「リスクとキャッシュフロー」について ㉚

2014年6月20日金曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ⑧
 繰り返しになりますが、中小企業の場合、地震によって自社の建物や機械、棚卸資産がどうなるか、さらにはキャッシュフローがどうなるかを正確に予測することは非常に難しいことです。
 例えば、「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」第2版の「BCP取組状況チェックリスト」には「あなたの会社のビルや工場では地震や風水害に耐えることができますか。そして、ビル内や工場内にある設備は地震や風水害から保護されていますか?」
と記述されています。
 地震については、1996年以降、気象庁の震度は、震度0(無感)から、震度1(微震)、震度2(経震)、震度3(弱震)、震度4(中震)、震度5弱・震度5強(強震)、震度6弱・震度6強(烈震)、震度7(激震)の10段階になっています。( )内は1996年以前の呼称)
 平成26年4月1日に公表された国土交通省の「首都直下地震対策計画[第1版]」
では首都直下地震で想定されている揺れは、「震源の直上で震度6強、その周辺のやや広域の範囲で震度6弱、地盤の悪いところで一部震度7が発生する。」とされています。
 更に、東京都の企業の場合は、平成25年に公表された「東京都 あなたのまちの地域危険度 地震に関する地域危険度測定調査(第7回)」に建物倒壊危険度・火災危険度・総合危険度が、町・丁目ごとに5段階のランクで示されていますから、これを参考に出来ます。
 それでも、下記の表を埋めるについて、ご自分の会社の建物や機械などがどの程度の地震によって全壊するのか、或いは半壊するのかは専門家の診断が無ければ正確には把握出来ません。ですからもし全壊したら、半壊したらという前提で考えてみるしかありません。
 復旧期間についても、地震の規模によっては、地震の直後には中小企業が復旧工事や、機械の発注をすることが殆ど不可能な状態が暫く続くかも知れません。またインフラについては、「首都直下地震対策計画[第1版]」では発災1週間後でも、1都3県で停電率は約5割、断水率は最大約3割で継続する、首都圏の交通・物流システムは発災後長期間に渡り機能不全に陥るとも予測されています。
 どの位の期間事業が出来ないかは、例えば製造業の場合、ご自分の工場の復旧期間と、インフラ(電気・ガス・水道など)の復旧期間の長い方になります。この期間も地震の規模により変動します。卸小売業、建設業の場合も同様の事情になります。
 また、企業の事業活動が中断して売上がなくても、人件費とか家賃とかは(これを固定費と言います。後で詳しくご説明致します。)支出されますので、企業の事業活動が中断している期間にどのくらいの支出が生ずるか、どのくらいの損失になるかも予想しておく必要があります。「復旧費用の算定」の表はそうした考えで作られています。
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表 参考.1-1 復旧費用の算定(製造業)          (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
建  物 全 壊      日    
半 壊      日    
機  械 建物全壊      日    
建物半壊      日    
 棚卸 資産
 
全 損      日    
 半 損      日    
器具・工具 等        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

表 参考.1-2 復旧費用の算定(卸・小売業)        (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
建  物 全 壊      日    
半 壊      日    
商  品 建物全壊      日    
建物半壊      日    
器具・備品        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

表 参考.1-3 復旧費用の算定(建設業)         (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
会社建物 全 壊      日    
半 壊      日    
建設機械
運搬具
全 壊 1      日    
半 壊 2      日    
 建設現場
 
全 壊 1      日    
 半 壊 2      日    
器具・工具 等        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

建設業の場合の復旧費用の算定は事業の規模・形態によって異なり、一律に計算することは難しいと考えますが、標準的なパターンを示します。
注1) 建設機械・運搬具についてはリースのケースが多く、その場合の損害はリース会社に転嫁されます。
注2) 建設現場については「民間連合協定」約款に基づき工事請負契約を締結していれば、「不可抗力による損害」については善良な管理者としての注意をしていたと認められれば、損害は施主の負担になります。
貴方の会社が持ち込んでいる諸機材などは貴方の会社の損失になりますから、注意して算定しましょう。

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【解説】
 「上記の表を埋めるのは難しい。」とばかり言っていては、中小企業のBCPは無理ではないかということに成りかねませんが、度々申し上げていますように、あくまで「お金がどのくらい掛かるでしょうか。大体の金額で構いませんので、表を埋めて下さい。」と言うことなのです。
 また、逆に「ご自分の会社では、地震発生時に用意出来るお金の額は〇千万円くらいだから、事業中断が〇ヶ月以上になるようだったら、資金繰りが破綻する。」と言った判断も出てきます。これに対しては、政府の災害復旧融資制度を勉強しておくべきです。
 とても無理だからと言って、何も対策を講じないよりも、ご自分で考えられることは対策を講じておく、そして、最低1ヶ月くらいの出費を賄えるだけの資金を持っていて、災害発生後1ヶ月くらいの間に事業の継続やその後のキャッシュフロー対策を講ずることが現実的な中小企業のBCPではないかと私は思います。

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2014年6月10日火曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ⑦
 今回から、再び「財務診断モデル」に戻ります。
 4月10日のブログで「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」第1版の財務診断モデル(基本コース)のご紹介をしましたが、第2版で改定されている部分がありますので、重ねてご紹介致します。
(◊ ◊ ◊ ◊ ◊)で囲まれている部分は、「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」第2版の【参考】財務診断モデル(基本コース)の記述です。下線は筆者がつけました。

