ターンブルの実行ー取締役会への説明 ⑨ 第一章 7-1 ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2013年2月20日水曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

 長崎シリーズその3です。

○日本二十六聖人殉教碑


 豊臣秀吉の禁教令により京都や大阪でとらえられた外国人宣教師6人と子供を含む日本人20名は長崎に送られ、慶長元年(1597)2月5日に、長崎西坂の地で処刑されました。
 このことは、長崎に滞在していたルイス・フロイス神父によりヨーロッパに伝えられ、ローマ教皇は26名の殉教者を聖人に列し、「日本二十六聖人」と称せられました。昭和36年、26聖人の殉教碑と資料を展示した記念館、記念聖堂が建てられました。

○長崎名物石畳

○中華街入口


○ターンブルの実行ー取締役会への説明
            ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf

 以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
 7.役員レベルで検討すべきこと

 7-1.役員会はいつ、リスクメネジメントと内部統制について検討出来るか
 リスクマネジメント及び内部統制に重点をおいた役員会のスケジュールは、下記のようになる。ここでは12月を年度末とし、最初から全てをやろうとするのではなく、段階的な実施計画を想定している。

●リスクマネジメントと内部統制のための役員会スケジュール

1999年10月
  まだ行われていないならば、役員会に提出された初期段階の書類の検討、特に
  • 完了するべき主要リスク
  • 資源の配分
  • タイムテーブル
1999年12月
  ターンブル計画の進捗状況の検討、特に
  • ターンブル・ガイダンスの付録にある質問事項すべてに取組がなされているか。
  • リスクマネジメント方針書の文言が適切であるか。またその普及宣伝のための手配がなされているか。
  • 内部監査機能が必要かどうか(もしまだ存在しないならば)。もし必要でない場合には役員会は管理職から十分かつ客観的な保証を得ているかどうか。
  • すべての開示項目に適切に取り組んでいるか。
2000年2月
  リスクと統制について行われている業務の検討。実行計画に照らした、可能性のある重要リスクの確認、および内部統制に関する情報開示についての初期検討。
2000年3月
  年度末報告書の最終文言、およびこれに関わる財務に係る内部統制の効果についての役員会における再評価のための補助書類の検討。
2000年5月
リスクマネジメントおよび内部統制を一層向上させる手順についての検討、および目標と主要リスクお見直し(必要であればアップデート)。
  最も重要なリスクと問題を抱える部署への、資源の再配分。
2000年10月
  リスクマネジメントおよび内部統制の進捗状況を、内部監査の要否に関する毎年1度の見直しを含めて、さらに再検討する。
2001年2月
  年に一度の評価の検討(ターンブルの、効果の再評価手順に関する章を参照)。
2001年3月
  2000年12月の年度末報告書における、全ての情報開示の最終文言、およびこれに関わる役員会における再評価のための補助書類の検討会議。

 ターンブルは、毎年の評価に加えて、役員会が内部統制に関する報告を定期的に受け、再検討すべきであると述べている。

 主要なリスク指標と、モニタリング定着の成果は、役員会もしくは指名された委員会に対し継続的に報告されるべきで、それで役員会会長は、リスクマネジメントおよび内部統制の問題について役員会のたびごとに議論を進めることが出来る。他の委員会、例えば上級管理職および監査委員会などからの報告も、リスクと統制について議論する機会を提供する。
 年間の通常の役員会議事に付け加えられるのは、〝リスクと統制に関する問題〞かもしれない。定例会議で役員が質問するのに役立つのは次のような事柄である。
  • (明紀された)プロジェクトの規模から考えて、もしそれが上手くいっていない場合、どんな主要リスク指標が早期警告を発するように設定されているか。
  • 買収におけるデュー。ディリジェンス(債務の査定)の一環として、完全なリスク分析が行われているか。
  • 戦略実行の一環として、リスク分析が行われてきたか。もしそうなら、自分たちはどのようにリスクをマネジメントしているか。
  • (特定の分野で)確認された重要なリスクに応じたコントロールが行われているか。
  • 具体的な内部統制に関する事項が盛り込まれた年度末報告書および決算報告に、何か開示されている問題があるか。
  • (競争相手についてマスコミで報導された事件が)自分たちに影響するのを防止するために、どんなリスクマネジメントおよび内部統制の手続きを踏んでいるか。
中小企業の役員は、彼らが日ごろよく顔を合わせ、会社経営について〝手渡し〞の方法を採っており、しかしリスクマネジメントおよび内部統制の問題にお割ける管理職の人材は少ないことを考えた場合、この問題についてもっと頻繁に議論したいと思うだろう

(所感)
 中小企業や、中堅以下の大企業などの場合、経営資源や人材の不足、またノウハウの不足から、リスクマネジメントや内部統制の実行に苦労されているケースが多いと思われます。そのことを経営者が自覚していなければ「何をか言わんや。」ですが、心ある経営者で苦労をされている場合、本章の記述は身に沁みることと思います。
 本章の例示には異論がある方もあるかと思いますが、具体例を挙げて記述されていますので、必すや何らかの参考になるものと確信されます。
 次回の後半の記述にもご期待下さい。

 
 何回も書きますが、わが国の関係者は何故「Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing」や、「A New Risk Management Standard」(日本語版が公表されています)
http://www.theirm.org/publications/documents/Japanese_Risk_Management_Standard_031125.pdf
などを、もっと実務の参考にしないのでしょうか。


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ターンブルの実行ー取締役会への説明 ⑧ 第一章 6 ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2013年2月10日日曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。
 長崎シリーズその2です。

○原子爆弾の爆心地です。



 
○平和公園にある北村西望氏作平和祈念像です。


○浦上天主堂に残されている、原子爆弾による被災像です。

  

○ターンブルの実行ー取締役会への説明
          ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf

 以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
6.モニタリングと内部監査

●内部監査機能は何を貢献できるのか?

