前回のブログの最後に、『細かい内容は「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」の上級コース「参考.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」(参考62―68)をご覧下さい。詳細は次回にご説明致します。
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/download/bcppdf/bcpguide_11b.pdf 』
と書きました。
今回は「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」「参考.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」をご説明いたします。下記「◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊」内は、「財務診断モデル」「参考.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順」の表です。今回はこれに解説を加えます。
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〇直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順
計算手順を示します。卸・小売業、建設業も同じ考え方で計算します。
(表1) 製造原価報告書の内訳の分類 (単位:千円)◎印は 固定費
科 目 | 金 額 | |
内 訳 | 合 計 | |
Ⅰ.材料費 期首材料棚卸高 当期材料仕入高 合 計(1+2) 期末材料棚卸高 当期材料費(1+2-3) |
||
Ⅱ.労務費 ◎1.基本給 ◎2.諸手当、福利厚生費 当期労務費(1+2) |
||
Ⅲ.経費(1+…12) 1. 電力費 2. ガス・水道料 3. 運賃 ◎4. 減価償却費 (五) ◎5. 修繕費 ◎6. 租税・公課 ◎7. 不動産賃借料 ◎8. 保険料 ◎9. 旅費・交通費 ◎10.通信費 11.外注加工費 ◎12.雑費 13.その他(固定・変動費を判断) 当期経費 |
||
1. 当期製造総費用(Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ) 2. 期首仕掛品棚卸高 合 計(1+2) 3. 期末仕掛品棚卸高 |
||
当期製品製造原価 (1+2-3) |
(表2)製造原価報告書の作り換え (単位:千円)
科 目 | 金 額 | 備 考 | ||
変動費 |
当期材料費 | (一)× (当期製品製造原価 / 当期製造総費用) =表 3の① |
||
電力費 ガス・水道費 運賃 外注加工費 その他変動費 |
||||
変 動 費 計 | (一) | |||
固 定 費 |
労務費 | |||
減価償却費 修繕費 租税・公課 不動産賃借料 保険料 旅費・交通費 通信費 雑費 その他固定費 |
(五) | ( 二 ) × (当期製品製造原価 / 当期製造総費用) =表 3の② (五)× 当期製品製造原価 / 当期製造総費用) =表 3の⑤ |
||
固定費計 | (ニ) | |||
当期製造総費用 |
製造原価の金額に (当期製品製造原価 / 当期製造総費用)の割合を乗じて金額を修正する。棚卸資産の関係による製造総費用と製造原価の金額(含む費用の内訳金額)の差異を一致させる。
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期首と期末で仕掛品棚卸高が増減しますから、当期製造総費用と当期製品製造原価は異なります。そのため当期製品製造原価の変動費、固定費を算出するため、製造総費用の変動費、固定費に(当期製品製造原価 / 当期製造総費用)を掛けて、金額を調整します。
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表3 製造原価金額の修正 (単位:千円)
科 目 | 金 額 | |
変動費 |
当期材料費 | |
電力費 ガス・水道費 運賃 外注加工費 その他変動費 |
||
変動費 計 ① | ||
固定費 |
労務費 | |
減価償却費⑤ 修繕費 租税・公課 不動産賃借料 保険料 旅費交通費 通信費 その他固定費 |
||
固定費 計② | ||
売上原価 |
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変動費、固定費の各項目は一々修正しなくても、合計金額だけ修正すれば十分です。
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表 4 一般管理費および販売費の内訳の分類
(単位:千円)
科 目 |
金 額 | |
内 訳 | 合 計 | |