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【参考】財務診断モデル(基本コース)
BCPサイクルの一環として、災害に遭遇した場合の貴方の会社の財務状況(復旧費用総額、キャッシュフローなど)を整理しておきます。
実際の災害時には、被災状況を反映した再検討を行い、復旧資金の調達計画の立案や融資に関する金融機関との相談の際に役立てて下さい。
なお、以降のページでは、財務診断を進めるための手順を示していますが、同様の手順に従った計算作業がエクセルファイル上で行えるようになっています。ダウンロードページから、エクセルファイルの「財務診断モデル基本コース」をダウンロードして、その中の指示に従って作業を行って下さい。計算が自動的に行われて、BCPに綴じるべき帳票が簡単に作成できます。
更に詳しく検討をしたい時は、中級コースを参照して下さい。また、地震以外あるいは、複数工場、複数事業で中核事業を継続する等のケースは、上級コースを参照して下さい。

参考.1 復旧費用の算定
あなたの会社の建物が、例えば震度6強の地震によって全壊するか半壊するかした場合、あなたの事業を再開するために、お金がどのくらい掛かるでしょうか。大体の金額で構いませんので、下の表を埋めて下さい
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【解説】
災害に遭遇した場合の財務状況(キャッシュフロー、復旧費用額など)を予測・検討する場合、色々なケースが予想されますが、先ず最も重大な結果が生ずる地震のケースについて製造業、卸・小売業、建設業の3業種を検討しています。これ以外の業種についてはこの記述を参考にして検討することになります。
「参考.1 復旧費用の算定」の項の最初の部分に「お金がどのくらい掛かるでしょうか。大体の金額で構いませんので、下の表を埋めて下さい。」と書かれています。4月10日のブログにも書きましたが、キャッシュフローに関する知識のあまり無いコンサルタントの方々などからは、中小企業が「事業を再開するために、お金がどのくらい掛かるか。」を算定定するのは無理だと言う声が聞かれます。しかし中小企業の経営者で、地震等の大災害発生後、自社の事業を再開するのにどのくらいのお金が必要だろうかと考えない人はいないと私は思います。「見当もつかない」「ヤマカンで50百万円くらいかな」などです。それが「大体の金額で構いませんので、下の表を埋めて下さい。」と言う意味なのです。

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復旧費用とは、災害時にあなたの会社の資産(建物や機械)が損壊し「資産の損害」が生じたとき、立て直す費用と、災害の結果あなたの会社の事業がストップし、その間「事業中断による損害」により発生する費用の二つを言います。
「事業中断による損害」に備えて、経験上月商の1ヶ月分くらいの現金・預金を持っていることをお薦めします。
緊急時に備え、平時から「月商の1ヶ月分くらいの資金」を用意しておくのは、流動性リスクに対する経験則です。緊急事態発生直後は、工場や事務所の整備、事業再開への対策等で資金の手当てを考える暇はありません。また当面事業がストップすることを覚悟しなければなりません。そのために最低1ヶ月くらいの出費を賄えるだけの資金を持っていることが必要となります。厳密には月商の1ヶ月分とは言えませんが、不測の出費なども考えて月商の1ヶ月分としました。
例えば、ソニーの2004年3月期ア二ュアルレポートでは、「ソニーは流動性確保のために、グループ全体で、年度における平均月次売上高および予想される最大月次借入債務返済額の合計の100%以上に相当する流動性を維持することを基本方針としています。」と書かれています。
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【解説】
私は中小企業BCP普及セミナーで「地震等の大災害発生後自社の事業を再開するのにどのくらいのお金が掛かるか。」を考えて、どうしてもお金の面で事業の再開が無理だと思われる場合は、「地震等の大災害発生後自社の事業を整理するにはどうしたら良いか」例えば取引金融機関からの借入金に対する保証債務の履行・従業員を解雇する費用などを検討しておくのもBCPだと申し上げていました。事業を継続出来るかの最後のキーポイントはお金ですから、ヤマカンででも考えておくべきです。
「事業中断による損害」に備えて、経験上月商の1ヶ月分くらいの現金・預金を持っていることをお薦めします。と言う記述の意味は、お金を借りてでも事業を継続したいと思う経営者は、事前には自分で考えつく対策は成るべく請じておく。そして、地震発生後、とりあえず1ヶ月くらいは過ごせる資金を経営者の個人資産などででも用意しておいて、地震発生後1ヶ月くらいの間に再建計画を考え、資金は政府の「災害復旧融資制度」に頼るというのが、現実的な中企業のBCPではないかと私は考えています。

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表 参考.1-1 復旧費用の算定(製造業)          (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
建  物 全 壊
     日
   
半 壊
     日
   
機  械 建物全壊
     日
   
建物半壊
     日
   
 棚卸 資産
 
全 損
     日
   
 半 損
     日
   
器具・工具 等        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

表 参考.1-2 復旧費用の算定(卸・小売業)        (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
建  物 全 壊
     日
   