 役員会および上級管理職は、リスクマネジメントと内部統制が適切に機能していると納得している必要がある。ラインの管理職は、上級管理職および役員会に対し、会社のリスクマネジメントと内部統制の枠組みに関し確信を与えることに最重要責任を負っている。役員会は客観的な見方、つまりライン管理職からは独立した見方をしても良い。内部監査機能は、適切なレベルの資源を持ち、以下のことを行えなければならない。
 a) 役員会と管理職に対し、リスクマネジメントと内部統制の枠組みの適切さと有効性を客観的に保証する。
 b) リスクの確認とマネジメントのプロセス改善について、管理職を手助けする。
 c) リスクマネジメントと内部統制の枠組みを強化・向上させる役員会の責任を助ける。

 内部監査は会社に対し、次のことによって重要かつ価値ある貢献を行うことが出来る。
  • リスクマネジメント、特に内部統制システムの設計、実行、運営を巡る問題について助言を与える。
  • 業務上などの損失を制御し及び/若しくは回避にかかるコストを節約するチャンスを見つけることにより、効率的かつ効果的なリスクと統制のマネジメントを強化する。
  • 例えば統制に関する自己評価プログラムの実施や促進などにより、リスクと統制のコんセプトを推進する。
内部監査機能を導入する価値はあるのか?
  答えは、会社のおかれた状況によるであろう。もし内部監査機能が無ければ、ターンブル・ガイダンスでは、コンバインド・コードにおいて要求している〝折に触れて(from time to time)〞の監査を、毎年の要件と解釈する。従って役員会は毎年、見込まれるコストに対する事業利益の入念な見直しをして、内部監査のために事業計画を検討する必要がある。
 
 内部監査機能の利点は次のようなものである。
  • 優れたリスク確認、リスクマネジメントおよび内部統制の手順について、会社の全部門が価値ある助言を得ることが出来る。
  • 会社の色々な部門の活動をモニターしてもらい、客観的な保証を得るこことが出来る。
  • 役員会が内部統制の有効性を再評価するための材料作りに、支援を得ることが出来る。
もし既に内部統制機能がある場合、再配置する必要はあるだろうか?
 上級管理職および役員会は、その機能による会社への付加価値を検討し、何らかの変更を要するかどうかの基準を定める必要がある。

 変更を決める指標としては、
  • 内部監査部門が〝警察官〞のように見られていると言う古い考ええ方がある。
  • 現代的なビジネス・パートナーシップというやり方でなく、経営陣に対して何をなすべきか命令するという時代遅れのやり方をしている。
  • 内部監査が経営陣の信任を得ていない。
  • ビジネスに対する意識が低く、経営および人間関係に関して貧弱なスキルしか持たない不適格者である。
内部監査が自分の〝リスクの世界〞を持って、経営陣や従業員に対してそのリスクが何
であるかを言ったりするようなことはさせないのが肝要である。内部監査は、リスクの確認と、経営陣によるリスクの評価が客観的なものであることを保証し、効果的なリスクマネジメント・プロセスと内部統制を奨励するということにおいて、業務担当の管理職および従業員と共に有効に仕事をすることが出来る。

 もし内部監査機能を持つのに十分な資源が無い場合はどうするか?
 ターンブルは、会社のリスクマネジメントの継続的な有効性を監視するプロセスを作る必要を強調している。これは内部監査機能がないところであっても、当てはまる。

 役員会においては、特に小企業の場合、内部監査機能を持たないという決定をするかもしれない。このような状況の場合、役員会は次のようなことを自問してみるべきである。
  • 定期的に役員会に提出している情報の質を上げることが出来るか。
  • ハイリスクな領域において特定の仕事をする外部監査人と、意見を一致させることが出来るか。
  • 主要部門もしくは業務単位を担当する者に、役員会に定期的に出席させ、担当事業の運営およびリスクマネジメントについて責任を持ち、質問に応え答えるよう求めることが出来るか
  • 役員会、もしくは経営委員会の定例議事を変更し、リスクおよび統制に継続的にもっと力を注げるようにすることが出来るか。
  • 主要な従業員による、会社の方針と行動規範が守られていることの確認をもっと活用することが出来るか。
  • ターンブルが〝1回限り〞のものではないことを確実にするために、もっと何かをすることが出来るか。例えば、統制の戦略が継続しているかどうか。事業目標に対するリスクが適切に処理されているかということについて、役員がもっと実務部隊の相談に乗るなど。
  • 役員が〝頂上を目指して〞モニタリングにおける役割をもっと果たすことが出来るか。
ターンブルは内部監査機能が無い場合、役員会は、他のモニタリングプロセスが十分かつ客観的な確約得与えているかどうか評価する必要があると述べている。

