「リスクとキャッシュフロー」について ㉗

2014年9月21日日曜日 | ラベル: |

 今回から、事務上の都合で、隔週日曜日にアップすることに致します。

  11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ⑬
 
 今回は「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」初級コース、中級コースの「 事前対策の考え方 」をご説明致します。

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〇「財務診断モデル」基本コース 参考.4 財務診断とキャッシュフロー対策 (2)キャッシ
ュフロー対策 
 ③事前対策の考え方
 事前に対策を講じておけば、災害時の復旧費用総額は間違いなく減少します。事業の継続に重大な影響を与える欠陥がある場合は、借入をしてでも事前に対策を講ずることは当然です。

〇「財務診断モデル」中級コース 参考.4 事前対策の考え方
 事前の対策をする場合は、資金調達の形が下表のように変わります。対策費用を自己資金で行うか、資金を借り入れるかで、別途の検討が必要になります。
事前の対策を自己資金で毎期着実に実行していくことが望ましいのですが、緊急に対策を講ずる必要がある場合には、災害防止対策資金の借入を検討することが必要になります。
  〇事前対策検討表                      (単位 千円)
    必要資金の金額 調達可能金額 備 考
(災害防止対策費用)( F )   手元現金・預金
損害保険金
会社資金売却
(会社調達分 計)
 
 
 
( )
 
(復旧資金)
資産の復旧費用( A )
事業中断によるキャッシュフローの悪化額( B )
復旧費用総額
( C )=( A )+( B )
 
経営者から支援  
災害防止対策資金借入金額( G )  
災害時新規借入金額( E )  
計( F )+( C )=( H )         計  

事前に対策を講じておけば、災害時の「設備の復旧費用+事業中断によるキヤッシュフローの悪化額」即ち「復旧費用総額」は間違いなく減少します。このことを、計数で表すことは難しいのですが、下記はその概念図です。



事前に何も防災対策を講じていない場合の復旧資金総額(C1)より、有効な事前防災対策を講じた場合の必要資金総額(H2)は少なくなる筈です。
理論的には事前の防災対策を全く行わない場合の復旧費用(A1+B1=C1)が、事前対策を講じた場合の総費用(A2+B2+F2=H2)より大きい場合 C1>H2であれば、事前防災対策を講じるべきです。(概念図参照)
企業としての費用負担総額は、上記のケース(2)、(3)の図のように累計で考えなければなりません。
過度の災害防止対策を実施した結果、災害防止対策を何も行わなかった場合より企業の累
資産の復旧費用計負担額が大きくなる ケース(3) (A1+B1=C1)<(A3+B3
+F3=H3) =C1<H3も考えられます。これは行き過ぎです。
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 「事前対策費用の効果概念図」で言いたいことは、何も事前対策をしない場合の災害発生時の「資産の復旧費用+事業中断によるキャッシュフローの悪化額」に比べ「事前の災害対策費用+資産の復旧費用+事業中断によるキャッシュフローの悪化額」の合計が小さくなるはずだと言うことです。
 従って「ケース3」は、過大なあるいは効果が少ない「事前の災害対策費用」をかけて、「資産の復旧費用+事業中断によるキャッシュフローの悪化額」に比べ「事前の災害対策費用+資産の復旧費用+事業中断によるキャッシュフローの悪化額」の合計が小さくならないようなことは意味がないと言っている訳です。
 中小企業の場合、効果的な「事前の災害対策」を確立し、その費用を算定することは仲
々困難だと思います。従って自社で考えられる限りの「事前の災害対策」を、自社で調達出来る資金の範囲で行っておくしかありません。
 但し、緊急に対策を講ずる必要がある場合には、災害防止対策資金の借入等を検討することが必要になります。
 何回も繰り返しますが、「とても無理だからと言って、何も対策を講じないよりも、ご自分で考えられることは対策を講じておく、そして、最低1ヶ月くらいの出費を賄えるだけの資金を持っていて、災害発生後1ヶ月くらいの間に事業の継続やその後のキャッシュフロー対策を講ずること」が現実的な中小企業のBCPだと私は思います。