半 壊
     日
   
商  品 建物全壊
     日
   
建物半壊
     日
   
器具・備品        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

表 参考.1-3 復旧費用の算定(建設業)         (単位:千円)
  損害の程度 復旧期間 復旧費用  備 考 
会社建物 全 壊
     日
   
半 壊
     日
   
建設機械
運搬具
全 壊 1
     日
   
半 壊 2
     日
   
 建設現場
 
全 壊 1
     日
   
 半 壊 2
     日
   
器具・工具 等        
資産関係計       ( A )
事業中断損失     ( B )
復旧費用計       ( A )+( B )=( C )

建設業の場合の復旧費用の算定は事業の規模・形態によって異なり、一律に計算することは難しいと考えますが、標準的なパターンを示します。
注1) 建設機械・運搬具についてはリースのケースが多く、その場合の損害はリース
会社に転嫁されます。
注2) 建設現場については「民間連合協定」約款に基づき工事請負契約を締結してい
れば、「不可抗力による損害」については善良な管理者としての注意をしていたと認められれば、損害は施主の負担になります。
貴方の会社が持ち込んでいる諸機材などは貴方の会社の損失になりますから、注意して算定しましょう。
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表の解説は、次回以降に致します。

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「リスクとキャッシュフロー」について ㉘

2014年6月1日日曜日 | ラベル: |


 今年も庭のバラが咲きました。お隣に差し上げたら素敵な写真になって帰って来ました。

 〇2014年版中小企業白書について
 5月20日のブログでも触れましたが、経済産業省のBBLセミナーに参加し「2014年版中小企業白書」のご説明を聞いて来ました。
 「2014年版中小企業白書」の特色は「小規模事業者に特に焦点を当て、データや分析などで実証的に小規模事業者の実態や課題を明らかにしている。」ことです。
 セミナーでは、先ず「中小企業・小規模事業者が直面する経済・社会構造の変化」の問題点をお聞きしました。以下はその抜粋です。
(1)人口の減少・高齢化
〇日本は2011年から本格的な人口減少社会になる。2005年から2010年までの人口の増
減率を見ると、三大都市圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・滋賀県・愛知県)、福岡県、沖縄県(自然増加率のみの上昇)以外は人口減少。
2040年には、すべての都道府県で人口が減少。とりわけ秋田県・島根県・高知県では高
齢者人口まで減少し、加速度的に人口が減少する局面に突入する。
今後の中小企業政策の立案に際しては、このような不可逆的な人口動態、及び、厳しい
国内の経営環境を前提とした上で、いかに中小企業・小規模事業者が生き残っていけるか」、中長期的な観点から戦略的に考えていく必要あり。
(中略)
〇人口減少・高齢化が進む中、経営者も高齢化し、70歳以上の年齢階級が最も多い。
〇中小企業・小規模事業者の企業数も減少が続き、直近の3年間で35万者減少
(2)国際化・就業構造の変化
〇製造業の設備投資は、リーマン・ショックまでは国内・海外ともに増加。リーマン・ショック後、景気は急激に落ち込み、国内投資・海外投資ともに減少。その後2010年からの景気拡張局面では国内投資は伸び悩むも、海外投資は着実に増加。
〇この10年間で、製造業の給与所得者数は減少(265万人減)に対し、サービス業
 給与所得者数は増加(285万人増)。一方、平均給与は、製造業は微増(2万円増)に対しサービス業は大幅に減少(46万円減)。
(3)情報化
情報技術の発展は著しい。携帯電話の所帯保有率は既に9割超となっており、スマートフォンやタブレット端末も、この3年間で急速に普及。これに伴い、消費者の行動も、店舗販売からネット販売へと変化しつつあり、個人向けEC市場も拡大傾向。
 眞崎注 (EC) 電子商取引(Electronic commerce)インターネットや特定顧客用の専用線といったコンピュータネットワーク上での電子的な情報通信によって商品やサービスを分配したり売買したりすること。(ウイキペデイアより)
〇しかしながら、小規模事業者は、この機会を十分に活かせていない。小規模事業者の半数以上が自社のホームページを持っておらず、自社サイトでの製品販売・予約受付は1割程度。ネットショップへの出店・出品は1割を切っている
(4)地域資源の活用
〇地域活性化の切り札となり得る地域資源は、どの都道府県・市区町村も有しているとの認識。とりわけ、市区町村では、「農水産品」「観光資源」と答えた自治体が多い。
〇地域資源として都道府県が指定した件数割合は「観光資源」が約半数を占めてるが、事業計画として認定(活用)された件数割合はわずか7%。→今後、さらなる活用の余地あり。
〇事業計画は95%が単者での申請。→地域活性化のため、複数者での地域資源ん活用を促進すべき。
〇人口減少等で需要が縮小する地方経済にとって、観光、とりわけ外国人観光客の誘客による「外貨」獲得は、地域活性化の一つの方向性。
〇外国人観光客は、我が国の食文化や温泉、自然などに関心あり。有名な観光資源がない
地域であっても、食文化を中心に、エコツーリズム農林業・漁業体験などによって外国人観光客を引きつけることは十分に可能。
〇我が国への観光客は22013年に初めて1,000万人を突破。しかしながらフランス、アメリカ、中国、韓国等に比べると、外国人観光客は少なく、まだまだ可能性はある。地域を挙げて、外国人観光客の受け入れ態勢を整えることが必要。
(所感)
 丁度、このブログで4月20日・5月10日と「小規模企業のBCP」について書いていた時だったので、「2014年版中小企業白書」が小規模事業者に焦点を当てて、実証的に小規模事業者の実態や課題を明らかにしておられることに感銘一入です。
 私が都市銀行に勤務していた時には、比較的規模の大きい中小企業との取引が主で、恥ずかしいことですが小規模事業者の実情は分かっていませんでした。5月10日のブログにも書きましたように、当時の国民金融公庫にお伺いして勉強をするような始末でした。
 リスクマネジメントやBCPの仕事をする中で、「大企業のBCP」「中小企業のBCP」「小規模企業のBCP」は、本質は同じでも、実行方法は色々で、あまり中身を硬直的に考えるべきではないと考えるようになりました。
 今回お聞きした「中小企業・小規模事業者が直面する経済・構造の変化」の冒頭が「人口の減少」でした。中小企業・小規模事業者だけでなく、企業経営をはじめあらゆる面で今後大きな問題を生ずるわけですが、地方経済に与える影響、小規模企業の経営者の高齢化の問題等々深刻な問題です。また、急速に広がっている電子商取引(EC)マーケットへの立ち遅れも将来的には大問題だと思います。
 私は「中小企業のBCP」の普及活動を行っていた時に「小規模企業」のBCPでは、「もし地震が起こったら、事業をやめるのか」ということも考えておくべきだと申し上げ同感を得ていました。企業数で86.5%、従業員数で25.8%を占めている小規模企業の将来については、廃業の可能性も含め、非常に多くの考えるべきことがあると痛感しました。

