円、社債増238億円、その他固定負債増382億円に加え自己資本増674億円、計2220億円で賄い、547億円を短期資金に流用した形になっています。
短期資金面では、その他流動資産増24億円、短期借入金減600億円、その他流動負債減525億円計1178億円の資金需要に対して、調達は1年以内の長期借入金の増加442億円、未払費用・税金増163億円、諸引当金増26億円計631億円に止まり、不足は長期資金の流用で賄い、残額は現・預金増29億円となっています。
今期資金需要の太宗は長・短借入金の返済1,927億円です。減価償却金額を下回る設備投資(固定資産減となって表れている)による資金余剰と利益で長・短借入金を毎期減少させています。誠に好ましい資金運用状況です。連結ベースでもこの傾向は変わっていない筈です。
2.キヤッシュフロー計算書の分析
○キヤッッシュフロー計算書 (単位 億円)
科 目 | 15年3月期 | 16年3月期 | 17年3月期 |
営業活動によるキヤッシュフロー ① (内減価償却費) |
4596 (2764) |
3868 (2607) |
4192 (2402) |
投資活動によるキヤッシュフロー ② (内固定資産の取得による支出 ) |
2444 (2667) |
1998 (2118) |
1935 (2063) |
フリー キヤッシュフロー ①―② | 2152 | 1870 | 2257 |
財務活動によるキヤッシュフロー (内 社債増減) (長期借入金増減) (短期借入金増減) (コマーシャルペーパー増減) |
△2228 ( △171) ( △857) ( △697) ( △240) |
△1981 (△1569) ( △726) ( 300) ( 250) |
△1935 ( 210) ( △871) ( △609) ( △580) |
現金及び現金同等物の増減額 | △76 | △111 | 322 |
会社が利益を挙げている上に、減価償却費を下回る固定資産取得が、キヤッシュフローを好転させている根本的な理由です。
ここで、財務活動の内容を検討して見ます。
当時の電力会社は、基本的には銀行借入・社債による調達に問題が起こる恐れは無いと考えていたと思いますが、万一何か問題が起こって調達に齟齬を来たすような事態が生じたらどうなるという点についての当時の私の意見は下記です。
① 17年3月期末の(単体)の現預金312億円は、会社の月商1、111億円の0.3ヶ月分です。コミットメントラインの状況は分かりませんので、これだけを見ればかなりの低水準です。※
※事故に備え、平時から「月商の1ヶ月分くらいの資金」を用意しておくのは、CFO(最高財務責任者)の流動性リスクに対する経験則です。
例えば、ソニーの2004年3月期ア二ュアルレポートの記述です。
「ソニーは流動性確保のために、グループ全体で、年度における平均月次売上高および予想される最大月次借入債務返済額の合計の100%以上に相当する流動性を維持することを基本方針としています。」
② この会社は10年ものの社債・期限一括返済の長期資金借り入れで資金調達をしていました。これらの返済期限の平準化を考えなくても良いのかと言う問題があります。
③ キヤッシュフロー計算書を3期見ますと、社債増減、長期借入金増減、短期借入金増減、コマーシャルペーパー増減がバラバラです。基本的な資金調達(返済)方針が無く行き当たりバッタリなのではないかと言う感があります。
④ 根本は、社債・銀行借入に不安がないという状況では、こんなことを考えなくてもキヤッシュフローはご安泰だと皆が思っている結果だと考えられますが、それで良いのでしょうか。
研究仲間の企画部の方が財務部門に私の意見を伝えて下さいました。財務部門からは「当社は銀行から借りてくれ、借りてくれと言われている。そんなことは考慮する必要は無い。」ということだったとお聞きしています。
6年後の平成23年度、平成24年度、この会社は千億円単位の赤字となっています。「営業活動によるキャシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー」も千億円単位のマイナスになり、長期借入金は1兆円以上増加しています。東京電力の場合「想定外」ということが問題になりました。この電力会社の場合もキャッシュフローの状況は一変しました。
どんなに安定したキャッシュフローの状況に見えていても、こういったことが起こると考えているべきだと痛感します。