「阪神淡路大震災の回顧」(1)

2015年1月18日日曜日 | ラベル: |

 1月17日(土)は阪神淡路大震災から20年目の日ということで、新聞やテレビは大きく報道しています。私は当時関西の都市銀行の子会社の損害保険代理店に勤務していました。
 平成7年(1995年)1月17日(火)は成人の日の連休明けでした。その日は関西から出張して貰って、東西打ち合わせの会議を開くことになっていましたが、地震で吹っ飛んでしまいました。
 このブログの第2回2011年(平成23年)4月15日の阪神淡路大震災に関する部分を再度引用致します。
 『平成7年(1995年)1月17日の朝6時少し前、当時都銀系の損害保険代理店に勤務していた私は、朝食の最中関西で大きな地震が起こったと言うTVのニュースを見ていました。神戸の震度計は振り切れて、ニュースでは最大震度は京都と報じていました。8時ころ会社に出社してTVで見た神戸市街からは何本かの火災の煙が立ち登っていました。大阪の本社とは専用線が通じていましたが誰も出社して来ません。9時近くにようやく連絡が取れ大阪の状況が把握出来ました。
 その朝、或る損害保険会社の神戸の単身赴任寮で、嘗て大きな地震の経験のある社員が、窓の外の状況を見て、大変な地震が起こったと判断し、地震直後でまだ電話が混雑する前に東京本社に「神戸で大変な地震が発生した。」と第一報を入れました。そのため、その会社は初動態勢が圧倒的に上手く行きました。「何が起こったのか」を早く的確に把握することが危機管理の第一歩です。
 私は翌日のJALの最終便で関西空港に向かいました。着陸寸前に機窓から見た神戸の街はまだ赤く燃えていました。会社の神戸支店は当分来て呉れるなと言います。交通機関も水道も途絶していて、外部の人が来るのは迷惑だと言うことです。
 2週間後にJRが住吉まで開通し、三の宮にある支店の水道も復旧したので神戸に向かいました。連絡バスの乗り場は長蛇の列だったので、住吉から三の宮まで歩きましたが、道路は波打っていました。市街地は寒く、断層の上だけが不公平に被害を受けていました。三の宮の商店街は惨憺たるものでした。帰途神戸の波止場から平時は遊覧船のサンタマリア号にすし詰めになって大阪の天保山に帰りました。そこには普通の生活があり、ひどい違和感を覚えました。
 ここに書いたような地震発生直後の経過は、神戸の人は全く判っていませんでした。何故ならば、地震直後はTVも見られず、ラジオも聞くことが出来ず、情報は全く途絶していたからです。(後略)』
 私がリスクマネジメントやBCPの実務に従事するについて、阪神淡路大震災の経験は非常に大きな影響を与えています。以下、幾つかの視点で私の意見を述べます。
①自然災害による死者等の推移
 下記の棒グラフは、戦後の自然災害による死者等の推移表です。
 一番右が1995年(平成7年)1月17日(火)に発生した阪神淡路大震災の死者 : 6,434名、行方不明者 : 3名、負傷者 : 43,792名の棒グラフです。その左の高い棒グラフは、1959年(昭和34年)9月26(土)の伊勢湾台風の死者4,697人・行方不明者401人負傷者38,921人の棒グラフです。
 言いたいことは、1959年(昭和34年)から1995年(平成7年)までの間の44年間は自然災害による死者等の数は46年間年1,000人以下の低い状態が継続していた、穏やかな状態だったと言うことです。

 その後、2011年(平成23年)3月11日(金)に東日本大震災が発生しました。2015年(平成27年)現在、死者は15,889人、重軽傷者は6,152人、警察に届出があった行方不明者は2,594人と報じられています。阪神淡路大震災後僅か16年後に死者の数が阪神淡路大震災を遥かに上回る地震が発生した訳です。そして、今首都直下型地震の発生が警告されています。上の棒グラフに見られる穏やかな時代は終わったように思われます。
因みに、1923年(大正12年)9月1日に発生生した関東大震災の死者・行方不明者は10万5千余名とされています。
 自然災害とは異なりますが、第二次世界大戦における、我が国の空襲の人的被害は、戦後の自然災害よりも遥かに大きく、例えば、1945年(昭和20年)3月10日の東京大空襲の人的被害は、警視庁の調査では死亡8万3793人とされていますが、実数はこれよりも多く、死者・行方不明者の数も10万人以上と言われています。
 1945年(昭和20年)8月6日の広島市の原爆の被害は、広島市の人口35万人(推定)のうち9万~16万6千人が死亡したとされています。
1945年(昭和20年)8月9日の長崎市の原爆の被害は、長崎市の人口24万人(推定)のうち約7万4千人が死亡したとされています。
 本稿とは関係の無いことですが、戦中派としては戦争の悲惨さを思わずにはいられません。
②被災者の死因
 遺体を検案した監察医のまとめによりますと、阪神淡路大震災の死者6,434名の80%相当、約5000人は木造家屋が倒壊し、家屋の下敷きになって即死したとされています。検視の際気管にススが入っていなければ,死後に火災に遭ったことになるということです。
 これに対し東日本大震災の犠牲者の死因の殆どが津波に巻き込まれたことによる水死であって、水死は90.64%(14,308体)とされています。
 首都圏直下地震対策としては、阪神淡路大震災の状況の方が参考にると思います。
 2014年5月1日(木)の記事に書きましたように、東日本大震災における「津波」に当たるものは、首都圏直下型地震では「大火災」です。
 都市銀行の亀戸支店長時代、亀戸には関東大震災(1923年)と東京大空襲(1945年)の両方を経験した方が数多くおられました。2回の大火災で生き延びることが出来た理由は、「早期に川を渡って対岸に逃げられたこと。」と異口同音に言われていました。当時は隅田川や江戸川という大きな川を渡って、漸く大火から逃れられた訳です。今は海岸の埋立地に逃げる手もあると思います。

