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少し古いのですが昨年6月に中小企業庁が、中小企業の事業継続計画(BCP)=災害対応事例からみるポイント=「中小企業が緊急事態を生き抜くために*1」を刊行しました。
「中小企業が緊急事態を生き抜くために」の冒頭「1.はじめに」には、「事業継続計画の善し悪しは、災害などが発生した際に事業継続のために効果があったか否かの結果に尽きるのであって、いかに立派な文書であろうと、手法がどれほど精緻であろうと結果として事業の継続に役に立たなければ意味がない。むしろ実際に役立つ事業継続計画は、各社固有の状況を踏まえて経営者自らの経営判断がシンプルに示されたものであろう。その答えは、災害による事業の障害に直面し、その困難を乗り越えて現在に至っている企業が被災時にとった実際の対処のなかにこそ見出せるはずである。」と記述されています。
この小冊子は、新潟県中越地震、能登半島地震、新潟県中越沖地震で被災した中小企業経営者に「被災時の危機に対していかにして事業を継続することができたのか」という点について、東日本大震災が起こる以前から行っていたヒアリングの結果をまとめたものです。公表された事例は22社、事例の内容は具体的で非常に参考になります。
同書の「2.災害対応事例にみる事業継続計画のポイント」の「結びに」には、「体制や対策は決めたところで、どのような地震が来るかは全くわからないので、実際にはあってないようなものだ。」という経営者の言葉を紹介しています。
「結びに」の最後の部分で、『この経営者の言葉は、実体がよくわからないために中小企業者の過大な期待を集めることが多い「BCP」というものの核心を見事に突いている。一見、事業継続計画の必要性や重要性を否定するもののように見えるかもしれないがそうではない。災害が想定したとおりに発生するはずがないし、計画に定めた対処によって常に期待したとおりの効果が得られるというのも机上の空論である。被災した際の現実の対処は、実際のところ経営者と従業員の反射神経と応用力と決断によるところが大きい。危機的状況において反射神経や応用力を発揮し、的確な決断を下すためには、危機への対処の方策についてあらかじめ検討を重ね、日頃から継続的に対応を訓練しておくことが必要なのである。言い換えれば、事業継続計画は平時において検討し訓練すべきものであって、いざ事に当たっては文書上の計画を単になぞるのではなく、状況に応じて対処することが必要なのである。 事業継続計画はそれぞれの企業の経営者が自ら考えなければ意味がないし、従業員がその内容を理解していなければ役には立たないのである。企業が災害を克服するために最も重要なのは、事業の継続に対する経営者と従業員の強い思いではないかと思われる。』といっています。至言だと思います。
東京都の「中小企業BCP策定支援事業」を受託しておられるニュートン・コンサルティングの副島社長も「BCPが機能するかと言われても、総てのシナリオを網羅して予言することは出来ないからこの通りには機能しないと答えるしかない。ではなぜBCPをやるのか。それは一つの被災想定に沿って行動計画の一例を作って一緒に体験して見る。そのことによって別の形の災害が起こっても対応出来る能力を高める。目的はBCPを作ることではない。*2」と同じ意味のことを申しておられます。
二つとも、BCP(事業継続計画)を策定することだけに力点を置き、マニュアルに依存しがちなわが国企業の動向に対する警告だと思います。
BCPに関する参考書は沢山あります。参考書を読むことも大事ですが、参考書の通りに計画を作ったからといって、いざという時に上手く行く訳ではありません。中小企業の場合、人的資源・経営資源などから対応可能なリスクのレベルは限定されます。「中小企業は身の丈にあった事業継続対策を」と言われています。現状自社で対策を講じられるリスクのレベルをクールに自覚し、現状では対策を講じられていない「想定外」のリスクに対しては、もし起こったら自社はどうなるかを、倒産の可能性を含めて考えて置くべきだと思います。そして、毎年努力を続けて、「想定リスク」のレベルを少しづつ向上させて行くことが大切だと思います。
*1中小企業庁➡経営サポート➡経営安定支援➡広報冊子➡「中小企業が緊急事態を生き抜くために」の順番でダウンロード出来ます。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/download/BCPSaigaiJirei.pdf
*2 スタッフアドバイザー 2011 9月号
二つとも、BCP(事業継続計画)を策定することだけに力点を置き、マニュアルに依存しがちなわが国企業の動向に対する警告だと思います。
BCPに関する参考書は沢山あります。参考書を読むことも大事ですが、参考書の通りに計画を作ったからといって、いざという時に上手く行く訳ではありません。中小企業の場合、人的資源・経営資源などから対応可能なリスクのレベルは限定されます。「中小企業は身の丈にあった事業継続対策を」と言われています。現状自社で対策を講じられるリスクのレベルをクールに自覚し、現状では対策を講じられていない「想定外」のリスクに対しては、もし起こったら自社はどうなるかを、倒産の可能性を含めて考えて置くべきだと思います。そして、毎年努力を続けて、「想定リスク」のレベルを少しづつ向上させて行くことが大切だと思います。
*1中小企業庁➡経営サポート➡経営安定支援➡広報冊子➡「中小企業が緊急事態を生き抜くために」の順番でダウンロード出来ます。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/download/BCPSaigaiJirei.pdf
*2 スタッフアドバイザー 2011 9月号