(所感)
  アメリカにおいては、1992年のCOSO報告書「Internal Control Framework」が内部統制の重要性を顕在化させました。2002年7月にSOX法(Sarbanes-Oxley Act)が制定されました。我が国では2006年6月に金融商品取引法ⅧJ-SOX法)がSOX法比4年遅れで成立しました。以降内部統制に支えられるリスクマンジメントが我が国企業でも重要な問題になりました。
 更に2004年9月の COSO2報告書「Enterprise Risk Management Framework」により、企業経営において、内部統制によって支えられる全社的リスクマネジメントが強調されています。然し、わが国の企業でこれらのことが有効に機能しているのか、私は疑問を持っています。 参考書も、どちらかと言えば各論的・技術的な記述が多く、企業経営者が理解するには不十分であるように思われます。
 内部監査とリスクマネジメント、内部統制に関しては、昨年5月10日の『藤井範彰著「内部監査の課題解決法」を読んで』の記事で、監査法人に所属され、企業の内部監査・内部統制・リスク管理のコンサルに従事された、藤井さんの実務経験に基づく我が国の内部監査の問題点をご紹介致しました。
 Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing は、内部監査について極めて具体的に在り方・問題点を指摘しています。これが公表された1999年はSOX法も、COSO2報告書もまだ無かった時期ですが、今でも大変参考になると思います。
 何回も書きますが、わが国の関係者は何故 Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing や、次にご紹介しようと思っている、 
「A New Risk Management Standard」(日本語版が公表されています)
http://www.theirm.org/publications/documents/Japanese_Risk_Management_Standard_031125.pdf
などを、もっと実務の参考にしないのか不思議だと思います。

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ターンブルの実行ー取締役会への説明 ⑦ 第一章 5-(2)

2013年2月1日金曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

 私はご縁があってオペラの団体・公益財団法人東京二期会の監事ですが、長崎のグラバー園にはオペラ「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」ゆかりの像があります。
○グラバー園の由縁、貿易商グラバー氏の旧邸です。

 
○長崎を舞台にしたオペラ「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」を作曲したジャコモ・プッチーニの像です。



○マダム・バタフライを演じて世界的に名をあげた三浦環の像です。
 


  
○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf

 以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
 5.プロセスを定着させる。

●財務に係る内部統制については、どうだろうか?
 財務に係る内部統制は極めて重要であって、役員および上級管理職が正しい意志決定をすることが出来るよう、十分に質の高い情報が彼等に提供されなければならない。考慮されるべき重要事項として、次のようなことが必要である。
  • きちんとした会計記録
  • 定期的な調整
  • あやふやな会計処理の一掃と,異常事項の見直し
  • 〝真実かつ公正な〞年度末会計と,信用出来る内部報告書
  • 不正リスクとの闘い
  • 資産を不正使用或いは損失から守ること
  • デリバティブや金融商品による損失を回避すること
  • 会社内外からの信用出来る経営情報
  • 確認し管理すべき責任」
財務に係る内部統制は、事業リスクの幅広い見方を支える、優れたリスクマネジメン
トの主要部分をなす。

 
優れたリスクマネジメントと内部統制の多くが既に実施されているということは良くある。既に機能しているものを取換えてはいけない。
 
 中小企業の役員が、この領域に関して問うことが出来るであろう質問は次の通りである。
  • 従業員が事業目標と、自分たちの関係するリスクについて十分に理解しているか
  • 潜在的な問題の報告のスピードを上げるにはどうしたら良いか
  • 主要な財務、業務およびコンプライアンスの統制、例えば調整(reconciliations)などが十分にアップデートされているか
  • 世間に対してまずいことになりそうな事業分野はないか。もしあれば、どうすれば改善出来るか。
(事例)
 製造業の会社で、会社の規模から経営陣はフルタイムの内部監査は必要でないと考えていた。顧客の数は少なく、競争相手が製造コストの有利な海外に製造設備を移すにつれて、この会社は市場シェアを失ってきていた。経営陣は、上級および中間管理職に対し、リスクの確認および認識プログラムを始めることを決定した。プログラムは身内の偏見を排除し、訓練をやり通す力を与えるため外部のアドバイザーによって行われた。
 プログラムを開始した時の経営陣の懸念は、どうやったらプロジェクトが組織に確実に価値を付加出来るものになるかということだった。プログラムが単に届け出とか規則に従うという形式だけのものに見られてはならないと願っていた。

 プログラムは3段階に分けられた。
第一段階 - 平役員も含めた役員会との最初のミーティング。これは会社の戦略を明確にし、戦略におけるリスクを確認するため。
第二段階 - 中間管理職とマンツーマンで、業務、財務そしてITに関するリスクと、事  
第三段階 - 在庫の注文と使用、在庫記録と経営情報の準備を含む主要手順のテスト

 結果、役員会でのディスカッションは、会社の戦略に関する大事な議論を生み、これが戦略の明確化と、従業員への戦略プレゼンテーションへと繋がっていった。このディスカッションによって、多くのリスクへのアプローチが正式なものとなった。そのリスクは、単体ではどれも会社に取って新しいものではなかったが、それらをマネジメントしようとする方法はこれまで開発されていなかった。特別な二つの例は、海外における調達と製造の機会を調査する役割を作ったことと、重要顧客関係に関して、マーケティング部門によるその評価への関与を含めて、役員会に報告することとした、というものである。

 
(所感)
 私の最も力を入れている分野は、「リスクとキャッシュフロー」です。
 「財務に係る内部統制は、事業リスクの幅広い見方を支える、優れたリスクマネジメントの主要部分をなす。」という記述は、我が意を得たりです。我が国のリスクマネジメントの解説書で財務との関連に触れられているものは殆どありません。BCPにおいても、中小企業庁の指針以外は、財務についてはあまり重視されていないように思われます。何回も書きますが、わが国のリスクマネジメントの解説書とは一味違っています。

また、「優れたリスクマネジメントと内部統制の多くが既に実施されているということは良くある。既に機能しているものを取換えてはいけない。」も実務上痛感することで、至言です。

