事業中断損失の考え方
6月10日・20日の記事で、下記の表をお示ししました。今回からは事業中断損失・事業がストップした場合のキヤッシュフローの悪化額について書きます。
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表 参考.1-1 復旧費用の算定(製造業) (単位:千円)
損害の程度 | 復旧期間 | 復旧費用 | 備 考 | |
建 物 | 全 壊 | 日 | ||
半 壊 | 日 | |||
機 械 | 建物全壊 | 日 | ||
建物半壊 | 日 | |||
棚卸 資産 |
全 損 | 日 | ||
半 損 | 日 | |||
器具・工具 等 | ||||
資産関係計 | ( A ) | |||
事業中断損失 | ( B ) | |||
復旧費用計 | ( A )+( B )=( C ) |
〇生産が1ヶ月ストップした場合のキヤッシュフロー悪化額(B) (単位百万円)
科 目
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1 ヶ 月
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1ヶ月(通常ベース)
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通常ベース比
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営 業 収 入
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0
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営業
支出
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変動費
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固定費
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小 計
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月次 資金収支額
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(B)
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〇直接原価計算
直接原価計算(Direct Costing)と言う会計技法があります。これは本来は、製造原価・一般管理費・販売費を変動費と固定費に分けて、表示し、原価、営業量、利益関係の分析を会計記録に取り入れ、短期の利益計画の役立たせるものです。
事業中断損失・事業がストップした場合のキヤッシュフローのシミュレーションを行なうにあたっては、直接原価計算の変動費・固定費の数字を用います。
このため、通常の損益計算書から、費用を変動費・固定費に分けた直接原価計算による損益計算書を作成します。
製造業のケースを示します。
〇 損益計算書 (単位 百万円)
科 目
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金 額
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売上高
|
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売上原価
1. 期首製品棚卸高
2. 当期製品製造原価
(内減価償却費)
3. 期末製品棚卸高
売上原価(上記1+2-3)
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売上総利益
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一般管理費および販売費
(内減価償却費)
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営業利益
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営業外収益
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営業外費用
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経常利益
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特別利益
特別損失
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税引前当期純利益
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法人税・住民税
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税引後当期純利益
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〇製造原価計算書 (単位 百万円)
科 目 | 金 額 | |
内 訳 | 合 計 | |
I .材料費
1.期首材棚卸高
2.当期材料仕入高
合 計(1+2)
3.期末材料棚卸高
当期材料費(1+2-3)
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I .労務費 (1+2)
◎1.基本給
◎2.諸手当、福利厚生費
当期労務費
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III .経費
1. 電力費
2. ガス・水道料
3. 運賃
4. 減価償却費
5. 修繕費
6. 租税・公課
7. 不動産賃借料
8. 保険料
9. 旅費・交通費
◎10.通信費
11.外注加工費
◎12.雑費 13.その他
(固定・変動費を判断)
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当期経費
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1.当期製造総費
( I + II + III )
2.期首仕掛品棚卸高
合 計(1+2)
3.期末仕掛品棚卸高
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当期製品製造原価 (1+2-3) |
〇一般管理費・販売費 (単位 百万円)
科 目 | 金 額 | |
内 訳 | 合 計 | |
一般管理費および販売費 ◎1. 販売員給与手当 ◎2. 販売員旅費 ◎3. 広告宣伝費 4. 発送費,配達費 ◎5. 役員給与手当 ◎6. 事務員給与手当 ◎7. 減価償却費 ◎8. 地代・家賃 ◎9. 修繕費 ◎10.事務用消耗品費 ◎11.通信費・交通費 ◎12.雑費 13.その他(固定費・変動費 を判断) |
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一般管理費・販売費 計 |
前記の計算の結果、ある会社の直接原価計算方式による損益計算書が下記だったとします。
○ 直接原価計算方式による損益計算書
(単位百万円)
科 目 | 1 年 間 | 1 ヶ 月 |
売上高 | 5、923 | 494 |
変動費 | 4,421 | 368 |
固定費 | 1,233 | 103 |
内減価償却費・諸引当 ( 現金ベース固定費 ) |
108 (1,128) |
9 (94) |
営業利益 | 269 | 23 |
この企業では、事故や災害により売上がゼロになっても出ていく費用が、年間1,233百万円、減価償却費を除く現金ベースでは1、128百万円と計算されます。つまり売上がゼロになっても毎月平均94百万円のお金が出ていくことになるわけです。
なお、損益計算書上の営業外損益・特別損益は考慮外となっている点ご留意下さい。細かい内容は「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」の上級コース「参考.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」(参考62―68)をご覧下さい。詳細は次回にご説明致します。
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/download/bcppdf/bcpguide_11b.pdf
固定費と変動費の分解については、今は発行されていませんが、中小企業庁編平成15年度調査 「中小企業の原価指標」 (株式会社 同友館 ISBN 4-496-03706-8 ) P.11-14が参考になります。(前記上級コースに転記。)固定費か変動費かが不明な費用は固定費に算入しておけば固めの計算が出来ます。