(参考)
「2014年版中小企業白書について」
スピーカー: 早田 豪 (経済産業省中小企業庁事業環境部調査室長)氏
プレゼンテーション資料です。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14051401_soda.pdf
コメント資料です。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/14051401_uesugi.pdf
BBL のHPです。
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/#past

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「リスクとキャッシュフロー」について ㉗

2014年5月20日火曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ⑥
 5月14日(水)に、2月20日のブログでご紹介した経済産業省のBBLセミナーに参加し「2014年版中小企業白書」のご説明を聞いて来ました。
「2014年版中小企業白書」の特色は「小規模事業者に特に焦点を当て、データや分析などで実証的に小規模事業者の実態や課題を明らかにしている。」ことだのご説明でした。
 小規模事業者の状況は下記です。企業数で86.5%、従業員数で25.8%を占めています。 

  企業数 従業員数 売上高
(法人のみ)
  比率(%)   比率
(%)
大企業 1. 万者 0.3 1,397 万人 30.3 764.9 兆円
中小企業 385.3 万者 99.7 3,217 万人 69.7 609.6 兆円
  内小規模
事業者
334.3 万者
 
86.5
 
1,192 万人 25.8    ―
  計 386.4 万者 100.0 4,614 万人 100.0    ―

「2014年版中小企業白書」の詳しい内容は別途ご報告をしたいと思っています。
 ◎損害額と復旧費用の相違
 4月10日のブログの最後で問題を提起した1)東日本大震災における津波に当たるものは首都圏直下型地震では「大火災」だということ、2)小規模企業のBCP、の最後の、3)損害額と復旧費用の相違について今回書きます。
 実は今年の3月に研究仲間の方から「財務診断モデル初級編にある、損害保険の整理という中に、時価(再調達価格-経年減価)と新価(再調達価格)という言葉がありますが、通常は、どちらが多いのでしょうか。また、どちらでもよいのでしょうか。
あるいは、簿価という概念は使わないのでしょうか。」と言うご質問を受けました。下記はそれに対する私の返事です。
 『ある工場の「簿価」」は、「工場を建設するのに掛かった費用ー減価償却額」になります。
保険契約で言う「時価」は「新価(再調達価格・今工場を建設するには幾ら懸かるか)ー経年減価」です。「再調達価格」は建設当時とは変動しています。多くの場合は、建設当時より高くなっているでしょう。
工場が全壊した場合、損益計算書上の損失額は簿價になります。損益計算書上の損失額と、工場を再建する費用とは異ります。キャッシュフロー上は再調達価格の保険金額がなければ、資金は不足します。ですから「新価(再調達価格)」で保険契約をすべきです。ただ保険料が高くなりますので、時価で契約する場合が多いかもと思います。しかしそれではキャッシュフロー対策上は不十分です。
更に言えば、災害発生後工場再建にあたり新しい機械設備に変えたりすれば、新価以上のお金が必要になります。』
これは保険契約に際しての考え方ですが、災害時のキャッシュフローの考え方の根本でもあります。
損益計算上の損失額は古い工場の場合などは極めて少額になります。損害額は『時価、即ち新価(再調達価格・今工場を建設するには幾ら懸かるか) ー 経年減価」』だと思います。然し災害時のキャッシュフロー対策を検討する場合にはこれも使えません。
同じ工場を再建するのなら必要なお金は再調達価格の金額になります。この際建物の構造を変える、新しい機械設備に変えるなどの場合は新たに計算をしなければなりません。
私は銀行系の損害保険代理店に勤務しましたので、このあたりのことを勉強することが出来ましたが、損害保険に詳しくない、BCPやリスクマネジメントの実務家からは前記のようなご質問を頂くことになります。
また、地震保険(地震に対する損害保険)についてもあまりご存知のない方があるように思われます。財務省のHPに「地震保険制度の概要」と言うページがあります。http://www.mof.go.jp/financial_system/earthquake_insurance/jisin.htm
「地震保険の概要」の記述は下記です。
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  • 地震保険は地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による損害を補償する地震災害専用の保険です。
  • 地震保険の対象は居住用の建物と家財です。
  • 火災保険では、地震を原因とする火災による損害や、地震により延焼・ 拡大した損害は補償されません。
  • 地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約となりますので、火災保険への加入が前提となります。地震保険は火災保険とセットでご契約ください。すでに火災保険を契約されている方は、契約期間の中途からでも地震保険に加入できます。
  • 地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ 
 最後の『地震保険は、地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を政府が再保険することにより成り立っています。』『地震保険の対象は居住用の建物と家財です。』
という2点にご注目下さい。
 政府は地震の被災者の生活の安定に寄与することを目的として地震保険制度を設けている訳です。従って対象は『居住用の建物と家財』に限定され、企業の物件はここで言う地震保険の対象にはなりません。
 企業は民間の保険会社が引き受ける地震保険の契約をすることになります。ところが我が国では地震のリスクが大きいため、特に中小企業が地震保険を契約することは困難な場合が多いと考えられます。火災や水害の場合は前記の保険の考えで保険契約が出来ても、肝心の地震に際しての保険契約が出来ない場合にどうしたら良いのか。そのための制度が、政府の『災害復旧貸付制度』なのです。
 例えば、中小企業庁のHPに『東日本大震災復興特別貸付』の記述があります。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ 
 震災により直接又は間接被害を受けた中小企業者の皆さんなどを対象に、事業の復旧に必要な設備資金、運転資金を長期・低利で融資する新たな制度です。
対象となる方
① 直接被害者
・ 地震・津波等により直接被害を受けた方
→ 市区町村等の罹災証明が必要。 (写しで可)
・ 原発事故に係る警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域(以下「警戒区
域等」)の公示の際に、当該区域内に事業所を有していた方。
→ 納税証明、商業登記簿等の確認書面が必要。 (写しで可)
② 間接被害者
・ 直接被害者(大企業可)の事業活動に相当程度依存している等の要件を満たす方
→ 直接被害者(取引先)の罹災証明(写しで可、事後提出可)又は被害証明書が必要。
(被害証明書を利用する場合、被害証明申請書に必要事項(取引企業の被害状況や
当該企業との取引依存度、売上額等の減少率等)を記載の上、お申し込み先にご提
出ください。)
③ その他の方
・ その他、震災の影響により、業況が悪化している方。
◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ ◊ 
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/h25/download/03jyuten.pdf
 この制度は、地震保険が掛け難い我が国の中小企業のキャッシュフロー対策にとって大変重要な制度です。
 この制度を有効に生かすために、「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」には『財務診断モデル』と言う記述があるのですが、何回も言うように生かされていません。誠に残念なことです。
 避けられない地震災害にあたり、個人に対しては政府が再保険を引き受ける地震保険制度で、中小企業に対しては『災害復旧貸付制度』でお金を貸すのが根本のサポート対策です。
 お金が全てではありませんが、企業が存続する為には最終的にはお金が回るかが重要です。
 