〇DRPの時代に起こった都市直下型地震
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以降、BCP((Business Continuity iency Plan)が叫ばれるようになりました。それまではDRP(Disaster Recovery Plan)災害復旧計画の時代でした。阪神淡路大震災は1995年に起こった都市直下型地震ですから、対策面で色々な不備が露呈しています。逆に、当時の記録は反面教師として対策を樹てるのに非常に参考になると思います。
 また、東日本大震災は地方の都市・集落中心の地震なので、首都直下型地震とは異った側面が多いと思います。

今回はここまでに致します。

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BCMSにおける企業トップへのサポート

2015年1月4日日曜日 | ラベル: |

 12月7日(日)に最初にアップした原稿を訂正し、再度アップしましたので12月は1回のみのアップになりました。申し訳ありませんでした。
 2011年4月1日「バラとリスクマネジメント」でスタートしたこのブログは129回目になりました。今年もどうか冝しくお願い申し上げます。

 前回ISO 22301(JIS22301)の「5.リーダーシップ及びコミットメント」に関する部分の議論をご紹介致しました。この点に関し、12月4日に、別の研究会で東京ガスの吉野太郎様から 企業のBCMSや危機管理の実状についての具体的なお話をお聞き出来て大変参考になりましたので今回ご報告申しあげます。
 吉野様からは、昨年8月30日に公表された日本内部統制研究学会のERM部会での報告「企業におけるERMの役割とその実施方法に関する考察」という論文についてのお話をお聞きしました。吉野様は永年に亘り東京ガスのリスクマネジメント、特にERM(Enterprise Risk Management)とBCP(Business continuity plan)の担当者としてご活躍になっておられます。『 』内は「企業におけるERMの役割とその実施方法に関する考察」の記述です。
 但し、「本論文はあくまでも吉野様の一つの見方で、意見に関する部分は,吉野様の個人的な見解であり,吉野様が所属される企業の意見ではない。また,記載した事例等は,公開資料を基に作成したものであり,吉野様が所属される企業の事例ではない。」とされています。
 吉野様は、論文の冒頭で『ERMの第一の役割は,リスク管理部門が,企業全体のリスクとその対応状況を一覧化・総括して経営に報告することにより,リスクマネジメントの観点から経営者の経営の現状把握を支援し,リスク対応についての全体最適の経営判断をサポートすることである。』と言われています。我が国のリスクマネジメントの専門家でこう言っておられる方は非常に少ないと私は思います。
 企業は『平時には,個別具体的なリスクに対しては,各部門・子会社(以下,「各部門」という)が責任を持って対応することが基本となる。経営者がリスクマネジメントに対する最終的な責任を負うことを前提とした上で,各部門は自部門の業務遂行に伴うリスクを自ら把握すると共に,対応策を自ら策定・実施し,自部門におけるリスクマネジメントを整備・運用する役割と責任を負うという分権型組織体制がとられている。』
 危機管理については、『企業におけるERMの第二の役割は,危機管理体制を強化することである。危機管理体制を強化するためには,以下の三点が必要と筆者は考えている。①ERMと危機管理・BCPとの関係を理解し,ERMの一環として危機管理体制を強化すること。②平時のリスクマネジメントと有事のリスクマネジメントとの役割の違いを理解し,それぞれの役割に応じて強化すること。③危機管理体制には,各担当部門長が権限を持つ分権的な体制をとる場合と,社長に権限を一元化する中央集権的な体制をとる場合との二つの類型があること。両者は必要となる事項やリスク管理部門の役割が一部異なることを理解した上で,それぞれの特性に応じて強化することである。』と述べておられます。
 この記述は、前回議論致しました「BCMSにおける企業トップのリーダーシップのあり方」について我が国では如何に行うべきかということに対する、実践的な解決策を示しているものだと私は思います。
 更に『企業では,ERMと危機管理・BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)を別の部門が所管している場合も多い。その場合,ERMと危機管理・BCPとの関係が社内で理解されていないと,両者が別々に整備・運用され,会社全体でリスクマネジメントが統一的に行われず,リスクマネジメントが効率的・効果的に実施されていない場合がある。また,ERMが危機管理体制を強化する手段として活用されていない場合がある。
 企業全体でリスクマネジメントを統一的に実施し,ERMを危機管理強化の手段として活用するためには,危機対応やBCPをERMの一環として行う,もしくはそれらをERMの一部として取り扱うことが必要である。』
 と言っておられ、我が国の企業のERMやBCPの実践に関する問題点を的確に指摘されています。
 『有事のリスクマネジメントの役割は,リスクが顕在化した時に組織として迅速かつ適切に対応することである。そのためには第一に,事案の重要性に応じたしかるべき階層の経営層による意思決定に基づいた対応を行うことが必要である。第二に,事案の重要性を見極め,有事であるか否かの判断を迅速かつ適切に行うため,しかるべき階層の経営者へのリスク情報の迅速な報告と,関係部門による多面的な検証と支援が必要である。』
 『危機管理体制には,各担当部門長が権限を持つ分権的な体制をとる場合と,社長に権
限を一元化する中央集権的な体制をとる場合との2つの類型がある。
(1)部門長が権限を持つ分権的な体制をとる場合(内容省略)
(2)社長に権限を一元化する中央集権的な体制をとる場合
   例えば,大規模な地震,事故,システム障害など,損失拡大のスピードが急速であ
   り、当初から危機であることが明確な場合である。影響範囲が広く,対応に要する
   関係部門の数が多数にのぼり,日常業務の多くを中断して,全社一体となって対応
   に当たる必要がある場合が多い。
   前記(1)の体制であっても,後に社長に権限を一元化した体制で対応することが必要
   と判断された段階で,本体制に移行する。なお,その可否の判断は社長が行う。』
 『権限を社長に一元化する場合の危機管理におけるリスク管理部門の役割は、第一に,経営者のサポートを行うことである。経営者への情報一元化,および指揮命令系統の一元化を確実に行うことにより,経営者が限られた時間の中で,限定的な情報を整理・統合して,企業としてとるべき行動を判断し,実行できるようサポートすることが必要である
 復旧段階におけるリスク管理部門の役割は,第一に必要な復旧対策を実現するために,経営者に予算など経営資源の最適な配分を意思決定するために必要な情報を提供することである。』と言ってられます。
 最後に『企業価値向上の手段は企業特性や経営環境により異なるため,企業が対処すべきリスクも企業により様々である。そして,ERMの役割や実施方法も,企業により異なり,定型化されたものはない。そのため,企業価値向を持続的に向上する手段としてERMを整備・運用するに当たっては,自社の企業特性,経営環境,およびステークホルダーの期待などを総合的に検討して,自社に適した体制を個別に作ることが必要である。本稿を一つの例として,ERMを整備・運用する際の参考にしていただければ幸いである。』とされていますが、このことはBCPの実践についても同様だと私は考えます。
 【 所見 】
 前回のご報告に書きましたように私どもは或る研究会の場で、
 『日本の経営者は、ボトムアップ型の組織の頂点にいて部下の補佐によって職務を遂行するケースが多いため、日本の経営者がISO 22301で想定しているマネジメントスタイルを実行するためには、日本の組織を前提とした補完的なサポート策を加味したやり方を考えるべきではないか。』
 『創業者型の経営者、欧米の子会社のトップを経験し欧米型の経営に同感している経営者を除いて、現状日本の経営者の多くは、ISO22301が要求していることは実行出来ないと思われるので、当面は次善の策として、ERMやBCPの担当者が経営者の判断をサポートして
ISO 22301の要求事項が実行可能となるような対応策を講ずべきである。』
という問題提起をしたのですが、吉野様のお話は我が国の企業においてERMやBCPの担当者が如何に経営者に対して補完的なサポートをするかについての実践的な解決策の一案を提示されていると私は思います。

