今日は家族でお茶ノ水駅前の『ビストロ備前』に行き、記念の食事をしました。
『ビストロ備前』は銀行勤務時代のお得意様が経営されているお店です。人間国宝藤原雄さんご一門の備前焼の器でフランス料理をというコンセプトのお店で、創業当初から28年間お邪魔しています。開店以来のシェフの安達実さんも名誉総料理長としてご健在です。
http://www.bistrobizen.com/
閑話休題、平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災後の東京電力の状況について、キャッシュフロー・リスクマネジメントの視点から考えてみたいと思います。
東京電力の経費削減や財務内容を調査する「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は10月3日報告書を野田首相に提出しました。10月4日の日本経済新聞3面には「東電、資金確保へ正念場」と言う見出しが踊っています。同委員会の第3回議事要旨(平成23 年7月28 日)には、調査の方向性に関して「東京電力のグループ全体を調査対象とし、聖域を設けることなく、またいかなる予断も持たずにキャッシュフロー重視の調査を実施すべき」だと書かれています。その結果キャッシュフロー分析に重きを置いた報告書になったのだと思われます。
従来から、①各種事故・災害・パンデミック・経済環境の激変等は最終的に企業にキャッシュフローの悪化をもたらす。②各種事故・災害発生後・パンデミック・経済環境激変時の事業継続については、色々な側面があるが、最後の決め手は「キャッシュフロー」・「お金が回るかである。」と主張している私としては、将に我が意を得たりの思いです。
何回かに分けて東京電力の現状と将来について、公開の財務データと同委員会報告書の内容に基づき考えて見たいと思います。
○業 績
公開の財務データで業績を振り返って見ましょう。
✩損益計算書 (単位百万円)
平成19年7月16日の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の災害特別損失を計上した平成19年度・平成20年度は何れも当期純損失となり、燃料費の高騰により平成20年度は経常純損失を計上しています。
平成21年度は原油価格の下落による燃料費の減少を主因に営業利益・経常利益ともに前期より著しく改善した上、柏崎刈羽原子力発電所の災害特別損失が無くなったので、純損益が黒字に転換しました。
平成22年度は、営業利益・経常利益ともに平成21年度よりさらに改善していたのですが、3月11日の東日本大震災による資産の復旧費用・損失等の特別損失を計上したため、大幅な純損失を計上しました。
✩平成23年度第1四半期損益計算書 (単位百万円)
平成23年度第1四半期の損益は、営業利益・経常利益段階ともに大幅に悪化しました。
事業会社に取って売上の増大は必須の重要事項ですが、政府は夏場の電力の安定供給のため電力使用制限令に基づき節電→売上の低下を大口需要家に義務づけ、電力の消費量(売上)が少なくなると世間が安心すると言う奇妙な状態になりました。
売上は前年同期比88,522百万円減少、前年同期の92.8%(7.2%減)です。経費は燃料費の増加を主因に26,347百万円増加したので、営業損失は52,047百万円となりました。更に災害特別損失・原子力損害賠償費の計上により、571,759百万円の純損失を計上しました。恐るべき業績の悪化です。
*1 災害特別損失
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失について、災害特別損失として、1,055億円(単独では1,053億円)計上。
*2 原子力損害賠償費
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害の賠償について、原子力損害賠償紛争審査会の定める「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」を踏まえた見積額を、原子力損害賠償費として、3,977億円計上。
○業績の見通し
9月9日の日本経済新聞の1面では、東京電力の今夏の電力需要抑制実績は平日のピーク時で前年比21.9%のマイナスと報じられています。普通の事業会社だったら大変な事態です。
第2四半期の業績はまだ判りませんが、引続く大幅な売上減による固定費負担の増大、火力発電シフトによる燃料費の増大、さらに老朽火力発電所の再稼働等々で事業の損益は悪化するばかりだと思います。秋になり、一時節電の緩和→売上増は当然の策ですが、今後も一歩誤まれば大停電のリスクが生じます。冬場になればまた綱渡りの再開だと思います。
仮に原子力損害の賠償費用が当面の損益に影響しなくても、事業の損益の悪化に加え、原子力損害の賠償に関する事務処理費用・福島第一原子力発電所の事故処理費用を考えれば、損益の見通しは暗澹たるものがあります。
○福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害の賠償
東京電力の平成23年度第1四半期報告書には、
次回は「東京電力に関する経営・財務調査委員会報告書」の記述を基に今後の業績の見通しについて考えてみたいと思います。
閑話休題、平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災後の東京電力の状況について、キャッシュフロー・リスクマネジメントの視点から考えてみたいと思います。
東京電力の経費削減や財務内容を調査する「東京電力に関する経営・財務調査委員会」は10月3日報告書を野田首相に提出しました。10月4日の日本経済新聞3面には「東電、資金確保へ正念場」と言う見出しが踊っています。同委員会の第3回議事要旨(平成23 年7月28 日)には、調査の方向性に関して「東京電力のグループ全体を調査対象とし、聖域を設けることなく、またいかなる予断も持たずにキャッシュフロー重視の調査を実施すべき」だと書かれています。その結果キャッシュフロー分析に重きを置いた報告書になったのだと思われます。
従来から、①各種事故・災害・パンデミック・経済環境の激変等は最終的に企業にキャッシュフローの悪化をもたらす。②各種事故・災害発生後・パンデミック・経済環境激変時の事業継続については、色々な側面があるが、最後の決め手は「キャッシュフロー」・「お金が回るかである。」と主張している私としては、将に我が意を得たりの思いです。
何回かに分けて東京電力の現状と将来について、公開の財務データと同委員会報告書の内容に基づき考えて見たいと思います。
○業 績
公開の財務データで業績を振り返って見ましょう。
✩損益計算書 (単位百万円)
平成 19 年度 実績 | 平成 20 年度 実績 | 平成 21 年度 実績 | 平成 22 年度 実績 | |