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「リスクとキャッシュフロー」について ㉖

2014年5月10日土曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ⑤

◎小規模企業のキャッシュフロー・地震対策について
 前回にも書きましたように、私は昭和48年(1973年)10月に都市銀行の亀戸支店長になりました。銀行員は支店長になると漸く一人前になったような気がするものです。 
 張り切って赴任した直後の10月6日に第四次中東戦争が勃発し、石油の価格が高騰しました。石油価格の上昇は、エネルギー源を中東の石油に依存してきた先進工業国の経済を脅かし、日本経済にも深刻な影響が生じました。
 亀戸は中小企業特に零細企業が多いので、新米支店長としては企業のキャッシュフローは今後どうなることかと不安になり,暫くしてから錦糸町にあった国民生活金融公庫の支店をお訪ねして、「錦糸町や亀戸地区の小規模企業の資金繰りの状況をお教え下さい。」とお願いしました。
 驚くべきことに「借入金を返す企業が増えています。」とのことでした。都市銀行の常識からは、景気が悪化し、企業の業績が悪化すれば資金が不足し、借入金が増えて行くだろうと思っていた訳です。「一体どういうことですか。」とお聞きしました。
 国民生活金融公庫の支店長さんは「小規模企業は,大体事業所が1階、住まいが2階などで一体になっています。従業員も家族が中心です。好況の時は一家は昼夜兼行で働きます。過去の赤字を埋めている間は税金を払わなくて済みますので、一生懸命貯金をされます。不況になるとジットして毎日の生活を送られます。生活のためのお金は個人から出ますが、企業としての支出は最小限度に抑えられます。そうなると借入金の金利の支払いが勿体ないので手持ちの貯金を取り崩して借入金を返される訳です。」
 当時の金利は数%のレベルで、利息の金額は馬鹿になりませんでした。「人は、いくら働いてもお金が手元に残らないような仕事をいつまでも続けることはしないと思います。小規模企業の場合、好況と不況の狭間で結局はお金が貯まるから今の仕事を続けているのだと思います。」と言うことでした。現在もそうなのかは私には判りませんが、都市銀行で大企業や大きめの中小企業のキャッシュフローばかり検討していた者に取っては目から鱗が落ちる思いでした。
 平成20年3月14日、中小企業庁の委託で、三菱総合研究所は金沢市で「中小企業BCP策定セミナー ~中小企業の事業継続と社会的信頼性向上のために~」を開催し,私も講師として参加しました。その際石川県商工労働部産業政策課のご協力を得て、能登半島地震時における石川県所在の各種金融機関・石川県信用保証協会の災害復旧融資状況の調査を実施しました。
 その一環で、私は国民生活金融公庫金沢支店をお訪ねし、支店長さんに「今回の能登半島沖地震発生後の融資のご経験から、地震に備えた小規模企業のキャッシュフロー対策はどうしたら良いか。ご意見をお聞かせ下さい。」と質問しました。支店長さんは少し困ったような顔をされました。
 答えは、「地震発生後設置された特別相談窓口で、私どもは最も長期間ご相談に応じました。相談に来られた方の殆ど方は従来私どもや民間金融機関からの融資を受けたことのない方でした。従って事前対策については、今回の経験からはお答えが出ません。また、私どもの従来からの貸出先は、非常に多くの小口貸出先の集まりですから、個々の企業の地震対策のご相談を受けたり、サポートすることは殆どありません。」とのことでした。
 私は、4月1日・10日のブログで「金融機関の取引先に対するBCP(事業継続計画)の策定支援はあたかも工場の耐震化工事と同じだと思うのですが、現在でもあまり行われていないと思われます。」と書きましたが、小規模企業の場合は、資金不足に備えて事前に金融機関と相談する機会は殆どないということが分かり、また目から鱗が落ちる思いでした。
 折しも、5月5日の休日に東京駅前の丸ビルの地下で親しくしている美味しい洋菓子屋さんのご主人とばったり出会い、お茶を飲んで雑談をしました。ご主人が「私は未だ嘗て銀行からお金を借りたことはありません。」と仰言いました。ご自分の事業は常にご自分の資金で賄える範囲で行って来たと言うことでした。こんな小規模企業の経営者は多数おられる訳です。金融機関が相手にしないということではないと私は思います。