 
 私は我が国の経営者に対して、ISO22301が要求している事項に関して、基本的な素養や考え方の教育をしっかりと行う必要があると考えます。少なくとも、BCMSにおいて行われようとしている内容が、どうして必要なのか、概略どのようにして行うべきものなのか、どのような効果を持ち、どのような弊害やリスクを伴っているかなどを経営者は理解している必要があります。さもなければ吉野様の言われる「経営者に対するサポート」が活きません。そのような能力は付け焼刃で身に付けようとしても付くものではありません。また、そもそもマネジメントとは何かについてのしっかりとした考え方や哲学が必要で、日本的な経営スタイルでは容易ではないことだと考えます。
 一方、当面の次善の策として、リスクマネジメント、BCPの担当者が経営者をサポートをして、経営者がISO22301が要求している事項の実行が可能となるような対応策を講ずるについても問題が残っています。
 東日本大震災に対する企業の対応に関する報告書、例えば東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会の中間報告書は、「原子力の災害対応に当たる関係機関や関係者、原子力発電所の管理・運営に当たる人々の間で、全体像を俯瞰する視点が希薄であったことは否めない」としています。また、みずほ銀行の「システム障害特別調査委員会」報告書でも「一連の障害を通じて、システム全体を俯瞰でき、かつ、多重障害の陣頭指揮を執り得るマネジメントの人材も不足していた。」ことを指摘しています。
 いずれのケースでも「事故や災害発生時に企業全体を見ている人がいなかった」ということだと思います。「木を見て森を見ず」といいますが、部分、部分の対応ばかりに追われていて、企業が被災時に取る実際の対応について、或いは平素PDCAサイクルを回すについて、更には経営者の判断をサポートするについては、我が国企業の現状を直視した場合、実務体制の再構築が必要な企業が多いのではないかと私は思います。現在の我が国の状況では、リスクマネジメント・BCMの実務担当者に、企業全体を見るという視点が十分ではないと私は思います。私はこれを「経営的視点の欠如」と言いたいのです。
 吉野様が言われるように、リスク管理部門が,企業全体のリスクとその対応状況を一覧化・総括して経営に報告することが可能になるためには、そこに従事している方々に企業全体を見るという視点「経営的視点」が不可欠です。ここにも問題があります。
 今回は悲観論ばかりになりましたが、現実に吉野様のような方も存在されているわけですから、経営者、リスクマネジメント、BCPの担当者の双方の努力によって、望ましい方向に少しでも近づけたらと言うのが、私の結論です。

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BCMSにおける企業トップのリーダーシップのあり方

2014年12月7日日曜日 | ラベル: |

 最初にアップした原稿を若干訂正致しました。再度アップ致します。申し訳ありませんでした。

 12月3日にある学会の、ISO 22301(JIS22301)*の内容を検討するWGで、私ともう一人の方が担当で、ISO22301の「5.リーダーシップ及びコミットメント」に関する部分の議論をしました。
 *地震や火災、金融危機、新型インフルエンザの感染爆発<パンデミック>など、危機に際しさまざまな企業や組織が、対策を立案し効率的かつ効果的に対応するための事業継続マネジメントシステム<BCMS>の国際規格
 ISO22301の「5.1 リーダーシップ及びコミットメント」では、先ず
「トップマネジメントにある者,及びその他の関連する管理層の役割を担う者は,BCMSに関してリーダーシップを実証しなければならない。」とされています。
 このISO22301で想定しているマネジメントスタイルは、欧米、特に米英豪型のものであり、その観点からは当然の内容ですが、わが国の企業に持ち込む場合、これを実行することは容易なことでは無いと思われます。