(19.4.1 - 20.3.31) | (20.4.1 - 21.3.31) | (21.4.1 - 22.3.31) | (22.4.1 - 23.3.31) | |
5,479,380 | 5,887,576 | 5,016,257 | 5,368,536 | |
営業利益 (同上率) | 310,852 (5.7 %) | 66,935 (1.1 %) | 284,443 (5.7 %) | 399,624 (7.4 %) |
経常利益又は経常損失 (同上率) | 33,132 (0.6 %) | △ 34,648 (△ 0.6 %) | 204,340 (4.1 %) | 317.,696 (5.9 %) |
特別損失 ( 内災害特別損失 ) | 269,288 (191,586) | 68,811 ( 56,302) | - - | 1,077,685 (1,020,496) |
当期純利益又は純損失 (同上率) | △ 150,108 (△ 2.7 %) | △ 84,518 (△ 1.4 %) | 133.755 ( 2.7 %) | △ 1,247,348 (△ 23.2 %) |
月 商 | 456,615 | 490,631 | 418,021 | 447,378 |
平成19年7月16日の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の災害特別損失を計上した平成19年度・平成20年度は何れも当期純損失となり、燃料費の高騰により平成20年度は経常純損失を計上しています。
平成21年度は原油価格の下落による燃料費の減少を主因に営業利益・経常利益ともに前期より著しく改善した上、柏崎刈羽原子力発電所の災害特別損失が無くなったので、純損益が黒字に転換しました。
平成22年度は、営業利益・経常利益ともに平成21年度よりさらに改善していたのですが、3月11日の東日本大震災による資産の復旧費用・損失等の特別損失を計上したため、大幅な純損失を計上しました。
✩平成23年度第1四半期損益計算書 (単位百万円)
平成 23 年度 | 平成 22 年度 | 前年同期比増 減 | |
(23.4.1 - 23.6.30) | (22.4.1 - 22.6.30) | ||
売上高 | 1,133,115 | 1,221,637 | △ 88,522 |
営業利益 (同上率) | △ 52,047 (△ 4.6 %) | 62,882 ( 5.1 %) | △ 114,869 (△ 9.7 %) |
経常利益又は経常損失 (同上率) | △ 62,763 (△ 5.5 %) | 49,446 ( 4.0 %) | △ 112,209 (△ 9.5 %) |
特別損失 ( 内災害特別損失 ) (原子力損害賠償費) | 503,257 (105,548) *1 ( 397,709 ) *2 | 57,189 - - | 446,068 ( 105,548 ) ( 397,709 ) |
当期純利益又は純損失 (同上率) | △ 571,759 (△ 50.5 %) | △ 5,445 (△ 0.4 %) | △ 566,314 (△ 50.1 %) |
月 商 | 377,705 | 407,212 | △ 29,507 |
平成23年度第1四半期の損益は、営業利益・経常利益段階ともに大幅に悪化しました。
事業会社に取って売上の増大は必須の重要事項ですが、政府は夏場の電力の安定供給のため電力使用制限令に基づき節電→売上の低下を大口需要家に義務づけ、電力の消費量(売上)が少なくなると世間が安心すると言う奇妙な状態になりました。
売上は前年同期比88,522百万円減少、前年同期の92.8%(7.2%減)です。経費は燃料費の増加を主因に26,347百万円増加したので、営業損失は52,047百万円となりました。更に災害特別損失・原子力損害賠償費の計上により、571,759百万円の純損失を計上しました。恐るべき業績の悪化です。
*1 災害特別損失
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失について、災害特別損失として、1,055億円(単独では1,053億円)計上。
*2 原子力損害賠償費
東北地方太平洋沖地震により被災した福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害の賠償について、原子力損害賠償紛争審査会の定める「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」を踏まえた見積額を、原子力損害賠償費として、3,977億円計上。
○業績の見通し
9月9日の日本経済新聞の1面では、東京電力の今夏の電力需要抑制実績は平日のピーク時で前年比21.9%のマイナスと報じられています。普通の事業会社だったら大変な事態です。
第2四半期の業績はまだ判りませんが、引続く大幅な売上減による固定費負担の増大、火力発電シフトによる燃料費の増大、さらに老朽火力発電所の再稼働等々で事業の損益は悪化するばかりだと思います。秋になり、一時節電の緩和→売上増は当然の策ですが、今後も一歩誤まれば大停電のリスクが生じます。冬場になればまた綱渡りの再開だと思います。
仮に原子力損害の賠償費用が当面の損益に影響しなくても、事業の損益の悪化に加え、原子力損害の賠償に関する事務処理費用・福島第一原子力発電所の事故処理費用を考えれば、損益の見通しは暗澹たるものがあります。
○福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害の賠償
東京電力の平成23年度第1四半期報告書には、
「原子力損害賠償支援機構法(以下「機構法」という)」が平成23年8月3日に成立し、機構法では、新設される原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という)が、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施等のため、当社に対し必要な資金の援助を行うこととされている。また、電気の安定供給の維持等を考慮し、当社は機構に対し収支の状況に照らし設定される特別な負担金を支払うこととされている。当社は徹底した経営合理化による費用削減や資金確保に取り組み、この法律に基づく支援を受けて賠償責任を果たしていく予定である。しかし、機構の具体的な運用等については今後の検討に委ねられている。」と記述されていて、福島第一原子力発電所の事故等に関する原子力損害の賠償が東京電力の業績・キャッシュフローに与える影響は未だ判然としません。
次回は「東京電力に関する経営・財務調査委員会報告書」の記述を基に今後の業績の見通しについて考えてみたいと思います。