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ターンブルの実行―取締役会への説明 ⑥ 第一章 5 ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2013年1月20日日曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

○1月1日に京都大学宇冶分校は京阪宇治線「黄檗」で下車する、と書きました。大学と反対側に黄檗宗の大本山 黄檗山 萬福寺があります。萬福寺の伽藍建築・文化などはすべて中国の明朝様式です。塔頭 宝蔵院の国重要文化財「鉄眼の一切経」も有名です。
萬福寺



   
○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

 以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
5.プロセスを定着させる。

 ターンブル・ガイダンスは、内部統制の仕組みを業務の中にはめ込み、文化の一部を形成することを期待する。又このガイダンスは、リスク・マネジメントと内部統制を継続させることを期待する。プロセスが深化しなければ、これは困難或いは不可能である。それには会社全体で協議することがカギとなる。
 この領域で有効なステップは次のようなものである。
  • 担当常務から総ての経営陣および社員に向けた、リスク・マネジメントと内部統制の「キック・オフ」のためのメモ
  • リスク・マネジメント方針書と行動様式の宣伝
  • リスク・マネジメントと内部統制についての、会社の様々なレベルにおける「円卓会議」とワークショップ
  • 特定の事業リスクに関する研修のための予算の再配分
  • 主要な事業リスクと重要なリスクの周知
  • 重要なリスクを如何にマネジメントするかについての方針の明確な伝達
  • 変化を認識しそれに対応すること、そして早期警告メカニズムを機能させることへの、従業員の関与
  • 疑わしい違反その他の不適切な行動を報告するための伝達チャネル
 
 ターンブルは、顧客関係、内部および外部委託の両方の業務のサービス水準、健康、安全、環境保護、事業継続を含む有形・無形資産の安全、経費、会計・財務その他の報告などの事柄についての方針が伝達されるよう提案する。
 その狙いは、経営陣および従業員が企業目標の達成と主要なリスクの適切なマネジメントにもっと集中出来るよう、会社のすべての階層における文化を向上させることにある。 

 会社のあらゆる階層における行動を変革し、日々の業務の中により良い業務慣習を埋め込むことにより、経営トップに課せられる統制手順が大量でなくても済むようになる。

考慮する必要のある人的な問題は次のようなものである。
  • 報酬の与え方と就業慣行が、優れたリスク・マネジメントを奨励し、無謀又は悪いリスクマネジメントを思い止まらせる
  • 最初に正しいことをする〞という姿勢をどう植え付けるか
  • 事業目標を達成し、関連するリスクをマネジメントする責務が十分明確になっているか
  • 問題に〝蓋をする〞のではなく、進んで報告をするような環境を如何に作るか
  • 会社内の異なる部門における行動が、適切に調整されているか
  • 会社の人間と外部の委託業者が、会社の目標達成をサポートし、重要なリスクを効果的にマネジメントするのに十分な知識、技術とツールを持っているか
  • 会社全体に共通のリスク・マネジメント言語をどう導入するか
統制の目的と、〝経営者意識〞を理解している従業員は、成功にとって極めて重要であ
る。
 
  ターンブルは総ての従業員が内部統制に対し、目標達成責任の一部として何らかの責任を持つと述べている。彼等は集団として、内部統制のシステムを構築し、機能させ、監視するために必要な知識、スキルと情報と権限を持っている必要がある。それには、会社、その目標、業界および市場と、直面しているリスクを理解していることが求められる。
 ターンブルが強調する主要なポイントは、内部統制のプロセスが、企業が目標を追求するプロセスのなかに組み込まれるべきであると言うことである。そして別のリスク報告システムを開発することよりも、既存の経営情報システムのなかに警告メカニズムを作り込むことが最善である。面倒くさいリスク・マネジメント・データベースは、組織の一人一人が事業目標の達成と、それぞれの仕事に関係する重要なリスクをマネジメントに集中することに集中するというポイントから外れる可能性がある。
 取り組むことのできる大切な課題は、経営委員会(executive committee)が、重要なリスク・マネジメントの問題を議題に盛り込む範囲である。リスク管理委員会があるところでは、経営委員会の権限を侵してはならない。リスク管理委員会は優れたリスク・メネジメント意識を奨励し促進することは出来るが、経営陣の役割に取って代わることはすべきでない。
 重複や不必要な統制を取り除き、健全なリスク・マネジメントの実行を前提として、会社内の人々が顧客ニーズを満たすために働く環境を創出するためのリスク・マネジメントを定着させることによって、チャンスは存在する。
 上級管理職と役員は、十分にタイムリーで適切かつ信頼に足る企業目標および重要なリスクへの対応の報告が来ているかどうかを問う必要がある。例えば顧客満足と従業員の姿勢に関する質の高い情報が十分にあるか?またリスク変わるに伴い、それに効率的に対応するための経営情報があるか?
 移り変わる外部要素および内部問題は新しいもしくは大きく変化するリスクの発生に繋がる。従業員がリスク・マネジメントが本当に重要なリスクを低減していると信じているかどうかを知る必要がある。ほかの手を打たなければ、役員あるいは上級管理職は、切迫している災害に、手遅れになるまでおめでたくも気付かずにいる可能性がある。
 下表は、リスク確認のためのより優れた技術を示す調査結果である。
○Deloitee & Toucheによる事業リスク確認のための有効な技術に関する調査(1999年)
 