私どもは、
『日本の経営者は、ボトムアップ型の組織の頂点にいて部下の補佐によって職務を遂行するケースが多いため、日本の経営者が本規格で想定しているマネジメントスタイルを実行するためには、日本の組織を前提とした補完的なサポート策を加味したやり方を考えるべきではないか。
更には、ISO22301の認証を受ける場合、既存の経営環境・経営者の状況や組織運営とISO22301の要求するレベルとの狭間で深刻な問題が発生するのではないか。』
という問題提起をしたのですが、WGの実務家のメンバーの多くの方々からは、このことに対する深刻な問題意識は殆ど感じられませんでした。


「5.2 経営者のコミットメント」では、
「トップマネジメントは,次に示す事項によって,BCMS に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証しなければならない。」とされています。
詳しくは、
  • BCMS の方針及び目的を確立し,それらが組織の戦略的な方向性と両立することを確実にする。
  • 組織の事業プロセスへのBCMS の要求事項の統合を確実にする。
  • BCMS に必要な資源が利用可能であることを確実にする。
  • 有効な事業継続マネジメント及びBCMS の要求事項への適合の重要性を伝達する。
  • BCMS がその意図した成果を達成することを確実にする。
  • BCMS の有効性に寄与するよう指示を与え,支援する。
  • 継続的改善を促進する。
  • その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップ及びコミットメントを実証するよう,管理層の役割を支援する。
トップマネジメントは,BCMS の確立,導入,運用,監視,レビュー,維持及び改善へのコミットメントの証拠を次の事項によって示さなければならない。
  • 事業継続方針を策定する。
  • BCMS の目的及び計画が策定されることを確実にする。
  • 事業継続マネジメントのための役割,責任及び力量を決定する。
  • BCMS の実施及び維持に責任を負うために適切な権限及び力量を備える1 名以上の者を,BCMS の責任者に任命する。
トップマネジメントは,関連する役割に対して,責任及び権限を割り当て,組織内に伝達することを次に示す事項によって確実にしなければならない。
  • リスク許容基準及びリスクの許容可能レベルを定める。
  • 演習及び試験の実施に積極的に関与する。
  • BCMS の内部監査の実施を確実にする。
  • BCMS のマネジメントレビューを実施する。
  • 継続的改善へのコミットメントを明確に示す。」
と記述されています。

この節では、
  • BCMS に関するリーダーシップ及びコミットメントを実証するためにやるべき内容を示し、トップマネジメントがリーダーシップを発揮するとともにBCMSに関し参画する具体的な中身及びその方法を明確にすることに狙いがあります。
  • BCMSの方針及び目的を明確にし、それを組織内の拘束的条件とすること及びそれが組織の戦略的な、進んできた方向に合致するものであることを明確に示し、それに則って業務が行われるようにすることはトップマネジメントの責務であるとしています。
  • BCMSが要求する内容が確実に事業実施の1部として行われるようにすることはトップマネジメントの責務であると明定しています。
  • 人材、資金等の組織の資源がBCMSにおいて必要とする量だけ確保できるようにすることはトップマネジメントの責務であるとしています。
  • 組織内において、十分役に立つ事業継続マネジメント及びBCMSであるためには、それらの求める条件に適合することが必要であることを関係者に伝達し認識させることはトップマネジメントの役割の一つであるとして指摘しています。
  • BCMSによって果たそうとした目的が間違いなく達成されるようにすることはトップマネジメントの責務であるとしています。
  • BCMSの活動が効果的なものとなるように指示、支援することはトップマネジメントの責務であることを明確にしてます。
  • BCMSの改善が継続的に行われるようにする役割をトップマネジメントが担っていることを明確にしています。
  • 管理層がその各々の所掌に応じてBCMをしっかりと行うように支援することがマネジメントの責務であることを明らかにしています。
  • トップマネジメントは,BCMS の確立,導入,運用,監視,レビュー,維持及び改善を行う必要があり、その具体的なやり方としては、以下のことを行うことによって、自らの責任において事業継続マネジメントを行っていることを証拠立てる必要があるとしています。
事業継続方針を策定するにあたっては、
  • BCMS の目的及び計画がその責任のある者によって作成されること確実にする
  • 事業継続マネジメント実施における組織内の者の役割,責任を決めるとともにその力量を評価し明確化しておく。
  • それを実行するにふさわしい能力を持ったBCMSの責任者を少なくとも一名任命する。
さらに、トップマネジメントは BCMS関連する業務に従事する者および部局に,責任及び権限を割り当て,その旨を組織内に伝達するが、それは、具体的には、以下のような内容のことを行うことによって、それが実効性のあるものと必要があるとしています。
  • リスク許容基準及びリスクの許容可能レベルの決定
  • 演習及び試験の実施に積極的関与
  • BCMS の内部監査の確実な実施
  • BCMS のマネジメントレビューの実施」