 小規模企業の場合は、コンサルタントや金融機関などに相談することなく、ご自分で考えつき実行出来ることは事前にやっておく。然し完全な地震対策は出来ませんから、3月10日のブログに書いたように、「災害発生直後は、事業はストップしますが、最低1ヶ月くらいの出費を賄えるだけの資金を持っていれば、当面の対策を樹てる時間が出来ます。災害発生後1ヶ月くらいの間に事業の継続やその後のキャッシュフロー対策を講ずることが現実的な手段になる。」と言うのが「小規模企業の地震対策」ではないかと改めて思います。
 災害時のキャッシュフロー対策についてもそうですが、「大企業のBCP」「中小企業のBCP」「小規模企業のBCP」は、本質は同じでも、実行方法は色々で、あまり中身を硬直的に考えないことが必要だと私は考えます。

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「リスクとキャッシュフロー」について ㉕

2014年5月1日木曜日 | ラベル: |

 11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ④

◎東日本大震災における「津波」に当たるものは首都圏直下型地震では「大火災」で
ある。
 下の二つの写真を見比べて下さい。非常に似通っていると思われませんか。
〇昭和20年(1945年)3月10日 東京大空襲後の写真

〇平成23年(2011年)3月11日東日本大震災後の石巻市(リスク対策Com.提供)


 私は戦中派なので、どうしても東京大空襲と東日本大震災を比較したくなります。どちらも鉄筋の建物を除いて建物が跡形もなく無くなっています。
 隅田川に架かる両国橋を渡った先の錦糸町や亀戸のある下町地区を中心に、大正10年(1923年)9月1日の関東大震災での大火災の死者・行方不明者の数は10万5千人余と言われています。その22年後、昭和20年(1945年)3月10日の東京大空襲の死者・行方不明者の数も10万人以上と言われています。
 蔵前橋を渡った先の横網町公園の中にある東京都慰霊堂には、関東大震災の身元不明者の遺骨と東京大空襲の身元不明者の遺骨が納められています。そして両方の犠牲者の霊が祀られています。

〇東京都慰霊堂(旧震災記念堂)

 私は昭和48年(1973年)10月に都市銀行の亀戸支店長になりました。当時は関東大震災と東京大空襲の両方を経験した方が数多くおられました。2回の大火災で生き延びることが出来た理由は、「早期に川を渡って対岸に逃げられたことだ。」と異口同音に言われていました。当時は隅田川や荒川・江戸川という大きな川を渡って、漸く大火から逃れられた訳です。今は海岸の埋立地に逃げる手もあると思いますが。
 東京都都市整備局のHPに地域危険度マップが公表されていて、下記のように記述されています。
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地震に関する地域危険度測定調査の沿革
 東京都では、東京都震災対策条例(当時は震災予防条例)に基づき、昭和50 年11 月に第1回(区部)の地域危険度を公表しました。その後、市街地の変化を表わす建物などの最新データや新たな知見を取入れ、概ね5年ごとに調査を行っており、今回(平成25年9月)は第7回目の公表です。
  今回の測定調査では、都内の市街化区域の5,133町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、建物の倒壊及び火災について測定しました。
 さらに第7回調査から、災害時の避難や消火・救援活動のしやすさ(困難さ)を加味するため、「災害時活動困難度」(災害時の活動を支える道路等の基盤状況を評価する指標)を考慮した危険度の測定を始めました。この調査を進めるに当たっては、防災分野の専門家などで構成する「地域危険度測定調査委員会」を設置し、より精度の高い新たな測定方法に改善を図るなど、調査全般にわたり検討してきました。
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/kikendo.htm#kasai
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 地域危険度一覧表 (区市町村別)
 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/table.htm
 地域危険度マップ
 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/chiikikiken.htm
江東区の火災危険度マップです。

