「リスクとキャッシュフロー」について ㉘

2014年6月1日日曜日 | ラベル: |


 今年も庭のバラが咲きました。お隣に差し上げたら素敵な写真になって帰って来ました。

 〇2014年版中小企業白書について
 5月20日のブログでも触れましたが、経済産業省のBBLセミナーに参加し「2014年版中小企業白書」のご説明を聞いて来ました。
 「2014年版中小企業白書」の特色は「小規模事業者に特に焦点を当て、データや分析などで実証的に小規模事業者の実態や課題を明らかにしている。」ことです。
 セミナーでは、先ず「中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化」の問題点をお聞きしました。以下はその抜粋です。
(1)人口の減少・高齢化
〇日本は2011年から本格的な人口減少社会になる。2005年から2010年までの人口の増
減率を見ると、三大都市圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・滋賀県・愛知県)、福岡県、沖縄県(自然増加率のみの上昇)以外は人口減少。
2040年には、すべての都道府県で人口が減少。とりわけ秋田県・島根県・高知県では高
齢者人口まで減少し、加速度的に人口が減少する局面に突入する。
今後の中小企業政策の立案に際しては、このような不可逆的な人口動態、及び、厳しい
国内の経営環境を前提とした上で、いかに中小企業・小規模事業者が生き残っていけるか」、中長期的な観点から戦略的に考えていく必要あり。
(中略)
〇人口減少・高齢化が進む中、経営者も高齢化し、70歳以上の年齢階級が最も多い。
〇中小企業・小規模事業者の企業数も減少が続き、直近の3年間で35万者減少
(2)国際化・就業構造の変化
〇製造業の設備投資は、リーマン・ショックまでは国内・海外ともに増加。リーマン・ショック後、景気は急激に落ち込み、国内投資・海外投資ともに減少。その後2010年からの景気拡張局面では国内投資は伸び悩むも、海外投資は着実に増加。
〇この10年間で、製造業の給与所得者数は減少(265万人減)に対し、サービス業
 給与所得者数は増加(285万人増)。一方、平均給与は、製造業は微増(2万円増)に対しサービス業は大幅に減少(46万円減)。
(3)情報化
情報技術の発展は著しい。携帯電話の所帯保有率は既に9割超となっており、スマートフォンやタブレット端末も、この3年間で急速に普及。これに伴い、消費者の行動も、店舗販売からネット販売へと変化しつつあり、個人向けEC市場も拡大傾向。
 眞崎注 (EC) 電子商取引(Electronic commerce)インターネットや特定顧客用の専用線といったコンピュータネットワーク上での電子的な情報通信によって商品やサービスを分配したり売買したりすること。(ウイキペデイアより)
〇しかしながら、小規模事業者は、この機会を十分に活かせていない。小規模事業者の半数以上が自社のホームページを持っておらず、自社サイトでの製品販売・予約受付は1割程度。ネットショップへの出店・出品は1割を切っている
(4)地域資源の活用
〇地域活性化の切り札となり得る地域資源は、どの都道府県・市区町村も有しているとの認識。とりわけ、市区町村では、「農水産品」「観光資源」と答えた自治体が多い。
〇地域資源として都道府県が指定した件数割合は「観光資源」が約半数を占めてるが、事業計画として認定(活用)された件数割合はわずか7%。→今後、さらなる活用の余地あり。
〇事業計画は95%が単者での申請。→地域活性化のため、複数者での地域資源ん活用を促進すべき。
〇人口減少等で需要が縮小する地方経済にとって、観光、とりわけ外国人観光客の誘客による「外貨」獲得は、地域活性化の一つの方向性。
〇外国人観光客は、我が国の食文化や温泉、自然などに関心あり。有名な観光資源がない
地域であっても、食文化を中心に、エコツーリズム農林業・漁業体験などによって外国人観光客を引きつけることは十分に可能。
〇我が国への観光客は22013年に初めて1,000万人を突破。しかしながらフランス、アメリカ、中国、韓国等に比べると、外国人観光客は少なく、まだまだ可能性はある。地域を挙げて、外国人観光客の受け入れ態勢を整えることが必要。
(所感)
 丁度、このブログで4月20日・5月10日と「小規模企業のBCP」について書いていた時だったので、「2014年版中小企業白書」が小規模事業者に焦点を当てて、実証的に小規模事業者の実態や課題を明らかにしておられることに感銘一入です。
 私が都市銀行に勤務していた時には、比較的規模の大きい中小企業との取引が主で、恥ずかしいことですが小規模事業者の実情は分かっていませんでした。5月10日のブログにも書きましたように、当時の国民金融公庫にお伺いして勉強をするような始末でした。
 リスクマネジメントやBCPの仕事をする中で、「大企業のBCP」「中小企業のBCP」「小規模企業のBCP」は、本質は同じでも、実行方法は色々で、あまり中身を硬直的に考えるべきではないと考えるようになりました。
 今回お聞きした「中小企業・小規模事業者が直面する経済・構造の変化」の冒頭が「人口の減少」でした。中小企業・小規模事業者だけでなく、企業経営をはじめあらゆる面で今後大きな問題を生ずるわけですが、地方経済に与える影響、小規模企業の経営者の高齢化の問題等々深刻な問題です。また、急速に広がっている電子商取引(EC)マーケットへの立ち遅れも将来的には大問題だと思います。
 私は「中小企業のBCP」の普及活動を行っていた時に「小規模企業」のBCPでは、「もし地震が起こったら、事業をやめるのか」ということも考えておくべきだと申し上げ同感を得ていました。企業数で86.5%、従業員数で25.8%を占めている小規模企業の将来については、廃業の可能性も含め、非常に多くの考えるべきことがあると痛感しました。

(参考)
「2014年版中小企業白書について」
スピーカー: 早田 豪 (経済産業省中小企業庁事業環境部調査室長)氏
プレゼンテーション資料です。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14051401_soda.pdf
コメント資料です。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14051401_uesugi.pdf
BBL のHPです。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/#past