 ここで示されていることをトップマネジメントが実施するという考え方は欧米流の経営におけるアプローチの方法で、欧米プロの経営者としての方法論です。日本の経営者はこのようなシステムアプローチをするように教育を受けていません。むしろ、このようなアプローチをするタイプの者は、それぞれの部門の中から選抜して役員になる日本流のシステムの下においては、途中で排除されることが少なくないようにさえ思えます。
 創業者型の経営者、欧米の子会社のトップを経験し、欧米型の経営に同感している経営者を除いて、現状日本の経営者の多くは、ここで要求されていることは実行出来ないと思われますので、当面は次善の策として、部下がサポートをして実行可能となるような対応策を講ずべきだと私は思います。
 『ここに示されているような内容のことをトップマネジメントが実際に行えるようになるためには、基本的素養や考え方の教育をしっかりとされている必要があります。少なくとも、BCMSにおいて行われようとしている内容が、どうして必要なのか、概略どのようにして行うべきものなのか、どのような効果を持ち、どのような弊害やリスクを伴っているかなどを推測できる必要があります。そのような能力は付け焼刃で身に付けようとしても付くものではありません。また、そもそもマネジメントとは何かについてのしっかりとした考え方や哲学が必要で、日本的経営スタイルでは容易ではない要求ではないか。』とWGのメンバーのメンバーに対して問題提起を致しました。
 1950年代、QC導入に際し、推進の中心であった「日本科学技術連盟」のトップは初代経済団体連合会会長石川一郎氏で、また導入の中心人物の一人は石川一郎氏のご令息、石川馨東京大学教授でした。石川教授らは日本の状況を活かしたQCの実行を明確に意識して導入を図られました。
 日本的な経営スタイルの下で、ISO22301(JISQ22301)事業継続マネジメントシステムの「経営者のコミットメント」の要求事項に応えるためには、QC導入時のように、日本経済団体連合会等の経営者団体の関与や日本的な企業組織を前提とした補完策の検討が必要であるという,私どもの問題提起に対して多くのWGメンバーの方々はあまり問題意識の共有をされませんでした。
5.3、5.4については内容のみお示し致します。
5.3 方針
 内容
トップマネジメントは,次の事項を満たす事業継続方針を確立しなければならない。
- 組織の目的に対して適切である。
- 事業継続目的の設定のための枠組みを示す。
- 適用される要求事項を満たすことへのコミットメントを含む。
- BCMS の継続的改善へのコミットメントを含む。
 
BCMS 方針は,次に示す事項を満たさなければならない。
- 文書化した情報として利用可能である。
- 組織内に伝達される。
- 必要に応じて,利害関係者が入手可能である。
- 定期的に及び大きな変更があった場合に,継続的に適切であるかをレビューする。
組織は,事業継続方針に関して文書化した情報を保持しなければならない。
  
5.4 組織の役割,責任及び権限 
 内容
 トップマネジメントは,関連する役割に対して,責任及び権限を割り当て,組織内に伝達することを確実にしなければならない。
トップマネジメントは,次の事項に対して,責任及び権限を割り当てなければならない。
a) BCMS が,この規格の要求事項に適合することを確実にする。
b) BCMS のパフォーマンスをトップマネジメントに報告する。
 
【 所見 】
 日本の企業が、現在の日本的な経営スタイルの下でISO22301事業継続マネジメントシステムの「5 リーダーシップ」の要求事項に応えるためには、非常んい大きな問題があると私は思うのですが、実務に従事する多くの方々はそのような問題意識を持っておられないように見受けられます。
 これは、日本の企業がISO22301事業継続マネジメントシステムの「5.リーダーシップ」の項目の内容を真摯に受け止めていないからではないかと私は考えます。ISO22301をJIS規格にした政府の意図は、日本の企業の経営形態を欧米型に近づけたいと思ったからだと考えますが、多くの日本企業はそう思っていないのではないかと思われます。日本の企業経営形態を、直ちに欧米型するべきかについては、意見は分かれると思います。
 問題は「ISO22301の実践は、日本の経営形態に対し、非常に大きな問題を提起している。ではどうすれば良いのか」という問題について、もっともっと議論すべきだということです。
 この点に関し、翌4日別の研究会で東京ガスの吉野太郎様から 「企業におけるERMの役割とその実施方法に関する考察」というお話をお聞きし、企業のBCMSや危機管理の実状についての具体的なお話をお聞き出来て大変参考になりました。次回にご報告致します。
 


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グローバル目線の欠如がもたらす日本経済の偏り

2014年11月23日日曜日 | ラベル: |

 俳優の高倉健さんがお亡くなりになりました。私は昭和43年(1968年)10月から約3年間銀座の松屋デパートの前にあった旧住友銀行銀座支店の貸付係長でした。嘗て高倉健さんが所属しておられた東映㈱は銀座支店の大事なお得意様でした。そのころは高倉健さん主演、藤純子さんも出演されていた「日本侠客伝」「昭和残侠伝」シリーズの全盛期で、高倉健さんは旧住友銀行銀座支店の業績にも大いに寄与して頂きました。11月19日の夕方私は白いバラを持って、銀座の東映本社(丸の内TOEI)に設えられた献花台に赴き、昔を偲んで拝んで来ました。

〇丸の内TOEIの献花台(毎日新聞ニュースより)

 私は鉄道趣味なので、高倉健さん主演の映画では「鉄道員(ポッポヤ)」が一番好きです。

〇パンフレットより。

 高倉健さんに献花した後、駿河台に行き明治大学グローバル・ビジネス研究科の特別招聘教授中島厚志経済産業研究所理事長による講義(一般公開、)「グローバル目線の欠如がもたらす日本経済の偏り」をお聞きしてきました。
 2月20日のブログでもご紹介致しましたが、経済産業省の経済産業研究所はBBLセミナーを開催し、そのデータはHPにアップされています。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/