一般管理費および販売費 ◎1. 販売員給与手当 ◎2. 販売員旅費 ◎3. 広告宣伝費 4. 発送費,配達費 ◎5. 役員給与手当 ◎6. 事務員給与手当 ◎7. 減価償却費 ⑥ ◎8. 地代・家賃 ◎9. 修繕費 ◎10.事務用消耗品費 ◎ 1 1.通信費・交通費 ◎12.その他固定費 13.その他変動費 |
||
一般管理費・販売費 計 |
表 5 一般管理費・販売費の内訳の作り換え
(単位:千円)
科目 | 金額 | |
変動費 | 発送費・配達費 その他変動費 |
|
変動費 計 ③ | ||
固 定 費 |
販売員給与・手当 販売員旅費 広告宣伝費 役員給与・手当 事務員給与・手当 減価償却費 ⑥ 地代・家賃 修繕費 事務用消耗品費 保険料 通信費・交通費 その他固定費 |
|
固定費 計 ④ | ||
一般管理費・販売費計 |
一般管理費および販売費の内訳金額はそのまま使います。
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表 6 損益計算書の内訳の作り換え
(単位:千円)
科 目 |
金 額 | |
内 訳 | 合 計 | |
売 上 高 | ||
売上原価 (1+2) 1 . 変動費① 2 . 固定費② |
||
売上総利益 | ||
一般管理費・販売費(1+)2 1 . 変動費③ 2 . 固定費④ |
||
営 業 利 益 |
表 7 直接原価計算による損益計算書の作成
(単位:千円)
科 目 | 1年間 | 1ヶ月 |
売 上 高 | ||
変動費計 (①+③) | ||
固定費計 (②+④) | ||
内 減価償却費(⑤+⑥) (現金ベース固定費) 1 |
||
営 業 利 益 |
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こうして、直接原価計算による損益計算書が出来上がりました。
なお、前回も書きましたが、損益計算書上の営業外損益・特別損益は考慮外となっている点ご留意下さい。
また、前回書きましたように、固定費と変動費の分解については、今は発行されていませんが、中小企業庁編平成15年度調査 「中小企業の原価指標」 (株式会社 同友館 ISBN 4-496-03706-8 ) P.11-14が参考になります。(前記上級コースに転記。)
下記は、「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」の上級コースの記載です。
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○ 固定費と変動費の分解については、中小企業庁編平成15年度調査 「中小企業の原価指標」 (株式会社 同友館 ISBN 4-496-03706-8 ) P.11-14 を参照して行うと便利
です。固定費か変動費かが不明な費用は固定費に算入しておけば固めの計算が出来ます。
以下に同書の費用分解基準を転記します。
【製造業】
固定費
直接労務費、間接労務費、福利厚生費、減価償却費、賃借料、保険料、
修繕料、水道光熱費、旅費、交通費、その他製造経費、販売員給料手当、
通信費、支払運賃、荷造費、消耗品費、広告費、宣伝費、交際・接待費、
その他販売費、役員給料手当、事務員(管理部門)・販売員給料手当、支払
利息、割引料、従業員教育費、租税公課、研究開発費、その他管理費
変動費
直接材料費、買入部品費、外注費、間接材料費、その他直接経費、
重油等燃料費、当期製品知仕入原価、当期製品棚卸高―期末製品棚卸
高、酒税。
【卸・小売業】
固定費
販売員給料手当、車両燃料費(卸売業の場合50%)、車両修理費(卸売
業の場合50%)販売員旅費、交通費、通信費、広告宣伝費、その他販売
費、役員(店主)給料手当、事務員(管理部門)給料手当、福利厚生費、
減価償却費、交際・接待費、土地建物賃借料、保険料(卸売業の場合50%)、
修繕費、光熱水道料、支払利息、割引料、租税公課、従業員教育費、その
他管理費。
変動費
売上原価、支払運賃、支払荷造費、支払保管料、車両燃料費(卸売業の場
合のみ50%)、保険料(卸売業の場合のみ50%)、
注:小売業の車両燃料費、車両修理費、保険料は全て固定費。
【建設業】
固定費
労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、現場従業員給料手当、福利厚
生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、その他経費、役員給料
手当、退職金、修繕維持費、広告宣伝費、支払利息、割引料、減価償却費、
通信交通費、動力・用水・光熱費(一般管理費のみ)、従業員教育費、その
他管理費。
変動費
材料費、労務費、外注費、仮設経費、動力・用水・光熱費(完成工事原価
のみ)運搬費、機械等経費、設計費、兼業原価。
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