HP 「京都の四季より」 山科 勧修寺 臥龍梅 (老木だが2月からの早咲き) |
○「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」の報告書
2月28日、財団法人「日本再建イニシャティブ」の「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」の報告書が公表されました。残念ながらまだ全文を読むことが出来ません。
HPには『「国民の視点からの検証」という報告書の性質上、広く皆さまにお読み頂きたく思っておりますので、なるべくお求めやすい価格での出版や、ウェブでの公開など、様々な方法を現在検討中です。追って、本ウェブサイトで詳しい情報をご案内致します。』と書いてあります。全文を読むことが出来たら感想を報告致します。
一点だけ、HPに『東京電力には勝俣恒久会長、清水正孝前社長ら経営陣トップや吉田昌郎前所長ら現場責任者へのインタビューを正式に申し入れたが、協力は得られなかった。そのため、元社長や元原子力担当副社長ら元経営幹部、非公式な社内関係者へのインタビューを通して可能な限りの情報を集めた。』と記述されています。自社の損害賠償責任に対する顧慮だと思いますが、東京電力のこうした対応は全く如何なものかと思います。
2月3日に提出し、2月13日に主務大臣の認定を受けた改定特別事業計画ついて、主に業績の見通し、キャッシュフローの見通しについて検討しました。
○改定特別事業計画に基づく業績見込みとキャッシュフロー
平成24年2月13日東京電力は、「当社は、平成24年2月3日、原子力損害賠償支援機構法第46条第1項の規定に基づき、原子力損害賠償支援機構と共同で、主務大臣(内閣府機構担当室及び経済産業省資源エネルギー庁)に対し、平成23年11月4日に認定を受けた特別事業計画の変更の認定について申請しておりましたが、本日、同計画について認定をいただきました。」と公表しました。その結果、損害賠償の履行に充てるための資金として、東京電力に対する約6,900億円の資金援助額の増額が決定しました。この限りでは被害者に取っては喜ばしいことです。
要賠償額の見通しが、約1兆7千億円に増加(+約6,900億円)した中身は
① 精神的損害に係る東京電力の賠償基準の見直し(震災から1年間は減額しない)
:約500億円
② 自主的避難等に係る賠償指針の策定(対象者約150万人)
:約2,100億円
③ 避難指示区域等の見直しを踏まえた算定期間見直し(平成23年内→平成25年3月まで)等
:約4,300億円
です。
前回も書きましたように、折角原子力損害賠償支援機構からの支援が決まっているのですから、12月末現在の未収原子力損害賠償支援機構交付金1兆216億円について東京電力から早期に支払われることを希望します。
私は、11月10日のブログで、東京電力の第2四半期決算記載のデータから逆算して下期期業績見込み・キャッシュフロー見込みの検討をしました。
今回の改定特別事業計画では、11月10日のブログの時点の単体の今期業績計画・キャッシュフロー計画は変更されていません。
今回も11月10日同様、今期計画から第3四半期までの実績を引いた逆算の数字で第4四半期の業績・キャッシュフロー見込みを検討して見ました。
今回の改定特別事業計画では、11月10日のブログの時点の単体の今期業績計画・キャッシュフロー計画は変更されていません。
今回も11月10日同様、今期計画から第3四半期までの実績を引いた逆算の数字で第4四半期の業績・キャッシュフロー見込みを検討して見ました。
○業績比較 (単体) ―計画の変更なしー
(単位億円)
(単位億円)
平成 22 年度実績 | 平成 23年度見込み | 前期比増減 | |
(22.4.1 - 23.3.31) | (23.4.1 - 24.3.31) | ||
売上高 | 51,463 | 50,81 8 | △ 645 |
営業利益 (同上率) | 3,567 ( 6.9 %) | △ 3,327 (△ 6.4 %) | △ 6,894 (△ 13.3 %) |
経常利益又 は経常損失 (同上率) | 2,711 ( 5.3 %) | △ 4,122 (△ 8.1 %) | △ 6,833 (△ 13.4 %) |
引当金増減 | 62 | 16 | △ 46 |
特別損益 | △ 10,742 | △ 1,625 | 9,117 |
当期純利益 又は純損失 (同上率) | △ 8,093 (△ 15.7 %) | △ 5,763 (△ 11.3 %) | 2,330 ( 4.4% ) |
月 商 | 4,297 | 4,234 | 4,171 |
上記の計画に基づき、第4四半期の業績見込みを逆算しました。
✩業績の見通し (単体) (単位億円)
平成 23 年度 上期実績 | 平成 23 年度 第3四半期実績 | 平成 23 年度 第4四半期見込 | 平成 2 3年度 見込み | |
(24.4.1 - 24.9.30) | (4310.1 -4 3.12.31) | (24.1.1 - 24.3.31) | (23.4.1 - 24.3.31) | |
売上高 | 25,027 (前年同期比 △ 2,080) | 12,981 (前年同期比 489) | 12,810 (前年同期比 946) | 50,818 (前年同期比 △ 645) |
営業利益又は損失 (同上率) | △ 606 ( 6.9 %) | △ 838 (△ 6.5 %) | △ 1,883 (△ 14.7 %) | △ 3,327 (△ 10.9 %) |