 中島厚志経済産業研究所理事長は旧日本興業銀行のご出身で、調査部長をされた方です。私は昭和35年に旧住友銀行の東京調査部の企業調査部門に転勤し、重電・家電・弱電(通信機)部門を担当しました。当時基幹産業の分野に関しては、日本興業銀行の「調査月報」の記事はは必読の資料で、日本興業銀行の調査部は大変権威ある存在でした。

「グローバル目線の欠如がもたらす日本経済の偏り」の中島厚志経済産業研究所理事長のご講義は、
①2000年から2010年の我が国の実質経済成長率0.7%は世界182ヶ国中173位。
②歴史上ない人口減少の可能性。
③財政赤字は過去最悪。
④我が国は輸出入と対内直接投資残高のGDP比率は世界最小クラスで、世界経済との関係
が世界で最も薄い国の一つ。
⑤企業が高度人材を活用しない。
⑥我が国の企業縮み志向が強く、貯蓄超過幅が大きく、米独企業ほど投資をしていない。
⑦我が国経済はアップダウンが激しく、安定した経済成長ができていない、
結論として、「グローバル経済の中で主要先進国の経済動向と経済マインドの理解(グローバル目線)が不可欠」だということでした。

あと、ご自身のご体験に基ずくフランスのお話がありました。
①哲学教育で自らの論理的思考で判断出来る人間を育てる。
 物事を鵜呑みにするのではなく、その是非を自ら判断出来る人間を行育成する。
②少子化対策。(今回は触れません)

【 所感 】
 「グローバル経済の中で主要先進国の経済動向と経済マインドの理解(グローバル目線)が不可欠」に関して、
 私は旧住友銀行で幾つかの支店長を経て、最後に研修の責任者になりました。当時主な海外支店のあった欧米の海外現地職員の研修のため、欧米の銀行のjob descriptipn を読むと、企業理念・組織の在り方の違いがあまりにも大きく、言語の壁と共に、研修の難しさを痛感しました。
 11月4日(火)京都の住友資料館にお伺いし、末岡副館長様にお会いしました。その際「現在三井住友銀行には非常に多くの国籍の社員がいます。彼らは住友グループの(三井グループも同様です)歴史や経営思想に興味を示し、その知識と理解が彼らの三井住友銀行に対する一体感の育成にに有益だと実感致します。」というお話をお聞きし大変感銘しました。現在の三井住友銀行の海外社員研修の主体ははアジア地域かと思います。日本人はアジア地域に対して上から目線の癖があるように感じます。そうした偏見を捨てて、フェアな態度で我が国の歴史や実情を理解して貰うことも大事なのだと思いました。 
 〇住友資料館  http://www.shiryokan.jp/

 フランスにおいて、「哲学教育で自らの論理的思考で判断出来る人間を育てる。物事を鵜呑みにするのではなく、その是非を自ら判断出来る人間を行育成する。」に関して、
 私は京都大学で民法のゼミに所属し、指導教授の林良平先生から「論理的思考の重要性」と「個人の価値観の重要性」を徹底的に教育されました。当時の多くの企業の方針は「企業の方針に忠実な良き社員を養成する」というもので、個人の価値観・考えとか、個人固有の能力はあまり重視されませんでした。このことは、今もあまり変わっていないのではないかと思います。私は、旧住友銀行勤務中、最後まで自分の価値観と会社の方針との狭間で悩み続けていました。私は勤務期間中、忠実な旧住友銀行員であるべく努力しましたが限界がありました。

 我が国の伝統的な大企業では、多分今も世界の状況を見据えた複眼的な思考(グローバル目線)を持った社員の存在・その社員の考えを活かすこと、さらには個人の能力を活かす「高度人材の活用」については、まだまだ多くの課題があるのではないかと愚考致します。それでは我が国の企業の将来は危ういと思います。
 我が国企業の美点も勿論多くあります。中島厚志経済産業研究所理事長のお話をお聞きして、我が国企業の美点は活かしつつ、然しグローバル目線で足らざるところを補っていかなければ、我が国企業の将来、延いては我が国の将来は無いと痛感致しました。

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栗田美術館と劉薇さんの演奏会

2014年11月9日日曜日 | ラベル: |

 顧問をしている会社で、お隣の方から10月25日(土)に、「足利市の栗田美術館で中国の方のバイオリンの演奏会がありますがおいでになりませんか。」と誘われました。
 栗田美術館は、足利市の郊外にあり、伊万里・鍋島を館蔵する世界最大級の陶磁美術館です。私は小・中・高と佐賀で育ちましたので伊万里・鍋島は身近なものでした。栗田美術館の館長様直々のご説明は大変勉強になりました。



〇栗田美術館 本館 (栗田美術館 パンフレットより)


〇重要文化財 鍋島色絵付植木鉢文大皿(栗田美術館 パンフレットより)

 
〇ヨーロッパへ輸出された伊万里の品々(栗田美術館 パンフレットより)