主要リスクに関する円卓会議での議論6.92
相互協力的なワークショップ6.62
 戦略的なリスクの再評価6.58
 特別な研究 / 調査6.42
 組織的な面談6.04
 経営報告5.60
 チェックリスト / 質問状4.43

○優れたリスク・マネジメントと内部統制の基礎条件
  • 行動の変革に重点をおく
  • 信頼出来る経営情報
  • 早期警告メカニズムと迅速な対応
  • 事業目標の意識
  • 統制戦略の継続的な適用
  • 企業全体での意見交換
  • 基本的な統制、例えば財務統制
  • リスクへの意識
  • シンプルに保つこと
リスク・マネジメントと内部統制の手順設計において、経営陣は革新のチャンスを制限せず、優れた慣行と企業利益の可能性を生み出すことを保証すべきである。しかし人々が行動を許容される自由の範囲を決めることは有効である。
 経営陣と従業員がリスク・マンネジメントと内部統制に十分関与することは、問題のある部門あるいは部署を良い方向にもっていくのに必要なものである。
  
(所感)
  「内部統制の仕組みを業務の中にはめ込み、文化の一部を形成する」こと、即ち「リスク・マネジメントを企業内に定着させる」のは大変難しいことです。
 本章ではリスク・マネジメントの定着には「会社全体で協議することがカギである」「会社の様々なレベルにおける円卓会議とワークショップ」「会社のあらゆる階層における行動を変革し、日々の業務の中により良い業務慣習を埋め込む」「聡ての従業員が内部統制に対し、目標達成責任の一部として何らかの責任を持つ」等々「経営者・管理職・従業員など、会社の人間と外部の委託業者まで含む全体の参画」を強調しています。
 また「変化を認識しそれに対応すること、そして早期警告メカニズムを機能させる」「移り変わる外部要素および内部問題は新しいもしくは大きく変化するリスクの発生に繋がる。」としています。
 私は、1月1日に、「企業経営者に求められる、最も大切な能力は「変化に対する対応能力」である。記述のなかで、・変化は直面しているリスク,取ることを選んだリスクにどう影響を与えているか。(変化は事業に取って最大のリスク領域である。)には、我が意を得たりの思いが致します。」と書きました。リスク・マネジメントの定着についても「変化に対する対応」が強調されている点、極めて実務的な記述だと思います。
 「別のリスク報告システムを開発することよりも、既存の経営情報システムのなかに警告メカニズムを作り込むことが最善である。面倒くさいリスク・マネジメント・データベースは、組織の一人一人が事業目標の達成と、それぞれの仕事に関係する重要なリスクをマネジメントすることに集中するというポイントから外れる可能性がある。」という記述も
こういうことは、企業にリスク・マネジメントを定着させる際の重要なポイントだったことを思い出させます。
 何回も書きますが、わが国のリスク・マネジメントの解説書とは一味違っています。

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ターンブルの実行―取締役会への説明 ⑤ 第一章 4-(2) ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2013年1月10日木曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

 昨年12月16日(日)に、京都・栂尾の高山寺へ行きました。所蔵「鳥獣戯画」の絵葉書です。




○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf

以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
 4.リスク

4-3 リスクは計量されるべきか。
 詳細なリスク量の計量は役に立つかもしれないが、中小の上場企業にとっては、リスクを高・中・低と分ければそれで十分である。肝心なことは役員会と管理職がどのリスクは受容できない、或いは受容できなくなりそうかということについて明確に一致した理解を持ち、いろいろな統制戦略を使っていかにそのリスクを管理するかを決めることである。

○G社のプログラムの重点事項
 ①会社の事業目的を意識する。
 ②良いリスクマネジッメントと内部統制に対するリスク意識と基礎。
 ③事業目標とリスクと内部統制の連携。
 ④早期警告メカニズムの確認と維時。
 ⑤会社内および外部環境の変化に対する迅速な対応
 ⑥事業向上のための優れた慣行を共有すること。

4-4リスクの優先順位をつける。
 どうやってリスクに優先順位をつけるか。
 リスクは影響の大きさ(impact)と発生の可能性(likelihood)によって順位づけられる。一般にはA、B、C、Dというランク付けで十分であろう。その意味は次のようになる。
 A:即刻、実行
 B:実行を検討し、コンテンジェンシープランを策定。
 C:実行を検討
 D:定期的な再調査を継続

 インパクトの大きさは、経済的な意味だけでなく、企業目標の達成に与える潜在的な影響と言う点においてもっと深刻に考慮しなければならない。すべてのリスクが重要と見なされるわけではない。 あまり重要でないリスクは、特に変化する外部要因に照らして重要でないままかどうかをチェックするため、定期的に見直しをする。

 
○総体的なリスク(gross risks)に優先順位がつけられた後、何をする?
 総体的に主要なリスクが特定され、それに優先順位がつけられた後、その一つ一つについて以下の点を決定して行く。
(1) 役員たちがそのリスクを取ることを望むかどうか。
(2) 総体的なリスクを回避、あるいは狭小化するための戦略は何か。
(3) そのリスクのマネジメント、およびコントロールの監視に責任を負うのはだれか。
(4) 残余リスク、すなわちコントロールのプロセスを経てなお残っているリスクは何か。
(5) 早期警告メカニズムは何か。

 下記のポイントを順番に考える。
1. 個々の総体的リスクは、企業目標に沿って考慮する。役員会は認識されたリスクが、企業目標の達成によって得られる利益を超えるものかどうかを決定する。つまり、リスクが見返りを上回るならば、ある目標を掲げ続ける価値があるのか?と言うこと。もし継続するという決断ならば、役員会は明確な統制戦略を用いて、そのリスクに如何に対応するかを決定しなければならない。