江東区の北東の角の部分、亀戸・大島地区が危険度4-5で赤く塗られています。その部分を拡大します。

亀戸3丁目・5丁目(私が勤務していた支店の所在地です)・7丁目、あと大島・北砂・南砂あたりは危険度4-5で真っ赤です。
 阪神淡路大震災では、神戸市の長田地区が火災で丸焼けになりました。首都圏直下型地震では亀戸や大島地区は火災で丸焼けになる危険性が高いので、地震発生時には先ず避難を最優先にすべきではないかと私は思います。丸焼けを前提にしたBCPを考えるべきです。津波に対して高台に住むという対策がありますが、大都市では事業所を移転するのは中小企業では至難の技です。
 亀戸に比べ、最後に私が勤務していた銀行の子会社があった千代田区九段南付近の地図は真っ白です。九段地区は高台で地盤も良く、都内でも最も安全な地区の一つだと言えます。


「火災危険度上位100町丁目のリスト」で見ると、危険な町丁目の数は、①足立区21②荒川区16③墨田区15④台東区8⑤大田区7⑥北区7⑧江東区6⑨品川区6⑩葛飾区5の順番です。


 上記の各区は、大田区・品川区を除き全て東京の北東部に集中していることにお気ずきと思います。この地域では首都圏直下地震に際し、東日本大震災における「津波」に当たるものは「大火災」であると私は思います。
 丁度3年前の平成23年5月1日のブログで、『TVでコメンテーターが津波の専門家に「今後は20M—30Mの防潮堤を作らなければなりませんネ。」と質問をしたら、彼は「それは財政的に恐らく不可能だから、想定以上の地震と大津波が発生した場合如何に早く安全なところに逃げるか、或いは住居を高台にするか、などが対策となる。」と言っていたのが印象的でした。』と書きました。
 東京の北東部を火災に強い街にすると言う試みは既になされていると思いますが、企業に取っても、地方自治体に取っても財政的に恐らく限界があると思いますから、素早い避難と丸焼けを前提にしたBCPを策定するしかないと私は考えます。



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「リスクとキャッシュフロー」について ㉔

2014年4月20日日曜日 | ラベル: |

11.「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の「財務診断モデル」 ③

 平成17年6月から中小企業庁「中小企業BCP普及事業」プロジェクトの有識者会議メンバーとして作業に従事した際、平成7年1月17日の阪神淡路大震災後に実行された災害復旧融資の返済状況をお聞きしました。
阪神淡路大震災における中小企業への災害復旧貸付実績は、貸付 27,459件 5,304億円 保証 55,245件 6,503億円 合計 82,704件 1兆1,807億円(阪神淡路大震災被害総額 約 9.9兆円)で、返済期間は10年でしたから丁度返済期限が来ていました。「7割は約定通リ返済され、3割は返済期限を延長して返して貰っています。」との答えでした。我が国の中小企業の経営者は大地震で壊滅的な被害を受けても、事業の再建のために借りたお金を一生懸命返す人たちなのだと痛感し、「政府の災害復旧融資制度」は有効に機能していると思いました。

◎小規模企業のBCP
 今更の感がありますが、中小企業基本法に中小企業の定義がなされています。
 (中小企業)
 1.製造業その他  資本金3億円以下,又は従業員300人以下
  2.卸売業       資本金1億円いか、又は従業員100人以下 
 3.小売業       資本金5千万円以下、または従業員50人以下
 4.サービス業    資本金5千万円以下、または従業員100人以下
 〇日本政策金融公庫・中小企業事業部門が担当(旧中小企業金融公庫)
  (小規模企業)
 1.製造業その他    従業員20人以下
  2.商業・.サービス業   従業員5人以下
 〇日本政策金融公庫・国民生活事業部門が担当(旧国民金融公庫)
 4月1日のブログに書きましたが「中小企業BCP(事業継続計画)策定運用指針」の第2版の改定では『我が国企業へのBCPの導入を図るためには、99%を占める中小企業への普及促進が必要不可欠であり、そのためには特に太宗を占める小規模事業者への導入を含めた対応が求められています。このため、平成18年に公表した「中小企業BCP策定運用指針(第1版)」を一部見直し、小規模事業者を含めた初心者を念頭に「入門コース」を新たに加えるとともに、業種別の事例を追加する等、分かり易い内容に改訂しました。』とされています。
 私は、平成18年度以降3年間「中小企業BCP策定運用指針」普及セミナーの講師として、受託の三菱総合研究所とご一緒に全国で「財務診断モデル」の話をしました。その際、北陸の或る商工会議所の青年部会の方々の「BCP作成」のお手伝いをしました。参加メンバー10社中5社は小規模企業でした。
〇参加メンバー中の小規模企業
会社名
(人 員)
業  種 販売地域     留 意 点
A
(1 名)
店舗内装・建築施工・図面製作 地元限定 災害発生時の需要はどうか。
B
(1名)
ガーデン・エクステリア 地元限定  災害発生時の需要はどうか。
C
(2 名)
保険代理業 ほぼ地元限定  災害発生時の被害者・保険会社との対応 超多忙
D
( 2  名)
 商  店 地元限定  災害発生時の需要はどうか。
 商品の仕入れは可能か。
E
(2 名)
建築サービス 地元限定  災害発生時の需要はどうか。