経常利益又 は経常損失 (同上率) | △ 1,058 (△ 4.2 %) | △ 1,148 (△ 8.8 %) | △ 1,917 (△ 15.0 %) | △ 4,122 (△ 8.1 %) |
特別損益 | △ 5,077 | 1,052 | 2,400 | △ 1,625 |
当期純利益 又は純損失 (同上率) | △ 6,273 (△ 25.1 %) | 42 ( 0.3 %) | 468 ( 3.7% ) | △ 5,763 (△ 11.3 %) |
月 商 | 4,171 | 4,327 | 4,298 | 4,234 |
売上高は、上期は前年同期比2,080億円の減収ですが、第3四半期は前年同期比若干(489億円)の増収、第4四半期は逆算すると946億円の増収の計画です。
節電の話題は少なく、現状関西電力・九州電力などに比し供給上の問題はあまり議論されません。
一方、火力発電の燃料費の高騰のためと言われていますが、営業損失・経常損失は金額・率ともに悪化の一途で、本体の業績悪化は深刻です。東京電力の経営合理化努力は。まだ到底損益の悪化に追いついていません。極めて深刻な事態です。
第3四半期・第4四半期(見込み)ともに特別損益の関係で純損益の金額はプラスになる計算ですが、原子力損害賠償支援機構交付金と原子力損害賠償費の増減関係が主因で本体の業績とは関係のない理由によるものです。
○ キヤッシュフロー見込 (単体) ―計画の変更なしー
(単位 億円)
科 目 | 平成 2 2年度実績 | 平成 2 3年度見込 | 前年同期比 増 減 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 5,771 | 21,344 | 15,573 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 9,234 | △ 4,398 | △ 13,632 |
投資活動によるキヤッシュフロー | △ 7,487 | △ 2,803 | 4,684 |
事業のキヤシュフロー | 1,747 | △ 7,201 | △ 8,948 |
財務活動によるキヤッシュフロー | 18,826 | △ 4,607 | △ 23,433 |
当期総合キヤッシュフロー | 20,572 | △ 11,808 | △ 23,380 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 21,344 | 9,536 | △ 11,808 |
月 商 比 | 5.0 ヶ月 | 2.3 ヶ月 | △ 2.7 ケ月 |
通期でも、極めて大幅なキャッシュフローの悪化の見込みです。
○ キヤッシュフロー見込 (アバウトな試算)
(単位 億円)
科 目
| 平成 23 年度連結 第3四半期実績 | 平成 23 年度 第4四半期見込 | 平成 2 3年度見込 ( 単体 ) |
期首現金・現同等物残高 | 21,344 | 18,518 | 21,344 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | △ 1,770 | △ 2,628 | △ 4,398 |
投資活動によるキヤッシュフロー | 4298 | △ 7,101 | △ 2,803 |
事業のキヤシュフロー | 2,528 | △ 9,729 | △ 7,201 |
財務活動によるキヤッシュフロー | △ 5,354 | 747 | △ 4,607 |
当期総合キヤッシュフロー | △ 2,826 | △ 8,982 | △ 11,808 |
期末現金・現同等物残高 | 18,518 | 9,536 | 9,536 |
東京電力単体の売上は先期で連結の96%なので、単体のキャッシュロー見込みから、私が2月20日に試算したアバウトな第3四半期連結キャッシュフローを引いて第4四半期のキャッシュフローについて極めてアバウトな試算をして見ました。
平成23年度の経常損益が △4,122億円程度で収まるかは未だわかりません。損益が更に悪化すれば営業活動によるキャッシュフローも悪化します。
第4四半期の投資活動によるキヤッシュフローは第3四半期の反動のためか、逆算すると△7,101億円と多額のマイナスになりますが、それで良いのか。
財務活動によるキャッシュフローは逆算すると747億円のプラスになりますが、第4四半期の社債償還金額は東京電力の第3四半期決算補足資料によれば2,780億円です。3,527億円銀行から借入の目途があるのか。
第4四半期の当期総合キヤッシュフローは、逆算すると8,982億円の大幅な悪化になりますが、業績見込み・各段階のキャッシュフロー見込み、何れにも上記のように疑問点が多々あります。
平成23年11月4日、東京電力は、「10月28日付で資金援助の申請を行うとともに、同日付で主務大臣(内閣総理大臣、経済産業大臣)に対して、原子力損害賠償支援機構と共同で特別事業計画の認定を申請しておりましたが、本日、同計画について認定をいただきました。」と公表しました。
その業績・キャッシュフローの見込みはそのままで、その後の実績から逆算していますから、数字の辻褄が合わなくなるのは当然だと思います。勿論内部では再検討をされている筈だとは思いますが、世間に対しては東京電力は業績・キャッシュフローの見通しを変えていません。実際はどうなるのか。多分投資を抑える、借り入れはあまり出来ないのかなと思います。
東京電力の将来は、直近の業績・キャシュフローの見通しですら公表の資料で検討する限りは極めて不透明です。何時も同じことを書きますが、将来は暗澹たるものがあります。
これだけの大問題を抱えている企業の開示が、これで良いのでしょうか。