・肥前国(佐賀)における磁器の製造について
 初代佐賀藩の藩主鍋島直茂が1592-1598の文禄・慶長の役に参加したことをきっかけに、朝鮮から多くの陶工が日本へ渡り、通説では「陶工李参平が有田の泉山で磁器の原料になる磁土を発見し、1616年(元和元年)有田で磁器の製造を始めた。」とされていますが異説もあるようです。
 1670年代になると、「濁手」という殆ど青みのない乳白色の素地が作られるようになり、この素地に色絵で文様を書く「柿右衛門様式」が確立し、17世紀末には西欧の王侯貴族達はオランダの商館を通して、大いに日本の磁器を購入しました。
 私はこれらの製品は主に有田地区で生産されたと思うのですが、佐賀県の西北部にある輸出港の名をとって「伊万里」と言われています。
 一方、鍋島藩は1640年ころから、将軍家・諸大名などへの贈答用の高級磁器を製造する藩窯の活動を開始します。この藩窯の製品を「鍋島」と言います。藩窯は技術漏洩防止のため有田や伊万里から離れた山間の大川内にありました。
 大川内藩窯は1871年(明治4年)の廃藩置県によりその歴史を閉じましたが、「鍋島」の技法と伝統は有田・赤絵町の「今泉今右衛門家」によって復興・継承されています。
 私事で恐縮ですが、私の父は戦前内務省という役所の官吏で、私は子供の頃は、父の転勤に伴って各地の県庁所在地を転々としました。
 昭和15年に父は佐賀県知事になりました。当時の今右衛門窯は戦時中は贅沢品ということで技術保存のため細々と職人さんが仕事をされていたようですが、父から貰った今右衛門窯の品物は大変緻密な職人芸のもので、戦後今右衛門窯の関係者の方から「大事になさって下さい」と言われました。朝鮮総督府の局長を最後に、昭和17年に父が退官後は一家は佐賀に住みつきました。そういう関係で、今でも今右衛門窯、柿右衛門窯、唐津の中里様の品々が身近にあります。父は11代今右衛門様と面識があったようです。私は13代今右衛門様と2回お話をする機会がありました。
 今回、今まで断片的に知っていた伊万里・鍋島のことについて栗田館長様直々のご案内で実物を目のあたりにし、系統的に理解することが出来て誠に幸せでした。栗田美術館は、かねてから一度訪れてみたいと思っていましたが、期待していたより遥かに大きな感銘を受けました。足利の地にこのような素晴らしい美術館があることを佐賀の人々はもっともっと知っているべきだと痛感しました。



〇バイオリンの演奏会場
 

〇劉薇(Liu Wei)さん(後援会ニュースより)

 栗田美術館見学の後、美術館のホールで中国の西安音楽学院ご出身の劉薇さんのバイオリンの演奏会をお聞きしました。
 100人ほどの演奏会は大変緊密な環境になります。伴奏のギターとのコラボがこんなにも素晴らしいとは思ってもいませんでした。伴奏をされたギターの小川和隆様はスペインのナルシソ・イェペスに師事されたとの事ですが、私どもの年代にとってイェペスはルネ・クレマン監督の映画「禁じられた遊び」の音楽です。クレマンは「海の牙」「太陽がいっぱい」「パリは燃えているか」など優れた作品を作った映画監督です。
 私の青春時代、キャロル・リード監督の「第三の男」のアントン・カラスのチターの演奏と、ルネ・クレマン監督の「禁じられた遊び」のナルシソ・イェペスのギターの演奏は忘れられない映画音楽です。
 秋の一日、素敵な週末を過ごすことが出来ました。   

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警察庁のレポート「平成26年度上半期のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」

2014年10月26日日曜日 | ラベル: |

 9月22日(月)に、ある研究会で警察庁の専門家から、サイバー空間の脅威についてのお話をお聞きし、その方が「ロンドンオリンピックにおけるサイバー攻撃」に関する記事をお知らせ下さったことは、前回書きました。
 「次回は、私たちの身の回りのサイバー攻撃、例えば、インターネット不正送金事犯等についてのお話をご紹介致します。」と申し上げました。
 今回はそこでお話が出た、警察庁のレポート 「平成26年度上半期のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」のうち「インターネット不正送金事案」の部分について書きます。
  http://www.npa.go.jp/kanbou/cybersecurity/H26_kami_jousei.pdf

 警察庁はサイバーセキュリティ担当の審議官、同参事官を新設して司令塔とし、サイバー3課(サイバー課、僃企課、情解課)、組織犯罪対策部、情報管理課、警察大学校サイバーセキュリティ研究・研修センターと言う体制を構築しています。「平成26年度上半期のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」はサイバー参事官室がまとめたものです。
 以下はその内容のうち「インターネット不正送金事犯」の部分のご紹介です。
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  この報告書では、サイバー空間の脅威に関して、手口の悪質・巧妙化、新たな技術・サービスの実社会への影響、インターネット利用に係るリスクの顕在化が総括されています。
 特に、インターネットバンキングの不正送金事案は、平成26年度上半期だけで被害総額は約14億5,200万円と既に前年1年の被害総額を上回り、その被害は個人口座から法人口座へ、都市銀行から地方銀行へと拡大している由です。
 またパソコンに感染したコンピューターウイルスがインターネットバンキングへのログインを検知し、自動的に不正送金をする、MITB攻撃と呼ばれる被害は従来海外で確認されていましたが、国内でも確認されました。
 情報窃取を企図したメール攻撃では、対象を絞り込んだメール攻撃、Windowsのショートカットファイル(LNK)を利用した不正プログラム、就職活動を装ったメールの増加が指摘されています。他にも無償ソフトウェアの更新を悪用して不正プログラムに感染さ新手口などが確認されているとのことです。
 警察では、インターネットバンキングに係る不正送金事案に対する対策として、金融機関関係団体に対してはセキュリティ対策の強化を要請していますが、他方インターネットバンキング利用者に対しても、
①ウイルス対策ソフトの導入、最新パターンファイルへの更新。
②基本ソフト(OS)、ウエブプラウザ等各ソフトウエアの最新の状態への更新。
③インターネットバンキングにアクセスした際に不審な入力画面等が表示された場合ID,パスワード等を入力せずに金融機関等へ通報する。
④可変式パスワード生成機(ハードウエアトークン)等によるワンタイムパスワードの利用。
などの対策を講ずるよう要請しています。
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【 所見 】
 私たちの身の回りのサイバー攻撃、例えば、「インターネットバンキング」に係る犯罪等についての状況には、慄然とせざるを得ません。
 個人であれば、毎度ATMを使うとか、銀行の窓口で処理すれば良いと思いますが、企業などでは事務効率上インターネットバンキングを使うについて便利さの中に潜む危険を痛感します。
 「平成26年度上半期のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について」では、更に情報窃取を目的としたサイバー攻撃についても、①標的型メール攻撃の情勢と手口、②標的型メール攻撃の事例等が記述されています。
 更に新たな技術・サービスに起因する事犯として、3Dプリンター、ビットコインについても記述されていますので、是非ご一覧ください。