役員会はリスクを取る意欲がどれだけあるのか、つまり取ってもいいと思うリスクの量を決定する必要がある。それには主要なリスクについて、リスクと見返りの割合が妥当かどうか考えることが必要。

2. 統制戦略は以下のようなものである。
  • リスクを取ること。 
  • リスクを移転すること(例えば契約条件を変えることによって、誰かにリスクを移すこと。
  • 除去(撤退戦略の採用)
  • コントロール(業務プロセスにコントロールを組み込み、品質管理を増やし、そのマネジメントに最も優れた人材を関与させる。
  • 誰かとリスクを分け合う。
  • リスクの全部または一部に保険を掛ける。
  • その他の方法でリスクを回避する。
詳細なリスク量の計量は役に立つかもしれないが、中小の上場企業にとっては、リスクを高・中・低と分ければそれで十分である。肝心なことは役員会と管理職がどのリスクは受容できない、或いは受容できなくなりそうかということについて明確に一致した理解を持ち、いろいろな統制戦略を使っていかにそのリスクを管理するかを決めることである。

3. 統制戦略を適用した後の残余リスクのレベルの決定は熟慮した方が良い。リスクをすべて消去することは不可能。リスクマネジメントの方針は企業目標に合わせる必要がある。利益を上げるためには、ある種のリスクは常に取らなければならないから、リスクを全部なくそうとすることは無駄なことである。あなたは、あなたの会社のリスク・プロファイルを知り、それをどうマネジメントするかを知る必要がある。
 リスクがあるところ、リスクに敏感でなければならず、無頓着あるいは無分別でいてはいけない。企業の事業目標は、役員会がどれだけリスクを取る意欲があるかということに沿ったものでなければならない。

 重要であると認定するリスクの数は、なるべく限定した方が良い。大まかな目安としては、一つの会社はグループ・マネジメントを必要とする。グループに取って重要なリスクについては,15-20くらいしか対応できないものである。

4. 早期警告メカニズムは、役員会と管理職に対し問題が損害になる前、そして損害を最小限にし、乗り越えるための行動を取る段階に警告を発する報告プロセスである。〝主要リスク指標(Key Risk Indications)〞(早期警告メカニズムの形として)という考えかたの背景は、全体的な行動が迅速に取れるように、潜在的な問題を早期に示すというものである。

 事業目標とそれに関連する計画には、計測可能な実行目標と指標が含まれていなければならない。〝主要業績測定指標(Key Performance Indicators)〞は、非常に有効な早期警告メカニズムとなりうる。然し、経営に取っての〝主要実行指標〞は一般的には過去の実績を報告するように作られているものなので、これだけでは、早期警告メカニズムの目的には不十分である。〝主要業績測定指標〞が重大な悪化を示す頃には、損害やその他の悪影響を防止するには遅すぎるであろう。従って〝主要リスク指標(Key Risk Indications)〞を使うことを検討しなさい。

この分野で問われる主な質問項目は下記。
  • 現在上級管理職に提出されている経営情報は、潜在的情報について十分な早期警告を 発しているか。
  • 潜在的な重大な問題を経営者に対して警告すべき重要な事業リスクの一つ一つについて、引き金となる出来事もしくは、出来事の頻度を意識しているか。
  • 役員連絡は、会社のトップにまで十分迅速に届くようになっているか。そして十分に迅速な行動が取れるようになっているか。
コーポレート・ガバナンスのコンバインド・コードにおいて、会社の社長は、すべての役員が役員会議で取り上げられる問題について、適切な事前説明を受けていることを確実にしておくと言う、特別な責任を負っていると言うことに、留意しなければならない。

(所感)
 リスクマネジメントの実践について、非常に具体的な、現実的な指針が書かれていると思います。例えば、

○ 詳細なリスク量の計量は役に立つかもしれないが、中小の上場企業にとっては、リスクを高・中・低と分ければそれで十分である。肝心なことは役員会と管理職がどのリスクは受容できない、或いは受容できなくなりそうかということについて明確に一致した理解を持ち、いろいろな統制戦略を使っていかにそのリスクを管理するかを決めることである。

リスクは影響の大きさ(impact)と発生の可能性(likelihood)によって順位づけられる。一般にはA、B、C、Dというランク付けで十分であろう。

重要であると認定するリスクの数は、なるべく限定した方が良い。大まかな目安としては、(中略)グループに取って重要なリスクについては,15-20くらいしか対応できないものである
などは、一般のリスクマネジメントの解説書には決して書いてありません。

リスクマネジメントの実践にあたり、米国流の解説書も勿論参考になりますが、英国の実践的なリスクマネジメントの解説も参考にすれば、更に有効なリスクマネジメントの実践が出来ると私は思います。 

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ターンブルの実行―取締役会への説明 ④ 第一章 4-(1) ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2013年1月1日火曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

 昨年12月16日(日)には、京都で素敵な初冬の1日を過ごしました。
○母校の時計台は60年経っても変わりません。



○最初の1年間は黄檗山万福寺のある京阪宇治線「黄檗」で下車、宇治分校に通っていました。(今は研究所ばかりです。)


○宇冶分校は、戦争中の火薬廠の跡で、土塁に囲まれた低い建物で授業が行われていました。
  

○ターンブルの実行ー取締役会への説明 ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~
http://www.icaew.com/~/media/Files/Technical/Research-and-academics/publications-and-projects/corporate-governance%20publications/implementing-turnbull.pdf