 
 小規模企業がどこまでのBCPを作成するかについては、議論が分かれるところですが、私は必ずしも各項目を全部検討出来なくても、可能な限りで充分意味があると考えています。
 下記の社会保険労務士のBCPは、或るBCPの研究会で私が最高点を差し上げたものです。ご本人から公開の許可を得てお見せ致します。
これについては、内閣府系のBCPご担当の方から「眞崎さん、こんなものをBCPだと言って貰っては困ります。BCPの各項目の一部しか検討していないではないですか。BCPというものに対する誤解を生じます。」と厳しく言われました。
 私は、そうであればBCPと言わないで「地震対策計画」と言えば良いと思います。要は身の丈にあった地震対策を立てて、ご自分の事業が継続出来ればよいことだと思います。
 名前や、形式に拘って何もしないよりも、少しでも対策を立てた方が、実際の役に立つと考えます。

社会保険労務士事務所のBCPの必要性

1. 社会保険労務士事務所のBCP
(1) コアビジネスを止めない策の検討
(2) コアビジネスが止まるほどの災害の検討
(3) コアビジネスへの影響度の分析
(4) 目標復旧期間の設定
(5) 緊急時における顧問先との共通認識
(6) 各種資源の代替策の確保
(7) 事前投資・災害時の資金調達・保険の検討
(8) 共助・地域貢献

2. ヒト・モノ・カネ・情報の事前対策
  予防 複数化 バックアップ 代替
ヒト 従業員教育 他地域の社会保険労務士との提携   採用補充
モノ 事務所の耐震補強   臨時拠点の確保 設備の移動
設備の調達
カネ 内部留保 資金調達の多様性 緊急融資 損害保険
(社会保険労務士賠償責任保険)
情報   地域の団体(商工会・同友会等)の所属 データバックアップ データ再構築

3. BCP導入効果イメージ(大地震による災害を想定、従業員3人)
  BCP による準備 BCP 導入なし事務所 BCP 導入済み事務所
当 日
•  書庫・棚の固定
 
•  事務所(建物)の 耐震補強
 
•  従業員の連絡手段 等の事前確認(携帯等)
•  棚が倒れ、書類が散乱
 →書類の整理に追われる
•  事務所半壊
→営業できない
•  従業員の安否が確認できない
→ 従業員の状況を把握できない
•  書類の散乱は小規模
→すぐに書類整理できる
•  事務所は無事
→すぐに営業できる
•  従業員の安否確認がとれる
→ 従業員の状況を把握
数日間
•  地域のコミュニケーションをとる( 地域の団体 に所属)
 
•  緊急時の 顧問先との共通認識 (連絡系統の確認)
 
•  他地域の社会保険労務士 との提携
•  地域での協力がとれない
→孤立
 
•  顧問先と連絡が取れない
→緊急時対応ができず、信頼度低下
•  他地域に提携している社会保険労務士がいない
→電気も普及せず、自身で業務ができない
•  地域の復旧活動に協力
→信用度が上がる
 
•  顧問先と連絡が取れる
→緊急時対応ができ、信頼度上昇
•  被害の少ない地域の社会保険労務士に業務代行を依頼
→業務ストップの防止
1ヶ月後
•  内部留保
 
 
 
•  データバックアップ
(サーバーへのデータ保存)
 
•  損害保険( 社会保険労務士責任賠償保険 )
 
 
•  資金調達の多様性
•  事務所修理のための借入により、従業員給与が支払えない
→従業員の一時解雇
•  データの消失
→データ再構築に多大な時間を要する
•  データ消失等による損害賠償責任
→全額自己負担
 
•  多くの資金借入れができない
→資金繰りがつかない
•  手持ち資金で従業員への給与支払い
→従業員との信頼、人的資産の確保
•  データの保存・確保
→電気が回復すれば、すぐに業務に取り掛かれる
•  データ消失等による損害賠償責任
→自己負担は1割
(リスクの移転)
•  多くの資金借入れができる
→早期復旧・営業開始

4. 復旧期間・費用の算出
 
復旧期間
復旧費用
備 考
建  物
30 日
300,000 円
事務所を新たに借りた場合( 1 ヶ月間、礼金等含む)
設  備
14 日
300,000 円
パソコン、 OA 機器、印章、その他
事業中断損失
最長 30 日
500,000 円
顧問企業 15 社×平均単価3万円+スポット平均5万円
合  計
最長 30 日
1,100,000 円
 
※ つまり、これだけの資金を常に準備する必要がある。

5. まとめ
● 社会保険労務士事務所は一般的には原材料や商品の仕入れは無いが、顧問先企業をはじめ、顧客の重要なデータを取り扱っているため、BCPを取り入れることはとても重要である(損害賠償(責任賠償)の問題に関わる)。
 ●ハザードリスクに備え、災害発生後も顧問先企業の緊急依頼に対応できる体制作りが信頼を得る。また、ビジネスチャンスにも繋がる。

 
続きは、次回に。

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