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「ロンドン五輪を狙っていたサイバー攻撃」

2014年10月12日日曜日 | ラベル: |

10月初めに所用で京都に行き、次いで家族で4日間沖縄へ行って来ましたので、ブログのアップが1週間遅れて申し訳ありませんでした。
 京都では私が学生時代に止宿していた、父の従兄弟の島文次郎(京都大学文学部英文科教授・附属属図書館長)のお墓が法然院旧墓地にありますのでお参りして来ました。法然院旧墓地には谷崎潤一郎や戦前の経済学者河上肇、「老いらくの恋」で有名な川田順のお墓などもあり、併せて拝んで来ました。
  

〇島文次郎・楳乃の墓

台風18号の影響は殆どなく、沖縄はまだ夏でした。
  

〇ムーン・ビーチ

 ロンドン五輪を狙っていたサイバー攻撃

 9月22日(月)に、警察政策学会の「テロ・安保部会」で警察庁の専門家から、「サイバー空間の脅威」についてのお話をお聞きしました。その方がロンドンオリンピックにおけるサイバー攻撃に関する記事をご紹介下さいました。
 「ロンドン五輪を狙っていたサイバー攻撃」
 (株)情報通信総合研究所  グローバル研究グループ 佐藤 仁
http://www.icr.co.jp/newsletter/global_perspective/2013/Gpre2013115.html
 以下はその内容の概略です。
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 「2012年夏のロンドンオリンピックでは、開会式がサイバー攻撃の標的にされていた。」とロンドンオリンピックのサイバーセキュリティ責任者であるOliver Hoare氏がBBCのインタビューで答えています。
 電力のインフラへのサイバー攻撃によってオリンピック開会式の照明が消されてしまったかもしれなかったということです。実際には照明が落とされることはありませんでしたが、世界中で何十億の人が見ているオリンピックの開会式で照明が消えてしまっては一大事です。万が一サイバー攻撃で停電になったとしても、30秒あれば手動で電気は復旧するとOliver Hoare氏は報告を受けていましたが、開会式では30秒の停電でも大パニックになっていた筈です。
 ロンドンオリンピックを標的にしたサイバー攻撃はこれだけではありませんでした。ロンドンオリンピックのサイトは400億のページビューにも耐えられるようになっていましたが、オリンピックのサイトには2週間の開催期間で2億2,100万のサイバー攻撃があったそうです。
 またロンドンオリンピックのCIO(Chief Information Officer)を務めたGary Pennell氏はオリンピック期間中に1億6,500万回のサイバーセキュリティに関わる問題が発生し、CIOのオペレーションセンターに報告されたサイバー攻撃は97件だったと言っています。例えば、オリンピック開催直前の2012年7月26日、東欧からのサイバー攻撃がありましたが、実際に被害はなかったそうです。 
 また、オリンピック開会式(2012年7月27日)での照明システムへの攻撃は40分間続いて、北米や欧州の90のIPアドレスから1,000万のアクセスがありましたが被害はなかったそうです。
2008年の北京オリンピックでは1日に1,400万回のなにかしらの攻撃があったことから、ロンドンオリンピックが開催される前からロンドンではサイバー攻撃が行われると確信しており、それに備えた対策を事前に講じてきたのだそうです。
 サイバー攻撃は政府だけや1企業だけでは対応策することに限界があるので、多くの企業や政府との協力、連携が必要になります。
 サイバー攻撃はこれからも進化していきます。イギリスの前の安全保障・対テロ担当大臣で、現在はイギリス政府でサイバー攻撃対策の特別代表を務めるネヴィル・ジョーンズ上院議員は、2020年に東京で開催される東京オリンピックについて「オリンピックを成功させるためには、日本がサイバー攻撃への対策を強化する必要がある。私たちには豊富な経験がある。」と述べ、2012年のロンドンオリンピックの経験を日本側と共有するなどして協力していく考えを示しておられます。
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【 所 見 】
 今から50年前、東京オリンピック直前の昭和39年(1964年)10月1日(木曜日)に東海道新幹線が開業しました。
 前日まで雨だったお天気は奇跡的に晴れ上がり、昭和39年10月10日(土曜日)の午後、私は住友銀行の人形町支店の中庭から航空自衛隊の「ブルー・インパルス」が青空に描いた五輪を見上げました。
 当時はパソコンもインターネットもなく、ここに記述されているようなオリンピックを狙ったサイバー攻撃など全く考えられない長閑な時代でした。
 9月22日(月)の研究会では、警察庁の専門家に2020年の東京オリンピック開催時の
サイバー攻撃の防禦についての質問が出ました。彼は「過去の事例と今後予想される事態を考慮して万全の対策を講じます。中身については申し上げられません。」と返事をされていました。
 次回は、私たちの身の回りのサイバー攻撃、例えば、「インターネット不正送金事犯」等についてのお話をご紹介致します。
 2020年東京でオリンピックを開催の頃にはどのようなサイバー攻撃が主流になっているのか想像もつきませんが、英国との情報交換や連携はサイバーセキュリティにおいて重要なことだと痛感しました。

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