 以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
 4.リスク

4-1  対処する重要なリスクの種類
○当時(1999年)Deloitte & Touche の調査の結果です。

 通常どういう種類のリスクが最も懸念されるか。
 ①主要なプロジェクトのマネジメントの失敗
 ②戦略の失敗
 ③改革の失敗
 ④風評・ブランドマネジメント
 ⑤従業員の意欲の欠如と能力の低さ

 最も重要なリスクは、多くの場合業務上或いは戦略上のものである。

どうやってリスクを確認するか。
 ① 自社のサービスと製品を理解する。
 ② 市場がどこにあるか。
 ③ 事業プロセスにおけるリスクを考える。
 ④ 状況が変わった時、人がどう行動するか考える。
 ⑤ 各部門のメネジメント・チーム(local management team)の質を考慮する。
 ⑥ 変化する外部環境を考慮する。

4-2 どの分野でどのくらいのリスクを取ることができるか。
 役員はどのリスクが〝重要〞であるかを正式に検討する必要がある。出来事の性質,範囲そしてタイミングなどリスクの重要性を判断するのは役員会である。

 リスク・リターンの関係、そして会社のエクスポージャーは外部の環境だけでなく、マネジャーたちの行動によっても決まる。


○リスク・マトリックス

経営 (Business )
事業その他
(Operational  &  others )
誤った事業戦略 戦略目標と連携していない事業プロセス
価格 / マーケットシェアへの競争圧力 主要な変更計画の失敗
一般経済の問題 企業家精神の喪失
地域経済の問題 原材料の在庫切れ
政治的リスク 技術不足
技術の立ち遅れ 物的損害 ( 火災・爆発など)
代替財 無形財産の創造・開発の失敗
不利な政策 無形財産の喪失
衰退している業界 機密の漏洩
買収(乗っ取り)の的 物的財産の喪失
追加資金の調達不能 事業が継続できなくなること
先ずい買収( Bad acquisition ) 継承問題
遅すぎる改革 2000 年問題

○リスク・マトリックス 
 財務 (Financial )  
流動性リスク その他の規制および法令違反
市場リスク 追徴税
ゴーイング・コンサーン ( 企業の継続性 ) の問題 健康と安全のリスク
取引過多 環境問題
信用リスク キーパーソンの喪失
金利リスク コスト削減ができない
為替リスク 主要な顧客やサプライヤーに頼りすぎる
高い資本コスト 新製品・新サービスの失敗
財政リスク( Treasury risk ) お粗末なサービス
財務資源の誤用 顧客満足の失敗
事業が影響されるような不正の発生 品質の問題
会計システムの故障 秩序の欠如
記録されていない責任 主要プロジェクトの失敗
信頼できない会計記録 大切な契約を落とす
ハッカーによる情報システムへの侵入・攻撃 インターネットを十分に活用できない
不完全あるいは誤った情報に基づく決断 外部に委託した業務が完遂されない
情報過多と分析不足 業界の行動
投資家に対する約束が十分果たせないこと 大きな技術が関わるプロジェクトの失敗
コンプライアンス (Compliance ) 従業員の意欲もしくは効率の欠如
上場規則違反 変革が実効できない
金融規制違反 非効率 / 効果のない文書化
会社法違反 発展途上国における従業員搾取から来る問題
訴訟リスク その他事業上の誠実さに関わる問題
競争に関する法律違反 その他の風評に関わる問題
付加価値税( VAT) の問題 事業機会の逸失

 財務その他の部門では、事業・財務・業務、そしてコンプライアンス(法令順守)のリスクを分類するのは難しい。いくつかのリスクは二つ以上の項目に入るかもしれない。
 一般的なマトリックスからただ単にリスクを選び出してくることは避ける。リスクはその会社の業界及び環境に特有のものである必要がある。会社の目標達成を支える重要な成功要因に関連づけることが極めて有効である。

○有用な質問。
変化は直面しているリスク,取ることを選んだリスクにどう影響を与えているか。(変化は事業に取って最大のリスク領域である。)
・マスコミに報道されたくないものは何か
・近年、自社あるいはライバル社に起きた問題は何か
・事業がとりわけ影響を受けやすい詐欺の種類と誠実さの問題は何か。
・事業がさらされている、主要な規制・法令上のリスクは何か。

(所見)
 コーポレート・ガバナンス体制構築のため、内部統制に支えられたリスクマネジメント、さらにはERMの実践については各部門に跨がる問題です。企業では経営企画部,総務部,経理部,監査部,法務部,リスク管理部等多くの部門が関係します。更に関係者の間で、現状とあるべき姿についての共通認識が醸成され難い状態にあると思われますから、企業において何れの部門が中心となって推進するにしても,経営者の明確な考えとそれに基ずく指示が無ければ推進は到底不可能だと思います。
 我が国企業のリスクマネジメントの実践において、担当部門の技術的な事項が優先し、「経営的視点」が欠如している点が、最も大きな根本的な問題だと私は思います。
 「Implementing Turnbull」の記述は、取締役会(役員会)は如何に対処すべきかと言う視点で一貫しています。
 細かい点を記述した、リスクマネジメントの解説書は沢山ありますが、「経営的視点」からの解説書として「Implementing Turnbull」がもっともっと読まれたらと思います。

 私は、銀行員時代、企業調査部門・支店貸付係・審査部門・支店長時代を通して、企業経営者に求められる、最も大切な能力は「変化に対する対応能力」だと確信していました。
 今回ご紹介した記述のなかで、
変化は直面しているリスク,取ることを選んだリスクにどう影響を与えているか。(変化
は事業に取って最大のリスク領域である。
には、我が意を得たり思いが致します。

パナソニック・シャープの惨状は、経営者の変化に対する対応能力の不足が根本原因だと痛感します。

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ターンブルの実行―取締役会への説明 ③ 第一章-3 ~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

2012年12月20日木曜日 | ラベル: |

 引続き「ターンブルの実行 取締役会への説明(Implementing Turnbull A Boardroom Briefing)」を辿って行きます。

 私事で申し訳ありません。12月7日娘明子が永眠致しました。亨年50歳。そのため10日のブログを休みました。
 16日(日)には、学生時代に家庭教師をした教え子の広部機型製作所社長の広部元勝さんと京都で素敵な初冬の1日を過ごしました。


○一番好きな冬の栂尾の高山寺は、世界遺産・国宝鳥獣戯画所蔵のお寺です。
 この時期は訪れる人もまばらで、静かな佇まいが心を洗います。



 
○恒例南座の顔見世興行

○「まねき」は京都の師走の風物詩です。

 
○ターンブルの実行ー取締役会への説明
~ Implementing Turnbull  A Boardroom Briefing ~

以下は、記述の抜粋です。

○第1章 なぜターンブルか  
 
3.いますぐやること
 3-1  リスクマネジメントと内部統制に対するあなたの態度は正しいか。
 役員は、次のような問題に注意を怠ってはならない。
  • 役員会がリスクマネジメントは自分たちの問題ではないと考えている。
  • 会社が未だに内部の財務管理にのみ重点を置いている。
  • 事業目的が何かと言うことについて、役員会の中で合意が無い。
  • キーとなるリスクの指標が無く、従業員のための訓練も行われていない。
  • 内部統制の見直しが対外発表のため、定期的に行われる作業に過ぎない。
  • リスクマネジメントが、監査と保険と言った一部門の責任と考えられている。
もし、既に従業員のパフォーマンス向上に関係する変革の試みをしているのであれば、
新に「ターンブル」と言う改革を別途始めるのは止めること。その試みを続ける。ただし効果的なリスクマネジメントと言う方針を会社の目標の中に入れる。競合的な計画は作らない。既存の計画におんぶする
 
3-2 不要な複雑さとコストを回避する。
 中小企業の問題は、リスクマネジメントと内部統制のために使える資源の不足。プロセスを出来る限りシンプルに判り易くする。コストが利益を上回るようなプロセスはビジネスとしては無意味。
 製品ラインアップもキーパーソンも資産も少ない中で、会社を守って行くには、健全なリスクマネジメントは極めて重要であると認識すべきである。
 
○ケース・スタディで内容が更に詳細に解説されています。
 3-3 いま何をする必要があるか。
 組織のあらゆるレベルの人間の関与が重要。最初は、上級管理職と役員会のサポートを得なければならないが、業務レベルでの〝草の根〞の支持も必要。
 2段階の業務プロジェクトとして取り上げることを勧める。
 初期段階(initial stage) 
 プロジェクト計画策定は、そのために適当な時間を使うことのでき人に任せる。その人に協力し、計画を推進させる。主要な成果物、責任、期限を図示する。対応する必要のあるリスクの多くは業務に関わるものであるから、業務経験を持っている者に関与させることは特に有効。計画は複雑にし過ぎてはいけない。経営陣やスタッフから敬遠される。
 
○プロジェクトの推進案が図示されています。

  進行段階(ongoing stage)
  • 計画を組織の各段階に埋め込む。
  • 適切な報告の仕組みを実行する。
  • 情報開示のみならず、事業の発展を目指す。
進行段階は継続的なものである。リスクの監視と管理が必要。
 
○役員会に提出する書類の初期段階の重要な要素が記述されています。
  • ターンブルを実行する背景。  上場規則・コンバインドコード等
  • リスクの特定と順位づけ。
  • 実行すべき主要なタスク。 リスクマネジメント戦略とリスクマネジメント方針書の策定 等
  • 役員会の役割。
  • 資源の割り当て。
  • 計画の各段階における責任。
  • 重要なリスク一つ々々についての経営陣の責任。
企業のリスクマネジメントと内部統制の戦略と方針は、エクスポージャーの変化に応じて微調整しなければならない。過ちから学習し、事業の発展とリスク軽減の可能性を活かすためには、フィードバックの過程が極めて重要である。

(所見)

 今から10年ほど前、住友銀行の子会社のコンサルタント会社に勤務中、広島の自動車メーカーのリスクマネジメント体制確立のお手伝いを致しました。
 先にご紹介した下記の記述などは、将に当時会社側と議論した事項と一致しています。
  • 内部統制の見直しが対外発表のため、定期的に行われる作業に過ぎない。
  • リスクマネジメントが、監査と保険と言った一部門の責任と考えられている。
  • 既に従業員のパフォーマンス向上に関係する変革の試みをしているのであれば、新に「ターンブル」と言う改革を別途始めるのは止めること。その試みを続ける。ただし効果的なリスクマネジメントと言う方針を会社の目標の中に入れる。競合的な計画は作らない。既存の計画におんぶする
  • コストが利益を上回るようなプロセスはビジネスとしては無意味。
  • 組織のあらゆるレベルの人間の関与が重要。最初は、上級管理職と役員会のサポートを得なければならないが、業務レベルでの〝草の根〞の支持も必要。
企業が内部統制とリスクマネジメントを導入するについての留意事項が、具体的に判り易く記述されていて、大変参考になると思います。


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